第105話『今日の|ゲーム《あそび》はふしぎ探検隊』
桜が目を覚ましてからそれほどせずに、ココちゃんが起きてきて、次にフィオナちゃん、リリィちゃん、ジーナちゃんが起きてきた。
みんなまだ眠そうにしながらも、昼ご飯を作って食べている。
のんびりな感じで実に良い。
が。
それから、みんながノンビリお昼ご飯を食べて、映写機で色々な番組を見始めても、ミクちゃんは降りてこなかった。
どうしたんだろうか。
何か体調が悪いという事は無いだろうな。
「誰か、ミクちゃんが今何してるか知ってる子はいる?」
不安になり、皆に問うがみんなは首を横に振るばかりだった。
ここで待っていても駄目かと、俺はとりあえずミクちゃんの部屋に行ってみる。
何も無いなら無いで良いのだ。
「……ミクちゃん。ミクちゃーん?」
俺はドアの外からノックし声をかける。
が、やはり返事はない。
仕方ないかと、桜にお願いし、一緒に部屋の中へ入る事にした。
「ミクちゃん。入るよ? 体調は悪くないかい?」
そして、桜と共に静かに部屋の中へ入りベッドに寝ているミクちゃんの所へ行く。
と、ミクちゃんは大きな枕を抱きしめながら穏やかな顔で眠っていた。
どう見ても病気とかではない。
「……お兄ちゃん。なんか寝てるだけっぽいけど」
「んー。みたいだね。じゃあ出ようか」
俺は桜と小さな声で言葉を交わし、部屋から出ていくのだった。
いや、健康で良かった。
昨日は雪の中、色々な所へ行った為、風邪なんかひいていないか心配だったのだ。
しかし、状況は何もなかった為、俺の早とちりだったという事だな。
後でミクちゃんには謝っておこう。
俺は静かに扉を閉めて、一階へ行き、皆に問題は無かったと告げた。
そして、これからどうしようかなと考えていた所、ジーナちゃんが満面の笑みで手を挙げる。
「リョウ君! 今日からやる事ないんでしょ!?」
「あぁ、まぁ。そうだね。特に決まっている事は無いかな」
「じゃあさ。じゃあさ! ゲームやろうよ! どうせおチビちゃんはまだまだ寝てるんだろうし! 遊ぼう!」
「ゲームか」
どこか楽しそうにしている桜やココちゃん。
そんな二人を見て笑みを浮かべながら、自分たちもワクワクする様な顔をしているフィオナちゃんとリリィちゃん。
そして、当然ながら満面の笑みで、揺れているジーナちゃん。
どうやらこの場に居る全員が好意的な印象を持っている事が分かり、俺はやろうかと声をかけた。
そんな俺の言葉に皆は嬉しそうに頷き、ひとまずどのゲームをやるか選ぶ事になった。
が……!
「凄いいっぱいあるね……!」
「あぁ、確かに」
「あれ? お兄ちゃんもジーナちゃん達と一緒に選んだんでしょ? ね、ココちゃん」
「うん……! でも、いっぱい」
「あー。すまんな。桜。実はゲーム屋さんで買う時な。買うのが決まった奴は先に転送して、後でまとめて払ったんだよ」
「……それでも、代金見たら多いなーって分かるんじゃないの?」
「いやーまぁ、二人の喜んでいる顔を見てたら、まぁ良いかーと思ってなぁ」
「もー。お兄ちゃん!」
「はい」
俺は腰に手を当てながら怒りを示す桜に、反省を示す為床に正座した。
格好だけではない。
本心から反省しているのだ。
「確かにお金はお兄ちゃんが稼いだ物だけど、使い過ぎはどうなのかな、って私は思うな」
「はい」
「お、おねえちゃん、ごめんなさい。ココがほしい、って言ったから」
「いや、違うぞ。お兄ちゃんが勝手に買っただけだ」
「良いから。そういうのは良いから」
「「はい」」
桜は俺とココちゃんの訴えを一蹴すると、ため息と共に言葉を続けた。
「まず、ココちゃん」
「は、はい……!」
「欲しいなと感じたらちゃんと私たちに教えてください。その上で買えるか買えないか判断します」
「はぃ……」
「むしろ、ココちゃんの好きな物がどんな物か知りたいから、色々と教えてもらえると嬉しいな」
「……はい」
「だから、後でココちゃんが遊びたかったゲーム、お姉ちゃんに教えてね」
「うん……!」
座るココちゃんに手を差し伸べ、二人は手を繋いで微笑み合う。
なんて美しい光景だろう。
