第109話 ヒカリとリーナと、にぎやかな朝食
森の朝。
小鳥のさえずりと、薪のはぜる音が家の中を満たしていた。
食卓には焼きたてのパンと野菜スープ、そしてリーナがこっそり持ってきたジャムの瓶。
「いただきまーす!」
リーナが元気いっぱいに叫ぶと、母が優しく微笑む。
「はいはい、よく噛んで食べなさいね」
その隣、椅子に正座している“ヒカリ”は、不思議そうにスプーンを見つめていた。
「これで……食べるの?」
「そうだよ、こうやってね!」
リーナはドヤ顔でスプーンを掲げ、スープをすくって口に運ぶ。
「ふーふーしてからね!」
「ふーふー……」
ヒカリは真似をして、スプーンの上のスープをそっと吹いた。
じゅっ。
スープが少し蒸発した。
「えっ!? あっ、ああっ!? 消えちゃった!?」
「ヒカリ、それ吹きすぎ!」
カイルが慌てて止める。
母は口元に手を当てて笑い、キキは腹を抱えて転げ回っていた。
父の胸には光文字で『我、料理不能』と表示されている。
「……むずかしいのね、“食べる”って」
「でもヒカリ、がんばってる!」
リーナが励ますように手を握ると、ヒカリの頬がふわりと赤みを帯びた。
まるで人間のように、照れているようだった。
そのあとも、二人の食事(?)は続いた。
ヒカリはパンを持ち上げようとして指先から光を漏らし、パンをトーストに変えてしまい、
リーナはそれを見て。
「すごーい! もう一個やって!」
歓声をあげる。
「ねぇカイルにーちゃん、ヒカリの手あったかいんだよ!」
「ほんと? ……へぇ、熱くないんだな」
カイルが軽く触れると、確かに光なのに優しい温もりがあった。
「不思議だね。魔力の流れが“生きてる”みたい」
「うん、なんかね……みんなの声、感じるの」
「え?」
「お母さんの“優しい”とか、リーナの“楽しい”とか、カイルの“安心してる”とか」
「……おれ、そんなに顔に出てる?」
キキが笑ってツッコむ。
「いや、顔っていうか態度全部でしょ」
父の胸には『我、誇』の光。
母はふっと微笑んで。
「賑やかね」と呟いた。
朝の食卓に響く笑い声。
スープの香りと、光の温もり。
こうしてまた、森の家に新しい日常が積み重なっていく。




