第131話 白竜の山へ。風と鋼の進軍
朝靄の中、エルフの里が静かに目を覚ます。
だがその空気は、いつもと違った。
恐怖ではない。
覚悟の匂いだ。
里の外れ、山を望む開けた場所。
そこに、**巨兵ゴーレム《ターレクス》**が完全戦闘形態で立っていた。
装甲は再構成され、関節部には耐風補助フレーム。
背部には飛行補助ユニットが展開されている。
「……改めて見ると、化け物だな」
キキの兄が、素直に呟いた。
「味方だから安心して」
カイルはさらっと返す。
周囲には護衛ゴーレム、飛行型ゴーレムが展開。
空と地上、両方を完全に押さえる布陣。
エルフの戦士たちは、風魔法で補助陣形を組む。
「風精族は後方支援。巨兵の動きを乱さないよう、乱流を抑える」
戦士長が指示を飛ばす。
「了解!」
里が、一つの軍になった瞬間だった。
キキは、カイルの横に立つ。
「……本当に、ありがとう」
「何度も言わせるな」
カイルは前を見る。
「仲間を守るのは、当たり前だ」
キキは、少しだけ目を潤ませて笑った。
ヒカルが、ゴーレムの制御水晶を確認しながら言う。
「白竜は高高度からの急降下を多用するはずだ。初動は空戦になる」
「分かってる」
カイルは頷く。
「最初の一撃で、主導権を取る」
ヒカリが、山の方を指さした。
「あそこ。白くて、つめたい風。いっぱい、たべてる」
その言葉で、全員が山を見た。
雲を突き抜けるようにそびえる峰。
頂には、白い嵐が渦巻いている。
白竜の巣。
「行くぞ」
カイルの声が、静かに響いた。
ゴォォン……!
巨兵ゴーレムが、一歩踏み出す。
大地が震え、風が割れる。
飛行型ゴーレムが先行し、空路を確保。
護衛ゴーレムが側面を固める。
エルフの戦士たちは、風に乗って進軍した。
里の入口で、族長が深く頭を下げる。
「……帰ってこい。全員だ」
カイルは振り返らず、片手を上げた。
「約束する」
こうして白竜討伐隊は、山へ向かった。
風を喰らう竜と、風に頼らぬ鋼の巨兵。
空と大地がぶつかる戦いが、今、始まろうとしていた。




