第12話 複数魔石の実験と試作品投入
夜。
小屋の奥で、俺は拾い集めた砕けた魔石のかけらを並べていた。
机の上には小さな石の躯体。
胸には二つの魔石を埋め込むための空洞を作ってある。
「……これで、並列接続だ」
ゴーレム工学。
前世で培った知識を、この世界の素材に応用する。
“ひとつの電源で足りないなら、複数を組み合わせる”ただそれだけの発想だった。
俺は二つの魔石を胸に埋め込み、同時に魔力を流し込む。
ゴォッ――!
一瞬、強い光が弾け、ゴーレムの体が震えた。
「よし、動け!」
ゴーレムは両腕を上げ、足を一歩踏み出した。
だが次の瞬間。
バチッ!
二つの魔石から火花のような魔力が散り、ゴーレムは爆ぜるように崩れた。
「うわっ!」
慌てて飛び退く俺。
煙が収まると、机の上には粉々になった石の塊だけが残っていた。
二つの魔石は互いに干渉し、暴走したのだ。
「……やっぱり、ただ繋げるだけじゃだめか」
それでも、確かに一瞬、強い力を発揮した。
失敗の中に、希望があった。
翌朝。
畑の端で父トットを手伝っていると、ブルトがやって来た。
「カイル」
「団長……!」
ブルトは腕を組み、真剣な表情で言った。
「森の奥で新しい畑を作ることになった。だが大きな岩がいくつも邪魔をしていてな。人力では動かせん」
「大きな岩……」
「そこでお前の“ゴーレム”を試してみたい。できるか?」
俺は一瞬迷った。
まだ複数魔石の実験は安定していない。
だが、ゴブリン魔石のゴーレムなら――やれるかもしれない。
「……はい。やってみます!」
現場に到着すると、確かに人の背丈ほどもある巨石が畑の中央に居座っていた。
村人たちはため息をつき、途方に暮れている。
「よし、カイル。やってみろ」
ブルトが俺の肩を叩く。
俺は深呼吸し、ゴーレムを呼び出した。
胸にはゴブリンの魔石。
前回と同じだ。
「持ち上げろ!」
ゴーレムは岩に腕をかけ、全身で押し始めた。
ズズ……!
重々しい音とともに、巨石がわずかに動いた。
「おおっ……!」
村人たちがどよめく。
しかし、ゴーレムの動きは鈍い。
やがて光が弱まり、膝をついた。
(やっぱり一つの魔石じゃ足りない……!)
俺は迷った末に、実験用の小さな補助ゴーレムを呼び出した。
胸には砕けた魔石の欠片――試作品だ。
「……二体で押せ!」
ゴーレム二体が同時に巨石へと腕をかける。
ズズズッ――!
重たい岩が、ゆっくりと動き、ついには畑の外まで転がった。
「やった……!」
村人たちの歓声が響き渡る。
ブルトは腕を組み、満足げに頷いた。
「見事だ、カイル。これなら開拓もはかどる。お前の力は、この村に欠かせんものになるだろう」
俺は汗を拭きながらも、胸の奥で新しい課題を噛みしめていた。
(補助ゴーレムは短時間しか持たなかった……。でも、二体同時に動かす方法は確かに力を増す!次は……もっと安定して、複数を連携させる方法を見つけるんだ!)
失敗と成功、その両方を抱えながら。
俺のゴーレム研究は、また一歩進んだのだった。




