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【コミカライズ】透明人間になったわたしと、わたしに興味がない(はずの)夫の奇妙な三か月間  作者: 狭山ひびき


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エピローグ

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

「こんにちは」


 オレリアが占い店の扉を開けると、チリンというベルの音で気づいたのか、奥から砂漠の砂色の髪をした占い師が姿を現した。


「おや、あんたは……」

「お礼を持ってきました」


 オレリアの手には左の中指から外れた指輪と、それからお金の入った袋がある。


「その顔を見ると、いい未来が手に入ったようだね」


 占い師が手招いたのでオレリアが席に座ると、占い師はカードの束を目の前に扇状に広げた。


「一枚引いてみな」


 言われて、オレリアはカードの中から一枚を選んで占い師に渡す。

 彼女はカードを確かめて、そして嫣然と微笑んだ。


「やっぱりこのカードだったね」

「え?」

「いや、何でもないよ」


 占い師はカードをひとまとめにするとテーブルの端に置いて、オレリアの手から指輪を受け取る。


「報酬は結構だよ」

「え? どうしてですか?」

「あたしにも事情があるのさ」


 占い師はそう言って顔を上げると、店の扉の奥へ視線を向けた。

 新しい客でも来たのだろうかとオレリアも振り返ったが、特に誰かが入ってくる様子はない。


(?)


 不思議に思っていると、占い師はオレリアの頭をポンと撫でた。


「ほら、もうお行き。外にいい人が待っているんだろう? あんまり待たせるものじゃない」


 オレリアは驚いた。

 確かにここへはルクレールと一緒に来て、彼は店の外でオレリアの用事がすむのを待ってくれている。


「どうしてわかったんですか?」

「占い師をなめるんじゃないよ。ほら、お帰り。もうここへは来るんじゃないよ」

「でも、やっぱりお金……」

「だから、いらないよ」


 占い師はひらひらと手を振る。

 お金を渡さずに帰るのは躊躇われたが、無理やり押し付けるのも違う気がして、オレリアは迷った末にぺこりと頭を下げた。


「本当にありがとうございました。じゃあ、せめて……そう、その指輪を買い取ります」

「この指輪には、もう何の効力もないよ?」

「いいんです。思い出として、取っておきます」

「そうかい。じゃあ、この値段だけもらおうかね」


 オレリアはホッとして、指輪の代金として金貨一枚を占い師に渡すと、もう一度頭を下げて店を出た。

 店のすぐ近くで待っていたルクレールが、微笑んで手を差し出してくる。


「用事は終わった?」

「はい」

「じゃあ、次はどこへ行こうか」


 今日は、ルクレールとの初デートだ。

 占いの店にお礼に行くと言うと、せっかくだからデートをしようと誘われたのである。


「ふふ、どこへ行きましょうか」


 指を絡めて、笑いあいながらゆっくりと道を歩く。

 ただ歩いて、たくさんおしゃべりをして笑いあって、それだけで充分幸せだから、目的地なんてどこでもよかった。


(幸せ……)


 透明になったときはどうしようかと思ったけれど、占い師の言った通り、オレリアの望んだ幸せな未来が手に入った気がする。

 オレリアはルクレールと並んで歩きながら、ちらりと肩越しに振り返った。


(本当に、ありがとうございました)


 ここへ来なければ、この未来はなかっただろう。

 オレリアは記念に買い取った指輪をぎゅっと握りしめて、家に帰ったら、奇妙な三か月間の思い出として、宝箱の中にそっとしまっておこうと思った。



     ☆



「行った、か」


 占い師は小さくつぶやいて、それからゆっくりとカードを一枚めくった。

 そこに書かれていた絵柄を見て、小さく笑う。


「……やっぱりね。あんたの運命はあの子だったよ」


 昔、一人の年下の男に恋をした。

 けれども彼女は本当は占い師だったから――


「幸せにね」


 彼女はカードを置いて立ち上がる。

 アデライド――優しい声でそう呼んだ、少年のことを思い出しながら、彼女は店の扉にクローズの看板を掲げた。




お読みいただきありがとうございました!

これにて本作は完結となります!

楽しんでいただけたなら幸いです。


もしよろしければ本作の評価を下記☆☆☆☆☆にていただけますと励みになります。

どうぞよろしくお願いいたします。


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透明人間
― 新着の感想 ―
[良い点] とっても好きです
[一言] オレリア、ルクレール、アデライド。 3人ともが切なかったですね~。 オレリアとルクレールは、雨降って地固まるで幸せになってよかったです。 私的にはアデライドが第2のヒロインのように思え…
[良い点] 夫婦が仲良くなっていく過程が可愛らしかったです。 [気になる点] アデライトさんは、なぜ穏便に別れなかったのでしょう……若かったとはいえ、恋人の心にトラウマを植え付けるような振る舞いになっ…
感想一覧
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