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ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


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第107話 森の中の三年

 小鳥たちのさえずりが、柔らかい春の風に混じって響いていた。

 森の中の家は、今日も平和だ。


 ゴーレムたちは畑を耕し、放水型ゴーレムが畑に優しく霧を撒く。

 まるで誰もがこの森の一部になったようだった。


 その家の縁側では、カイルが木槌を手に、椅子の脚を直している。

 隣ではリーナが小さな声で何かを話していた。


「ねぇヒカリ、こっちー! あかー! きいろー!」


 リーナが手にしたカラフルな木片を掲げると、ヒカリがふわりと浮かび、木片の色に合わせて光を変えた。

 赤、黄、青。


 リーナが笑うたびに、ヒカリの光もきらきらと弾ける。


「きれーねぇ! ヒカリ、すごーい!」


 カイルはその光景を見ながら、思わず工具を置いて微笑んだ。

 あの頃、まだ泣くことしかできなかった妹が、今は光と“会話”している。

 ヒカリもまた、まるでリーナの成長に合わせるように学び、応えるようになっていた。


 そこへ母が麦茶を運んできた。

 髪に少し白いものが混じっていたが、穏やかな笑顔は昔と変わらない。


「カイル……気づいてる? 森に来てから、もう三年になるのよ」


「……三年?」


 カイルは驚き、空を仰ぐ。

 青空に流れる白い雲。いつの間にか、季節の巡りが早く感じる。


「そうか……三年、か」


「あなたも大きくなったわよ。最初はあんなに小さかったのに」


「うーん……でも、やっぱり時間ってあっという間だね」


 母は笑いながら頷いた。

 その後ろでは、骸骨の父が薪を割っている。

 腹部の光がぱっと点滅し、『我、筋力維持中』と表示された。


「父さん、それ意味あるの?」


 キキが茶をすすりながら笑う。


「見た目、骨なんだから“筋力”とか無理でしょ」


『我、気持ち重要』


「……メンタルかよ!」


 笑いが家の中に弾ける。

 カイルは頬を緩めながら、まったりとした空気に身を委ねた。


 リーナがヒカリと手を取り合いながら笑っている。

 その様子はまるで“光と人”の境界が消えたようだった。


「ねぇカイル」


 母がぽつりとつぶやく。


「この子たちがこうして笑っていられるのって、奇跡みたいね」


「うん……そうだね。森は危険も多いけど……ここが、俺たちの家なんだ」


 リーナの笑い声、キキの茶の香り、父の薪割りの音。

 それらすべてが重なって、心地よい午後の音楽になっていく。


 三年。

 時間は確かに過ぎた。

 けれど、カイルの中では、どの一日もかけがえのない“今”だった。


 縁側に光が差し込み、ヒカリが優しく瞬いた。

 まるで、その平穏を祝福するように。




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