俺は心が澄み渡ってゆくのを感じながら、うんうんと頷いていた。
が、俺への審判はまだ終わっていない為、正座したまま時を待つ。
「次にお兄ちゃん」
「はい」
「ココちゃんが可愛いのは分かるよ?」
「あぁ。俺もだ」
「……」
「すみませんでしたー!」
「はぁ……まぁ、良いけどさ。今回こんなにゲーム買ったんだから、次はあんまり買っちゃ駄目だよ」
「えー」
桜が俺へのお説教を終わらせようとした瞬間、桜の決定に微妙な反応を示した子がいた。
そう。ジーナちゃんである。
「なに? ジーナちゃん。不満そうだけど」
「だって、だってー来年はもっと、もぉーっと面白いゲームが出てるかもしれないんだよ」
「うん。それで?」
「そ、それで?」
「そう。それで? いっぱい面白いゲームが出てるかもしれないけど、全部を買う必要はないよね?」
「あっ、あるよ! 実際に遊ばないとどれが一番面白いゲームか分からないよ!」
「ふむ」
「ね? だからー、ね? サクラちゃんもゲーム屋さんに行けば、きっと色々なゲーム買いたくなるよ」
「……」
「お願いしますっ! この通りでございますっ!」
ジーナちゃんは器用にも空中に浮きながら俺と同じ様に正座をして頭を下げる。
何とも微妙に誠意を感じられない光景であるが、ジーナちゃんなりの誠意なのだろうと思う。
分からないけど。
という訳で、桜はこれ以上は駄目かと頷いて、ジーナちゃんと俺を赦してくれるのであった。
素晴らしい裁きだったよ。桜……成長したな。
「はい。じゃあ暗い話はおしまい! 楽しい話をしよう!」
「そうだね。じゃあ、今から遊ぶゲームでも選ぼうか」
「リョウさんにさんせーい!」
「私も」
俺の提案にフィオナちゃんとリリィちゃんが即座に賛成してくれ、何となく場の流れはゲームを選ぶ方へ流れてゆく。
しかし、問題はこの後だ。
どのゲームで遊ぶのかという問題だ。
「んー! いっぱいあるから悩むなー……。あ! そうだ! まずはみんなでコレ! っていうゲームを選ぼうよ!」
「良いんじゃない? 何となく良さそうなゲームをみんな一つ選んで、順番に遊んでみるって感じで」
ジーナちゃんの提案に俺は頷き、みんなにも確認を取るが、みんな特に問題は無い様だった。
という訳で、それぞれ山積みにされているゲームを一個一個見てゆき、選ぶ。
俺は、まぁ……ゲーム屋で最初に気になったし。『人生ゲーム』を選んだ。
桜は料理屋さんになるゲームで、フィオナちゃんは騎士ごっこが出来るげーむ。
リリィちゃんは旅が出来るゲームで……ココちゃんは、やはりというか『ふしぎ探検隊』であった。
ゲーム屋さんで気になってたもんなぁ。
ジッと裏の説明を読んで、小さく笑みを浮かべているのが可愛らしい。
そして、そんなココちゃんの様子に桜もフィオナちゃんもリリィちゃんも気づいたのか、柔らかく微笑んでいた。
どうやら最初に遊ぶゲームは決まった様だ。
故に。
「じゃあジーナちゃんはコレ! 『ふしぎ探検隊』の次はこれにしようよ!」
「なにこれ……? ドラゴンゲーム?」
「そうドラゴンになって戦うゲームだよ! ぎゃおーん!」
「……」
ジーナちゃんい紹介された桜が微妙な顔で俺に視線を送る。
いや、だってゲーム屋さんでジーナちゃんが本当に買いたそうにしていたんだよ。
可哀想じゃないか。それを無視するのも。
「ま、まぁ。良いじゃないか。まだどんなゲームか分からないし」
「確かにね」
「とりあえず、俺はみんなが選んだゲームの中なら、『ふしぎ探検隊』が一番遊びたいゲームなんだけど、みんなはどうかな!?」
「さんせーい」
「ジーナちゃんも大賛成!」
「私も、それが一番気になってた」
「私も同じだね」
俺たちにとっては分かっていた話であるが、ココちゃんは自分のゲームが選ばれるとは思っていなかったらしく、ビックリした顔をしていた。
そして、嬉しそうにはにかんで、俺にゲームを渡してくれる。
「じゃあ、みんなで遊ぼうか『ふしぎ探検隊』!」
「「おー!」」
という訳で俺たちはまず『ふしぎ探検隊』というゲームを遊んでみる事にするのだった。




