第102話 子に名を
夜の海は静かだった。
船型の巨兵は波間に揺れ、甲板にはランプの明かりが優しく灯っている。
カイルたちはその中央に集まり、
テーブルの上に置かれた“光のコア”を囲んでいた。
淡い光を放つそれは、相変わらず心臓のように脈を打っている。
母の言葉どおり、どこか“生きている”ように感じられた。
「……それで、どうするの?」とキキが言った。
「このまま連れて帰るの?」
「うん。今は安定してるけど、完全に目覚めたらどうなるかわからない」
カイルは慎重に言葉を選びながら答える。
「だけど……放っておけない。
あの神殿でずっと孤独だったはずだ」
母は微笑みながら頷いた。
リーナはコアの光をじっと見つめ、指で“とんとん”と優しく叩いている。
「ねぇ、名前をつけてあげようよ」
母が静かに言った。
カイルは一瞬きょとんとしたが、すぐに納得したように息をついた。
「……そうだな。家に迎えるなら、名前が必要だ」
リーナが嬉しそうに手を挙げた。
「ピカー!ピカー!」
母が娘の言葉を汲み取り。
「ひかり……かしら……」
その瞬間、コアが一瞬だけまぶしく光を放った。
まるで“気に入った”とでも言うように。
母が笑い、キキが吹き出す。
「すごい、反応したわよ?」
「……決まり、かな」
カイルは小さく笑い、光のコアに手を当てた。
「お前の名前はヒカリだ。ようこそ、俺たちの家へ」
コアが再び光り、波の音が静かに響く。
その光は夜の海を照らし、空の星々と共に揺らめいた。
まるで祝福のように。
母がそっと言った。
「この子……本当に、家族になるかもしれないわね」
カイルはコア、ヒカリを見つめ、胸の奥でゆっくり頷いた。
彼の中で、何かが変わり始めていた。
ゴーレムでも、機械でもない、“新しい命”という存在への理解が。




