第133話 嵐の吐息、鋼は耐える
白竜が翼を震わせた瞬間、山全体の風が一方向へ吸い寄せられた。
空が唸る。
「来る……!」
キキの兄が歯を食いしばる。
白竜は大きく息を吸い込み咆哮と同時に、嵐を吐き出した。
氷晶を含んだ暴風。
風刃と氷塊が混ざり合った、破壊の奔流。
木々は根こそぎ吹き飛び、
岩肌が削られていく。
「防御展開! 第二構造!」
カイルの指示で、巨兵ゴーレム《ターレクス》の装甲が連動する。
外装がスライドし、内部フレームが噛み合う。
多層防御構造。
直撃。
ゴォォオオオ!!
嵐が、鋼を叩き続ける。
空中で、巨兵は押し流されそうになるが踏ん張った。
「……耐えてる!?」
エルフたちの声が震える。
「当然」
ヒカルが静かに言う。
「これは“風を受け流す鎧”じゃない。風を正面から受け止める骨組みだ」
装甲が軋み、警告音が鳴る。
だが、崩れない。
「よし……読めた」
カイルは目を細める。
「白竜は、風を“喰って”力に変える。
なら……」
操作水晶を強く叩く。
「喰わせる量を制限する」
背部ユニットが展開。
空気制御板が角度を変え、嵐を分断する。
風の流れが乱れ、白竜のブレスが弱まった。
「効いてる……!」
キキが息を呑む。
白竜が、明らかに動揺した。
自分の力が、完全には通らない。
そんな経験は、今までなかった。
「今だ」
カイルの声が、低く響く。
「第三形態。近接特化」
巨兵の腕部装甲が外れ、巨大な拳が剥き出しになる。
白竜は、咆哮しながら再び突撃してきた。
だが、もう遅い。
鋼の拳が、振り抜かれる。
ドンッ!!
白竜の胸部に、衝撃が叩き込まれた。
鱗が砕け、嵐が一瞬、途切れる。
白竜は悲鳴を上げ、高度を失っていく。
だが、まだ終わらない。
その瞳には、獣ではない、意思の光が宿っていた。




