第122話 キキの帰郷と、止まらない泣き声
その日、キキは森の入り口で一枚の葉書を受け取って帰ってきた。
薄緑色の紙に風の紋章、エルフの里からの正式な呼び出しだった。
「……とうとう来ちゃったなぁ」
ひらりと葉を指で回しながら、キキはため息をつく。
カイルが覗き込む。
「里に帰るのか?」
「うん。ちょっと、長老さまに来いって。事情は書いてないけど……まあ、風の騒がしさで察してるよ」
キキが帰る。
それだけのことなのに、家の空気がわずかに揺れた。
その声を聞いたリーナが走ってくる。
「キキ、どこいくの?」
「えっと……リーナ、ごめんね。わたし、エルフの里に帰らなきゃいけないの。ちょっとだけのつもりだけど……今回は一人で行くよ」
その瞬間、リーナの目がカッと大きく開き。
「やだぁぁぁぁぁ!! キキいっちゃやだぁぁぁぁ!!」
森がビリッと震えるほどの全力泣き。
涙が滝みたいに溢れて、キキの腰に抱きつく。
「り、リーナ!? ちょ、ちょっと落ち着いてっ!」
「やだぁぁぁぁ!! いっしょにいくの!! キキ、いくならリーナもいくの!!」
キキは慌てふためき、カイルは「おお……」と遠い目。
母は「あらまぁ……」と優しく苦笑しつつ近づく。
「リーナ、キキは帰るだけよ? ちゃんと戻ってくるわ」
「もどってこなかったらどうするの!!」
三歳とは思えないほどの問いで、キキは胸を突かれた。
「戻るよ。絶対戻る。リーナを置いていくわけないよ。……だから、泣かないで?」
そう言って頭を撫でると、リーナは余計に泣き声を大きくした。
「キキのうそつきーーー!!」
「えぇぇぇぇぇ!? まだ何もしてないのに!?」
キキは困ったように笑い、リーナの涙顔を抱きしめた。
「絶対、ぜーったい戻るから。リーナが泣かないで迎えてくれるように……頑張ってくるからね」
クレアがそっとリーナを抱き上げると、
リーナは泣きながらもキキの袖を離そうとしない。
「キキ、いっちゃ……やだ……」
「うん……早く帰るから、待っててね」
キキは何度も振り返りながら、森の奥へ歩き出した。
リーナの泣き声は、いつまでも森に響いていた。




