第137話 鋼の拳、核を砕く、黒風の終焉
ためらいの一瞬。
それは、黒風にとって致命的だった。
「今だ!」
カイルの声に呼応し、巨兵ゴーレム《ターレクス》が大地を蹴る。
分解・再構築。
脚部が跳躍用に最適化され、鋼の巨体が“飛んだ”。
白竜の嵐が一直線に道を作る。
『行け、人の子!』
黒風が悲鳴のような振動を上げる。
中心部、脈打つ疑似コアがはっきりと露出した。
「見えてる……」
カイルの声は、驚くほど冷静だった。
右腕が変形。
装甲が外れ、内部フレームが一点に収束する。
対核粉砕拳。
「終わりだ!!」
鋼の拳が、振り抜かれた。
ドンッ――!!
衝撃は、音を置き去りにした。
疑似コアに亀裂が走り、黒風全体が硬直する。
『ギ……ァ……』
風が、崩れる。
次の瞬間、砕けた。
疑似コアは光の粒子となり、黒風は形を失っていく。
吸われていた風が山へ、森へ、里へ戻っていく。
重かった空気が、一気に軽くなった。
「……終わった?」
エルフの戦士が、呆然と呟く。
キキは、静かに頷いた。
「うん……風が、泣いてない」
白竜が、ゆっくりと地に降り立つ。
嵐は消え、そこにいたのは、静かな守護者だった。
『……感謝する。我は、再び……守れる』
ヒカリが、小さく手を伸ばす。
「もう、だいじょうぶ。ここ、かえりばしょ」
白竜は、その小さな存在を見つめ、深く頭を下げた。
風が、優しく吹いた。
エルフの里を包んでいた長年の重苦しさが、嘘のように消えていく。
カイルは、巨兵の中で息を吐く。
「……終わったな」
だが、その時。
キキが、ふと空を見上げた。
「……ねえカイル」
「ん?」
「これで、里は助かったけど……族長たちは、私達に対してどうするんだろ」
静かな勝利の後に、**避けられない“人の問題”**が待っていた。
戦いは終わった。
だが、物語はまだ続く。




