表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あいつをイジメよう

作者: kokoroyomi

もう何年も昔の話だ。いや、正確には中学2年生の頃だから4、5年前か、


今日は成人式。今だと来賓の人が話している時間ぐらいかな


少し昔のことを思い返そう


これは今は亡き友人と僕が死んだ話だ




僕と彼が出会ったのは小学生の頃


明るく活発な彼が僕みたいなのと話してくれたのは今でも信じられないよ。この頃から 中学1年生くらいまでは楽しかったな


早く本題に入れって?急かさないでくれ。 さっきも言っただろう、これは僕と彼の話なんだ。


そうそう、僕と彼はとても仲が良くてね 体育の2人ペアとかだといつも一緒だった。


もちろん、2人で一緒に公園で遊んだりもした。子どもの頃ってすごいよね、どんなにつまらない事でも楽しめる。 いや、つまらないって思ったのは僕が成長したからか。今じゃあ鬼ごっこやかくれんぼ、なんてやらなくなったね


運動会や修学旅行もあったな。楽しい、楽しい6年間だったよ。それで2人とも中学生になったんだ。


僕たちの通ってた中学校は、4階まであるが、人数が少ない為、1クラスで3年間クラスメイトが一緒。


3年間一緒ってことで皆で連絡を交換しあった。


部活や自転車登校いろいろな変化を僕たちは2人で乗り越えた


そして一年後のある日、一人の生徒が転校してきた。そいつのせいで僕たちは、、、


そいつは クラスに一人は居る様なヤンチャな人


先生は"親の都合"、なんて言ってたけれど さすがに僕も中学生。なんで転校してきたか大体分かったよ。勿論、皆も。 それで例に漏れずあいつも連絡先に加わった。 勿論、個人の連絡先じゃなくてグループとしての連絡先だけどね


それでね、これは後から知ったことなんだけど、 僕と彼以外のグループが転校生のあいつによって作られたんだ


1週間ぐらいかな、あいつはこんなことを書き込んだ


「彼をイジメよう」


ってね


最初は皆反対してたけど、 クラスが仲良くなる、もっと良くする為にって、あいつが力説する内にまた一人また一人って最後にはグループに居る全員が協力した


呆れたか?僕もだ。しかし、集団心理と言うのもだろうか、結局全員が賛成した。


内容はこうだ


・皆が、僕たちより早く登校する


・彼と仲の良い僕を下駄箱で先生が呼んでいたと言う


・あいつがお前嫌われてるんだよと言う


・みんなは 目をそらす


彼が提案すると5分間程度沈黙が続いたが、 一度賛成した手前変えられなかったらしく翌日決行となった


あいつらの作戦はうまくいったよ。


いつも通り彼と登校していた僕は、当時人気者だったクラスの中心人物が、僕が先生に呼ばれてるって言うもんだから、僕は職員室に行った。そしたらびっくり、担任の先生は呼んでいないって言うんだ


僕は、そういえば誰先生なんて言ってなかったなと思い、その子に誰先生か聞きに行こうと階段を上った。教室が見えた時、彼が教室から飛び出してきた。 僕が 挨拶をしようとしたが、彼は廊下を走っていてもう声が届かない距離にいた。トイレか?僕はそう思い教室に入った。 僕は驚いたよ。普段は遅れてくるはずの生徒も、遅刻してくる生徒も皆そこにいたんだから


僕がいつも通り挨拶しても俯いたまま。


静まる教室の中、それを打ち消すように、一つの笑い声が聞こえた。あいつだ。


僕が呆然とそれを見ていると、一人が「ごめん」と呟いた。次々に 聞こえてくるやかまし声、 今でも思い出すとはらわたが煮えくり返るよ


何があったか、大体察した。


階段を駆け下り、急いで下駄箱を見た。あった。彼の靴が。急いで一階、二階、三階と調べた。居ない。 僕は気づき、駐輪場に向かった。無い。彼の自転車が。


僕と彼は 一緒に登校するから、 自転車を停める場所も一緒。


僕は一生懸命自転車のペダルを回した。 登校中、いつも見る公園を一瞬見た。居ない。自転車は止まらない。 彼と勇気を出して入った川。居ない。居ない。居ない。居ない。居ない。何処にも居ない。


彼の住むマンションに着いた。 普段は車や自転車たくさん置いてある駐輪場。 みんな学校か仕事か、僕は知らない。ただそこに自転車が一つ、倒れている。 彼の心情を思わすようにポツンと。近くによって確信した。彼の自転車だ。 急いでマンションの中に入り、エレベーター付近に行く。いつもの管理人さんがいる。 何年も彼と一緒に来ている為、管理人さんが、


