第101話 母の言葉、光の中の命
船型に変形した巨兵の甲板は、穏やかな波の上でゆっくりと揺れていた。
海底神殿から浮上してしばらく経ち、潮風が心地よく頬を撫でる。
カイルは慎重に胸元の布を開き、
中に包んでいた“光るコア”を母とリーナの前に差し出した。
コアは淡い青の光を放ち、まるで鼓動のようにゆっくりと脈を打っている。
海の反射光が重なり、その光は小さな命の灯のように見えた。
「これが……ダンジョンの中心にあった“コア”だよ。寂しそうだったから、持って帰ってきたんだ」
母はその説明を黙って聞きながら、光をじっと見つめていた。
手を伸ばし、そっと触れる。
すると、光がまるで応えるように、ほんのりと強く輝いた。
「……あら」
母の表情が、ふと柔らかくなる。
その顔には、どこか“母親の勘”のようなものが浮かんでいた。
「この子……中に、赤ん坊がいるわ」
「え?」
カイルもキキも、同時に目を丸くする。
「いや、あの……母さん、どういう……?」
母は微笑んで、光のコアを両手で包み込むように抱いた。
その姿は、まるで本当に赤ん坊を抱いているようだった。
「感じるの。この中、温かいわ。“誰か”が眠ってる。……それも、とても静かで優しい子」
リーナが小さな手を伸ばし、コアに触れた瞬間、ポンと光が一段階強く輝いた。
それはまるで“応える”ような反応だった。
「ほら、やっぱり。ね?」
母の声は優しく、どこか確信に満ちていた。
カイルは、胸の奥が静かに熱くなるのを感じた。
海底神殿の寂しげな光。
あれは、ただの機械的な反応じゃなかったのかもしれない。
何かが、確かに生まれようとしている。
「……赤ん坊、か。じゃあ、この子は……新しい家族、だな」
そう言ってカイルが微笑むと、キキは呆れたように肩をすくめた。
「あんたの家族、どんどん増えるわね……」
しかしその声色には、わずかに笑みが混じっていた。
夕暮れの海。
船の甲板で、光るコアを囲んで笑い合う彼らの姿は、
まるで新しい“命”を迎える家族のようだった。




