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異界冒険譚  作者: とーふ
第6章『冬開き』
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第170話『|僕らの新しい挑戦《おまつり さんか》』

 俺はヤマトに行っている間の家を桜に託した事で安堵し、俺はリリィちゃんが淹れてくれたお茶を飲みながら一息ついていた。

 ひとまずこれで、家の事は全て任せられるな、と……。


「そういえばさ。お兄ちゃん」

「うん?」

「さっき依頼が終わったらすぐにヤマトへ行くって感じの事言ってたけど、新年のお祭りには参加するんでしょ?」

「あー、新年のお祭りかぁ。そういえば、そういうのもあったねぇ」


 俺はどうしたものかとモモちゃんやリンちゃんへ視線を向ける。

 依頼主が、どう判断するかで今後の動きは決めたいのだけれども。


「私たちは別にそこまで急ぎじゃ無いから、ゆっくりお祭りを見てからで大丈夫だよ。ね? リン」

「はい。私もセオストのお祭りには興味がありますから、お祭りを楽しんでから行く方が良いですね」

「そっか。じゃあ、お祭りには参加しようかな」

「じゃあ、私たちも何かお店出そうか!」


 桜の提案に俺はなるほどと興味をもって桜の方へ意識を向けた。


「前にさ。セオストでお祭りがあったじゃない。新種の魔物を倒して、セオストを守ったお祭りって奴」

「あぁ、あったねぇ」

「それでさ。私たちもお店出してみたいよね。ってフィオナちゃんとかリリィちゃんと話しててさ。それで今回ちょうど良いからお店を出してみようかって」

「良いんじゃない? 俺も何か手伝うよ」

「あ! そういう話なら私たちも何か手伝いたいな! ね? 良い? サクラちゃん」

「良いよ。モモちゃんとリンちゃんが居るならもっと色々出来そうだし」


 桜はモモちゃんの提案に笑顔で頷き、祭りの計画について話し始めるのだった。

 当然、俺もその話し合いに参加する。


「最初の計画だとさ。何か料理でも出そうかって話をしてたんだけど、みんなが居るのなら、もっと他に色々出来そうだよね」

「何か遊べるものでも出す?」

「ゲーム屋さんは私たちじゃ難しいんじゃない? 何が良いのかよく分からないしさ」

「確かにね」

「だから、やるならご飯関係の仕事が良いかなって感じなんだけど」

「良いと思うよ」


 料理屋をやるのなら、俺は食料の元を取ってくるのが良いかなと考えてふむと身を引いた。

 ひとまず料理をやる事が決定しているのなら、実際の作業で俺が出来る事は少ないからな。

 メインで動く子達がメインで話す方が良いだろう。


「でもさ。料理って言っても色々あるじゃない? 何かいいアイデアはある感じ?」

「うーん。正直ない!」

「無いんだ」

「まぁー。ぶっちゃけフィオナちゃんの料理なら、何作っても勝負出来るだろうからさー」

「い、いや、それは分からないよ?」

「そんな謙遜しなくても。冒険者組合の食堂でフィオナちゃんの料理は結構人気あるからね。出店にしてもフィオナちゃんなら来るってお客さんも多いと思うよ?」

「なら事前の宣伝は俺の方がやろうか。フィオナちゃんの料理に、リリィちゃんや桜が接客をするのなら、お客さんは山ほど来るだろうさ」


 俺はいつも騒いでいる冒険者仲間の事を思い出してうんと頷いた。

 ただ、まぁ。彼らは味がどうこうは関係なくフィオナちゃん達の料理が食べたいだけの人間である為、正直あまり数には数えなくて良いと思う。

 宣伝すれば勝手に来るだろうしな。


 という訳で、そういう勝手に来る連中を抜きにして、重要な人たちの話をするべきだという考えに俺も乗った。


「前回のお祭りを見た感じだと、やっぱりメインの料理が多いと思うんだよね」

「後は手で持って歩けるものが多かったイメージがある」

「って、事は……串焼きとかそういうタイプの料理?」

「そう。後は一口で食べられる物を小さな箱に入れたりとか」

「なるほど。そういうのだと作れる物が限られて差別化は難しそうだね」

「んー。そうなんだよねぇ。その辺りはどう? フィオナちゃん」