君か、彼なら先に行ったよ


と言った


何も言わず5階まで駆け上がった。ピンポーン。僕の息をかき消すにように響くその音は、静かに消えてゆく。音が消えるのが、怖かった。2、3回押しても響くのは音ばかり。だんだん息が整ってきた。僕は彼に


大丈夫か、と大きな声で言った


ガチャ


僕の息と声、そしてインターホン以外の音。いつも聞いていた音、慣れ親しんだ音。


ドアとドアが擦れ、キーンと音を鳴らし、開かれた扉。 この日ばかりは、この音が不快に感じなかった。居た。しかし、そこに居たのは笑顔で皆を明るくしていたいつもの彼とは違った。目には涙を浮かべ、鼻は赤くなっていた。


こんな彼を見たのは中学1年生の夏休み、彼の両親が 海外出張に行くと言った日以来だ。僕は彼を優しく包み、部屋の中へ入った。昨日遊んだゲームが散らばっていた


僕は彼から事情を聞いた。 その内容はひどいもので、彼が教室に入るなり、お前嫌われてるんだよ、と言われ、戸惑う彼を無視。彼が謝ると、あいつは分かったらさっさと消えろ、お前はいらないんだよ、ばーか、と言われたらしい


僕はムカついた。笑ったあいつも、謝ったあいつも、無言だったあいつも。


そして彼は


明日の放課後また来て、今日は一人で居たい


と言った


今思えばそれが人生最大の過ちだったよ


僕は彼に言われるまま帰った。


明日の放課後全員に謝罪させようと思って


管理人さんは何かを察したようで、僕の頭を撫でてくれた。僕は泣いた。


次の日の朝、1時間位だったかな?僕は寝坊した。両親がどちらも旅行に行ってることを思い出し、急いで支度した。


ピロン


スマホを見るとそこには一件の通知、彼からだ。普通この時間は体育だから最悪放課後まで気がつかない。そう思いながら画面を開く。


「今までありがとう」


そう一言書いてあった


スマホを離し、家の鍵をかけずに自転車にまたがった。


急げ、急げ、急げ


ペダルを回す。彼の家に行く時に見るコンビニ、見えない。信号機が赤く光る。止まらない。車のクラクション。聞こえない。


15分ぐらいして、ようやく着いた。不思議と疲れは無い


目の前には警察官


ようやく思い出した。先程見たコンビニ、信号機、クラクション、そして疲れ。そして救急車が横を通ったことを


警察官が作業してた


呆然とたたずむ僕を見て、管理人が僕を優しく包んだ


泣いた


悲しみ、怒り。いろんな感情が混じる。


30分程した頃だろうか、僕は管理人室に居た。そして事情を聞いた。人が飛び降りたこと。それが彼であること。


僕はふらふら歩きながら5分程たった時、見た。あいつを。転校し、彼をイジメた彼を。


近くにバットとキャリーケースを見つけた。


僕は彼を殺した神を憎み、 俺に殺しの許可をくれた神を崇めた


この瞬間、僕は死に俺が生まれた




さあさあ遂にお待ちかね、俺の復讐劇だ




あいつはスマホを見て視界を自ら奪い、イヤホンを着けて聴覚を自ら奪った。 2つも自分から奪っているんだ、俺があいつから1つ 奪ったところで文句はないだろ


最初の殺人は、自転車に乗るよりも簡単だった。人通りの少ない場所のおかげか誰にも見られなかった。 防犯カメラが無かったことは流石の俺も驚いた。


冷静だった。あいつをキャリーケースにぶち込んだ後、あいつのスマホのロックを解除した。指紋認証でよかった


俺は彼からイジメの詳細を聞いた時、 俺たちを除いて、連絡を取っていることに気づいた。 本来ならこれを警察に持っていくべきだが、殺人をした手前そんなことはできない。いや、 もとよりそんなつもりはない。例え殺す前でも、俺はこいつをぶち殺してた


俺は急いで自転車を取りに戻り、キャリーケースを括り付け、血で汚れたバットをビニール袋に何重も重ねてバットを入れた


家に着くと、急いでカード、通帳、その他を持って銀行にお金を下ろしに行った。


近くの銀行に行き、50万ほどおろしてきた。50万の内、4万を使い、ホームセンターでロープとポリタンクを10個と 無人のガソリンスタンドでガソリンを満タンにした。何回も往復した。あの時は疲れたな。


