第108話 ヒカリ、爆誕!
森の家の朝。
光る魔石、“ヒカリ”はいつものように縁側でリーナの遊び相手をしていた。
けれど、その日は少し違っていた。ヒカリの光がいつになく眩しく、まるで鼓動のようにゆっくりと脈打っていたのだ。
「カイルにーちゃーん! ヒカリがドクンドクンしてるー!」
リーナの叫びに、カイルとキキ、母、そして骸骨の父が慌てて駆け寄る。
ヒカリはふわりと浮かび、光を強めていく。
まるで何かを“生み出す”ように。
「……う……ん……まぶしい……」
「え、声!?」
キキが息を呑む。
ヒカリの光が弾け、部屋中を真昼のように照らした。
そして、光の中心に小さな女の子が立っていた。
髪は透き通る金色、瞳は淡い水色。
肌は光の粒のように輝き、まるで“人の形をした光”そのものだった。
「……おはよう、カイル」
その幼女が微笑んだ瞬間、全員の時が止まった。
「え、喋った!? ていうか……人間になった!?」
「すごいぃぃ!」
リーナが叫びながら、全力でその子に抱きついた。
「今日から、わたしがママよ!」
「……え?」
家の中が一瞬、静寂に包まれる。
次の瞬間、母が吹き出した。
「リーナ、それ逆でしょ! あなたが子どもでしょ!」
「だって! ヒカリ、わたしが持ってたから出てきたんだもん! だからわたしママ!」
「ふふっ……そうなの?」とヒカリが首をかしげる。
「そうだよ、ママだから!」
リーナが胸を張ると、キキはテーブルに突っ伏して笑い転げ、カイルは顔を覆ってうずくまった。
骸骨の父の胸部には、『我、笑止』の光文字。
「ふふ……おもしろい家族ね」
ヒカリはリーナの頭を撫でながら微笑んだ。
その手の温もりは確かで、光なのに“生きている”ように感じられた。
カイルはその様子を見て、そっと息を吐く。
冷たい海底の神殿で拾った、あのコア。
今はこうして笑っている。
「……なんか、すごいな」
「なにが?」とキキが首を傾げる。
「ただの光だったものが、今は家族になってる」
「ほんと、カイルにーちゃんちって常識ないよね」
「褒め言葉として受け取っとく」
笑い声の中、リーナがヒカリの手を握った。
「ねぇママ、これから一緒に寝ようね!」
「うん……でも、“お姉ちゃん”の方がいいかも?」
「じゃあ……ママ姉ちゃん!」
「……まぁ、いっか」
森の家にまた一人、家族が増えた。
光の少女、ヒカリの誕生は静かな森にもうひとつ、新しい灯をともした。




