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異界冒険譚  作者: とーふ
第3章『繋がる人々』
67/435

第67話『少女たちの|お茶会《たたかい》』(シャーロット視点)

(シャーロット視点)


 あの日、リョウ様をご自宅へ招いた日。

 私は様々なお話を聞かせていただきました。

 どれも素晴らしいお話ばかりで、私、思わず聞き入ってしまったわ。


 しかもね。

 途中お父様やお兄様と難しいお話もされていて、私が静かにしていると……!

 そっと私の方にも視線を向けて下さって、退屈していないか? と聞いて下さったのですよ!


 あぁ、リョウ様……!


 今まで様々な方とお話してきたけど、あの様に自然と気を遣って下さる方は初めてだったわ。

 若い男性の方とお話した経験は無いけれど、私には分かるわ。

 きっとリョウ様が特別なんだわ。


「いや、分かんないでしょ。ロッティお嬢様はお部屋からあんまり出なくて、男の人とも話したことないんだから」

「確かにね。ソラリアのいう事にも一理あるわ」

「でしょ?」

「でも、ソラリアから聞いた話では、冒険者の男性方はいつもソラリアを雑に扱っていると聞きましたけれど。あれは間違いかしら?」

「う、ぐ……それは、さ! それは、ほら! みんなが冒険者だから! それに、なんていうの? ある程度仲が良いと雑に扱う様な事ってあるじゃん?」

「言っておきますけどね。ソラリア。リョウ様も冒険者ですわよ」

「ぐ……!」

「あー。でも。そうですわね。私とソラリアだから扱いが違うのかもしれないわ」

「は? どういう意味さ」

「リョウ様が、私は一人前のレディだから大切に扱いたいと思ったけれど、ソラリアは雑で良いかと思ったという事でしょう? まぁ、当然と言えば当然かしら。ソラリアはまだまだ子供だしねぇ」

「シャーロットだって同じ子供でしょ! 何さちんちくりんの癖に!」

「なっ! なぁー!?」


 ソラリアのあんまりにもあんまりな物言いに、私は椅子から立ち上がり、テーブル越しにソラリアを威嚇する。

 そして、私と同じくソラリアもまた椅子から立ち上がり、私に威嚇するのだった。


 一触即発!

 いつ爆発してもおかしくない。

 そんな空気の中、どこか抜けたような声で吐息を零すレイシリアに私は意識をそちらへ向けてしまった。


「はぁ……おいしい」

「……」

「……」


 レイシリアへ意識を向けながらも、私はソラリアと睨み合い続けていた。

 いた、が……こんな事を続けても一人前のレディとは言えまいと私は負けてあげることにするのだった。


「……まったく。しょうがないわね。お姉さんの私が譲ってあげるわ。おこちゃまソラちゃまにね」

「は!? はぁー!? 誰がお姉さんだよ! 私の方がお姉さんだもんね!」

「はいはい。未だに自分の事を『ソラちゃん』なんて呼んでいるおこちゃまのソラちゃま」

「直してるもん! 直ったもん!! 何さ! おもらしロッティのくせにぃ!」

「な! ななな! そんな大昔の話をいつまでも!」

「おおむかしぃ~? あらあら。おもらしロッティちゃんは去年の事がもう、大昔なんだねぇ」

「あれは!! その、色々あって、寝る前にその……行けなかったから!」

「はいはい。言い訳をするのは良いけどねー。事実は変わらないからさ。ニシシ」


 ニヤニヤといやらしく笑うソラリアに苛立ちを募らせていると、すぐ近くから強力な援軍が現れた。

 私やソラリアと一緒にお茶をしていたマイペースなソラリアの双子の妹。レイシリアである。


「まぁ、ソラちゃんもちょっと前に、おねしょしてたけどねー」

「ちょ!? レイちゃん!? それは内緒だって!」

「あら? あらあらあら~? これはどういう事なのかしらね! ソラリアさんったら」

「べ、別に? ちょっと前って言っても十年くらい前だからさ」

「半年くらい前だよね」

「レイちゃん!!」


 焦りながら視線をさ迷わせるソラリアに私はふふんと笑みを浮かべる。

 この女! 黙っていればバレないと思って、こんな事を隠していたのだ。

 何が子供だ! 自分の方が子供な癖に!


「まったく、いい年して自分の管理も出来ないなんて。ダメダメね。おこちゃまソラちゃまは!」

「自分だって同じじゃないか! 偉そうに!」

「私は一年前だもの!」

「半年も一年も変わらないよ! おんなじ!」

「どうかしら。ま! 少なくとも私の方が半年以上大人という事が確定したワケだけれど」

「ぐぬぬ……!」


 悔しそうに揺れつつ私を睨みつけるソラリアを見ながら気分が良くなった私は手元に置かれたお茶を飲む。

 レイシリアも言っていたけれど、なんて美味しいお茶なんでしょ。

 これが勝利の美酒という物なのかもしれないわ。


「もう! この話は無し! 終わり! 終了ー!」

「ま、良いけれど。じゃあ次の話題は貴女から出しなさいな。ソラリア」


 私は余裕たっぷりな淑女の笑みを浮かべながら、大人の女性らしくソラリアに話題を投げる。


「ヘン。偉そうにさ。今からする話を聞いたら、きっとすぐあわあわしちゃうから!」

「はいはい。それは大変ねー」

「ぐぬぬ!」


 あー。気分が良い!

 あのソラリアが! 天才ソラリアがこーんなにも悔しそうにしてるなんて!

 本当に気分が良いわ!


 なんて思っていたのだけれど。


「ふ、ふん。まぁ良いけどね。じゃあ教えてあげるよ」

「えぇえぇ。どうぞどうぞ。聞かせてみなさいな」

「泣いたって知らないから!」


 妙に引っ張るなと思って、マジマジとソラリアを見てみれば、何やら余裕そうな表情。

 そんな姿も可愛らしくはあるが……問題はそこじゃない。


 何故そんな得意げな顔をしているのか。

 という点だ。


 そして私がその答えに至るよりも前に、ソラリアはちょっと嬉しそうに隠しきれない笑みを浮かべたまま語り始めた。


「この前の魔物事件あったじゃない? 新種の魔物が襲ってきたやつ」

「えぇ。勿論知ってるわよ」


 当然だ。あの事件があったからこそリョウ様をご自宅に招く事が出来たのだから……。

 と、そこまで考えて何かに気づきかけた。

 が……。


「それでさ。お爺様がもしかしたら、また同じ様な事件が起きるかもしれないから、ソラちゃんとレイちゃんもある程度自分を守る力が必要だって言ってたのね」

「レイちゃんはつよーい。から、だいじょうーぶ。だね」

「だーめ。レイちゃんもちゃんと訓練するんだよ」

「訓練メンドー」

「大丈夫だよ。先生はとってもいい人だから。しかも強い」

「強いの? お爺様より?」

「お爺様には、流石に勝てないかなー」

「ふーん」


 ソラリアの言葉を聞いて、興味が無くなったとでも言うように、またお菓子を食べ、お茶を飲み始めたレイシリアを放置し、私は半ば察してしまったソラリアが言おうとしている事を、わざわざ問う。


「ソラリア……! その先生っていうのは」

「ふふん。もう分かってるんでしょ? リョウお兄ちゃんだよ」

「っ!? は、はぁ!?」

「ふふふ。ビックリしたでしょ! 元々事件の時にお爺様がリョウお兄ちゃんにお願いしてたんだけど、ルーカスおじさんがリョウ君に何か依頼をしようとしてるって事で遠慮して、後にしてあげてたんだよ」

「なら……! ならずっと遠慮してなさいよ! 私がまた依頼するから! 今度は護衛の依頼とかするから!」

「必要もないのに依頼なんかしちゃだめでしょ! 迷惑だよ! 冒険者組合にも! リョウお兄ちゃんにも!」

「うっ! こんな時に正論を……!」

「という訳だから。ソラちゃん達はこれからリョウお兄ちゃんに色々と教えてもらうのだ! へへっ! 羨ましいでしょ!」

「う、うぅー!」

「でもまぁ? ソラちゃんは優しいからー。ロッティちゃんがどうしても! って言うんなら、仲間に入れてあげても良いかなー」

「くっ!」

「ソラちゃんにちゃーんとお願い出来るなら、ね! ね? どうする? どうするー!?」


 小憎らしいソラリアの笑顔を睨みつけながら、私はこの追い詰められた状況を回避する方法を考えるのだった。

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