灯油の入ったポリタンクを袋に包み、2つずつ学校の隅に置いた。10個全部移動できた!達成感が溢れてきた。


残りのお金と服とキャリーケースを持って俺は学校に行く。自転車、キャリーケースも同じ場所に隠す。


授業中、廊下に居るのは俺一人。俺は4階の荷物が乱雑に置かれている空き教室に入った。放課後、放送が入り部活動が休みになり、職員会議をやるようだ。何を話したのか知らない。それよりやることがある


俺はあいつのスマホでグループに入りあいつに成りすまし、皆にとある情報を流した


[彼、まじで死んじゃったwww根性無さすぎ。 一応 話し合わせる為に全員夜学校に来て。後、来なかったり、誰かに話したらそいつに罪擦り付けるからwww]


最初は既読数が増えるだけだった。しかし、一人が彼のマンションで警察を見たと言ったのを皮切りに、私も私もと続いた。全員既読


そこで俺はさらに


[時間は10時頃、皆こっそり来いよ。鍵は開けとくから4階のいつもの教室に集合でwww ]


9時00


先生が見回りに来て10分たった。急いで職員室に行き、昇降口、教室、隣の教室、放送室の鍵を借りた。


9時15


キャリーケース、ポリタンク、ライターを隣の教室に置く


9時45


放送室で録音。5分間黙り、言いたいことを言う


9時53


そろそろ連絡するか


[全員いる?今、 皆の為に自販機で買い物中。俺ってば超優しいwww]


一瞬にして全員既読


一人が全員いると送った


[オッケー]


9時55


放送室のドアを開けて録音再生と放送開始。


9時58


ポリタンクを9個静かに教室前に置く


キャリーケースを教室前に置く


あらかじめガソリンで湿らせたロープを置く


10時00


音声


皆こんばんは、彼は死んだ。君たちのせいで


俺の声を聞いたクラスメイトは皆驚いていたよ。本当に最高だった


女子キャーキャー喚き、男子は責任転嫁のしっぱなしだった


君たちも聞いてみるかい?


あの騒音を


10時2分


残した一つのポリタンクの中からガソリンを教室前に出す


10時3分


音声 命懸けて償え


ロープに着火


ロープに着火した火は早かった。後少し逃げるのが遅れてたら俺も死んでいたよ


それからは急いで荷物を持って駅に向かった。最後にあいつらの苦しむ姿が見れなかったのが心残りだ


キップを買い、直ぐに電車に乗って終点で降りた。出来るだけ遠くに


乗り換えて電車に乗ろうとしたとき、神は俺を許さなかったようで、君も覚えているだろ、あの日、震度6強の地震が起きたことだよ。俺は絶望したよ。地震が起きたからと言うよりも電車が止って乗れないことに、急いで外に出た。コンビニで久しぶりのご飯を食べながら時間を潰すと俺の住んでいた町が震度6強の地震が起きたことをラジオで知った。勿論スマホは家に置いてきた。でも、その地震のお陰で今まで逃げ切れたんだから、やっぱり神は俺の見方か




「これで満足か警察官さん」


「あぁ、5年間も逃げ続けた割にあっさりと白状したな」


「5年も逃げたからだよ」


「俺のやったことは結局無駄だった」


「、、、なぜだ?」


「これ、俺がいつも肌身離ず持っている新聞なんだけど」


[アパートから中学生が転落


警察は自殺と断定。学校はイジメはなかったと供述]


[学校で集団自殺


身元不明の遺体多数。クラスメイトの連絡がないことから、警察はクラスメイトと見て調査。同日起きた自殺との関連も視野に入れて調査中]


[学校で起きた不審火は放火だった。


警察は学校で起きた不審火は放火と断定。犯人を捜索中。


警察は同日起きた自殺との関連は無しと判断]


「結局歴史は改竄され、俺の復讐劇は皆知らない。」


「・・・」


「で、俺の判決は」


「ーーー」


「そうか。なぁ、頼む。どうかこの真実を世間に」





5年程前一人の男によって捨てられたラジオがあった


動かない、壊れたラジオ


ギギギ


プッ


【ーーー5年前に起きた学校に放火した青年に裁判官は今日の午後、死刑を言い渡しました。被告はただムシャクシャしてやったと供述し、犯行を認めました


続いて今ーーー】


ツーツーツー



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