第104話 ヒカリの導き
海面は穏やかで、船型の巨兵はゆっくりと波間を進んでいた。
エンジン音もなく、ただ潮の香りと風の音だけが響く。
カイルは甲板でヒカリのコアを両手に抱え、ぼんやりと光を眺めていた。
光は淡く瞬き、まるで何かを伝えようとしているようだった。
「……ヒカリ? どうしたんだ?」
問いかけると、ヒカリの光は一度弱まり、次の瞬間、強く海の彼方を照らした。
その光はまっすぐ一点――海底の方角を示していた。
「……あっち?」
カイルが顔を上げると、ヒカリの光がまた瞬く。まるで“そう”と頷くように。
母が隣に来て、優しく微笑んだ。
「帰り道を教えてくれてるのかもね」
「帰り道……?」
カイルは思わず立ち上がり、海図を開く。
確かに、その方角には未知の海底地形がある。
以前探索した海底神殿のさらに奥。
そこに、何かが反応している。
キキが通信越しに声をかける。
「カイル、ヒカリの光……ただの反射じゃない。微弱な魔力波を出してる」
「魔力波?」
「うん。たぶん、“転送陣”の反応だよ。帰還ゲートの……!」
その言葉に、船の上の空気が一気に変わった。
父のゴーレムの胸部に刻まれた光が、“!”の形に輝く。
『帰還ルート、確定』
「……本当に、導いてくれたんだな」
カイルはヒカリを見つめ、心の奥でそっと呼びかける。
すると、あのときのように温かい感情が流れ込んできた。
“いっしょにかえろう”。
ヒカリの光が波間を導くように輝き、
海の底に眠る古代のゲートが、青白く浮かび上がる。
「本当に帰還ゲート?魔力反応あり!」
キキの声が弾む。
「全員、準備! ヒカリ、ありがとう!」
カイルが叫ぶと、ヒカリの光が喜びに震え、
その輝きはまるで笑顔のように温かかった。
こうして、海底神殿を後にした一行は、
ヒカリの導きによって、再び地上への帰路につくのだった。