「いや、まったく。言われている通りの状況だよ。だから何を出そうかってずっと考えててさ」

「そうだねぇ」


 俺は話し合う桜、ココちゃん、フィオナちゃん、リリィちゃん、モモちゃん、リンちゃんを見ながら、ふむと考える。

 他の店と差別化できる料理で、かつフィオナちゃん達が得意な料理か。

 中々難しいな。


 いや、しかし……。


「例えば、さ」

「うん」

「森で取って来た珍しい動物なんかを元に料理をするっていうのはどうかな。それなら俺も結構頑張れるけど」

「うーん。それも良いけどさ。それだとお兄ちゃんに全部任せちゃう感じになるから微妙じゃない? いや、まぁそれはそれで良いのかもしれないけどさ」

「私は! リョウさんには悪いけど、私の力でお客さんを喜ばせたいんだ……! リョウさんには悪いんだけど!」

「いやいや、気にしないでよ。あくまで一つの意見ってだけだからさ」

「ごめんなさい!」

「大丈夫。まぁ俺の役目は色々あるだろうからね。そっちで頑張るからさ」


 適当な提案をしたせいで、フィオナちゃんが気にしてしまい申し訳ない気持ちになる。

 やはり後ろに引っ込みながら、手伝いをする体勢でいた方が良いな。これは。


「あ! ジーナちゃん! 思いついた!」

「はい! ジーナちゃん! 意見をどうぞ!」

「ジーナちゃんはお菓子が食べたいです!」

「いや、そこに出てるでしょ?」

「ちがうー! そうじゃなくてー! 出店! 出店に出す料理! お菓子とか良いんじゃないかなって思うの!」

「あー」


 ジーナちゃんの意見に、桜が一度受け止めてから、意味のない言葉を漏らしつつ、フィオナちゃんとリリィちゃんの方へ視線を送る。

 いや、メインとしてはフィオナちゃんか。


「フィオナちゃん。どう? お菓子」

「うーん。出来る、とは思う……けど、大量に作った事は無いから、その辺りがちょっと不安かな」

「量を作る事に関しては、人がいっぱい居るから何とかなるとは思うんだよね」

「そう、だね。後は、材料とか……? ちょっと難しい素材もあるから」

「素材に関しては、魔物関係ならリョウさんが居るし、植物関係なら私が何とか出来るよ」

「……! それなら、挑戦しない理由は、ないね!」


 フィオナちゃんは覚悟を決めた顔で頷いた。

 やる気の炎が瞳に宿っているのが見えた。


「じゃあ決まり、かな」

「うん。新年のセオスト祭りはお菓子を作ろう! お菓子なら、小袋に入れれば、売る時に時間もかからないし、上手くいけば結構売れるかもしれない」

「袋に詰める作業は……」

「はい! ココ! やります!」

「ココちゃんも手伝ってくれる?」

「うん!」


「では袋詰めは私も手伝いましょう。ココさん。一緒に頑張りましょうね」

「うん! ミクちゃんお願いします!」

「はい。お願いします」


「じゃあ植物関係で必要な物は私とモモで用意するわ」

「はい。頑張ります」


「なら俺とジーナちゃんで魔物の方をやろうか」

「おー! やるやる!」


「となると、私とフィオナちゃんとリリィちゃんでお菓子作りだね。お祭りまでに用意できる分は用意しちゃおうか」


 皆、それぞれの役目が決まり、俺たちは頷きながら必要な物をフィオナちゃんに聞きながら当日までにやる事を確認してゆく。

 俺とジーナちゃんは魔物狩りとなるのだが、どうやらセオスト近くの森ではなく、少々離れた所にいる魔物を取る必要があるらしい。

 まぁ、ジーナちゃんが転移の魔法を使ってくれるというのでそこまで問題では無いようだ。


「問題は現地での処理方法だね。フィオナちゃんに付いてきて貰わないといけないかな」

「いえ。私よりもリリィの方が詳しいので、リリィと一緒の方が良いかな。私は家で準備する事もあるし」

「そういう事なら、リリィちゃん。大丈夫?」

「はい。問題ないです」


 という訳で、俺たちは俺の仕事が終わり次第、セオストから離れた場所で特殊な魔物を捕まえに行く事になるのだった。

 仕事があるとやる気が出るね!

 祭りまで楽しみだ。

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