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魔王、出発する。

シュウメイ「して、魔王様。先々代の家まではどれくらいなのですか?」

「そうだな。1か月も歩けば着くだろう」

シュウメイ「承知いたしました。少しでも早く着くよう歩きましょう。」


そうしよう。勇者の子孫とやらも私が生き返ったと知れば魔族殲滅の手を早めるかもしれない。早く体制を整えなければ。


シュウメイ「忘れていましたが、今魔王様には一つ永続魔法がかかっています。」

「気づいてはいたが、なぜ外見の認識を変える魔法なのだ」

シュウメイ「魔王様が倒されてから、人間に魔族の領土の大部分を持っていかれました。つまり...」

「人間に遭遇しても魔族だとばれないための策か」

シュウメイ「その通りでございます。」


やはり領土は奪われてしまったか。

魔族と人間は太古より対立し、戦争を繰り返してきた。そこでおじいさまが、領土を明確に半分に分け、お互いに干渉しないという条約を人間側と結び、世を平和にした。だが、人間側がこの条約を破り、再び領土を広げようとし始めたのだ。

私は迎撃ではなく、先に相手の頭をつぶし、その後に領土を一つにしようと考えたのだが。


「勇者を送り込むとはな」

シュウメイ「おかげでまた戦争になってしまいましたね。」


勇者は強かった。差し向けた魔族はことごとく返り討ちにされたし、それをもとに人間を扇動するのもうまかったのだ。勇者が現れるまで圧倒的優勢だった魔族は、発起した人間側に押され始めた。私がほとんどの領土を掌握し、あと少しで一つにできる、というところでの出来事だった。


「あと少しだったのだがな」

シュウメイ「今回は。」

「ああ」


そういえば、まともに会話をするのはずいぶん久しぶりだ。20年ぶり程だろうか。ああ、死んでいたのだから120年ぶりか。あの頃はかわす言葉といえば物騒なものばかりだったからな。まともといっても、こいつは人の思考を先読みするし、言わなくてもわかりますよね?といった感じで言葉を省略するがな。


シュウメイ「何か。」


勘までいいとは。私も気を使わなくてよいので助かるが。


シュウメイ「ところで魔王様。」

「どうした」

シュウメイ「城を出発してから1週間ほど経ちますが、そろそろ食料などを補充しないと。」


そういえばそうだ。近くに食料が手に入りそうな場所はあるのだろうか。


「地理は得意か?」

シュウメイ「もう少し先に人間の村があったはずです。」


得意かを聞いたのだが。まぁいい。


「その次の村までは?」

シュウメイ「さらに3日程かと。」


3日飲まず食わずはシュウメイには厳しいだろう。一度軽く補充するべきだな。


「宿もあるのだろうな」

シュウメイ「施設までは。ですが領土を拡大している最中ですし、村の外からの人間の受け入れ先はあるとみてよいかと。」


そうだな。では急ぐとするか。


―――――


シュウメイ「すみません、この村に宿は―。」


ふう。日が沈む前に到着してよかった。

シュウメイは村と言っていたが、随分と大きな建物が多い。この分なら宿は問題ないだろう。それにしても、100年とはここまで世界を変えるのか。まさかとは思うが…


シュウメイ「宿はあるそうです。食料品などの店は明日のほうが品ぞろえがよいだろうと。」

「そうか。ところで金の話なのだが…」

シュウメイ「魔王様。100年前の通貨など使えなくなっています。ましてやここは人間の領土ですが。」


ですが。じゃない。

やはりそうか。私の持っているこれは役に立たないようだ。シュウメイがこの世界で生きてきたことを考えれば、きっといくらかは持っているのだろう。しばらくはこいつの厄介になるしかない。


シュウメイ「いつか返していただければ結構です。利子はつけません、今のところは。」


とられる可能性が残っているのか。一応私は魔王なのだがな。だが助かった。


「今日は早く休もう」



こうして、旅の1週間は過ぎていった。

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