第9話 初めての仕事と失敗
開拓地の朝は早い。
その日はブルト団長の指示で、森から切り出した木材を村まで運ぶ作業が行われていた。
「よし、みんな頼むぞ!」
ブルトの声が響く。
大人たちは鍬や縄を手に、次々と木材へ取りかかっていった。
俺もその場に立っていた。
父トットと母クレアが心配そうにこちらを見守る中、胸の鼓動が高鳴る。
(今日は……初めてゴーレムを“仕事”に使う日だ!)
俺は慎重に石を組み合わせ、スライムの魔石を胸に埋め込んだゴーレムを起動させた。
淡い光を帯びた小さな石の人形が、カタリと音を立てて立ち上がる。
「よし……丸太を持ち上げろ!」
命じると、ゴーレムはぎこちない動きで木材に両手をかけた。
しかし。
ミシ……ミシ……。
一瞬、丸太が持ち上がったかと思ったその次の瞬間。
光がふっと揺らぎ、石の体が音を立てて崩れ落ちた。
「……あっ!」
俺は慌てて駆け寄る。
だが、ゴーレムはもう動かない。
胸に埋め込んだ魔石は鈍く濁り、ひびが入っていた。
ブルトが近づき、崩れた石の残骸を見下ろす。
「……だめか。やはり子供の遊びにすぎんのかもしれん」
その言葉が胸に突き刺さった。
悔しさに唇を噛みしめる。
けれど、頭の中ではすでに原因を探っていた。
(魔力の流し方は安定していた……それでも限界が早すぎる。やっぱり……スライムの魔石じゃ容量が小さすぎる!)
父トットがそっと肩に手を置いた。
「カイル、無理するな。お前はよくやったよ」
優しい声だった。
だが、俺は首を横に振る。
そして勇気を振り絞り、ブルト団長をまっすぐ見上げた。
「……団長さん。もっと……もっと強い魔石をください!」
「強い魔石?」
ブルトの眉がわずかに上がる。
「スライムの魔石じゃ……足りないんです。もっと力のある魔物の魔石が必要なんです!」
声は震えていたが、想いは真剣そのものだった。
ブルトはしばし無言のまま俺を見つめ、やがて口の端を吊り上げる。
「……面白い。お前の“魔法”が本物なら、試してみる価値はあるかもしれんな」
そう言うと、森の方を指差した。
「近くの林には、ゴブリンどもが時々現れる。奴らの魔石なら、スライムよりはるかに強い。次に討伐したとき、ひとつお前に分けてやろう」
「……本当ですか!」
胸の奥が熱く燃え上がる。
スライム以上の魔石――それは、俺の研究を一歩前へ進める鍵になる。
拳を握りしめ、俺は心の中で固く誓った。
(必ず……成功させてみせる!)




