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7 闇の天使

『闇の天使』という名はアディーナがそう言った思いを残した霊の助けになればと活動する時の名前だった。


黒尽くめなのも闇夜に紛れるためである。


霊の中のネットワークというものがあるのか、もともとアディーナの所には話を聞いてもらおうと霊が良く訪れていた。

これまでは話し相手だけだったが、いつしか死者の最後の願いを聞いて奔走するようになった。


しかしどこでも出入りできる霊と違い、生身のアディーナが行ける所には限界がある。

今回のような裏町は治安こそ悪いが警備もない、しかしそうでないところは難しい。


騎士団に闇組織のアジトについて報せに行った時は逆に怪しまれ逃げるのがやっとだった。


祖父やダニエルの指導でそれなりに身のこなしにも自信があるが、本格的な訓練など受けていない。


引き受ける内容にも限界があるのだ。


しかも大抵の人には魔力があって魔法が使えるが、アディーナにはないので魔法を防いだり攻撃したりできない。


この前の騎士団からの攻撃も、剣なら何とか応戦できたかもしれないが、火球や水槍などは避けるので精一杯。一応被っているフードや身に付けている装飾品に魔法防御の処置は施してあるが、それだけである。


その夜訪れたのは男性の霊だった。


魔道具師のマイスターでハンスと言う名前だと彼は自己紹介した。


彼は仕事の最中に突然死んでしまった。


しかも後ろからぐっさりと刺されて。


「つまり……殺されたんですね」

『いかにも。背後からなので気づいたときにはもう……』


お腹のあたりに大きな刺し傷があるのでそれが死因だとはわかっていたが、生々しい。


「それで、犯人を見つけて欲しいとか?」

『いえ、犯人はわかっています』

「『『『え』』』」


彼の言葉にアディーナもその場にいた霊たちも驚く。


『私が望むのは最後の依頼で作っていた品物をその者から取り戻して依頼人に届けて欲しいのです』

「え、殺人犯から?」


『……無理……ですか』

「無理……というか……そもそもなんで、殺されるようになったんですか?」


アディーナは殺人などの犯人さがしは基本やらない。それは騎士団や自警団の仕事だ。

人は自分の領域を侵されると攻撃に転ずる。犯人さがしは彼らの職務に首を突っ込むことになる。

誰も引き受けてくれない、引き受け先のない願いだからこそ、引き受ける価値があると思っている。


『まあ……言うなれば嫉妬……ですか……私を殺したのは私の商売敵です。私の方が腕がいいのを前々から妬んでいたのです』

『みっともないのぉ……己の技量が劣っておるなら腕を磨けばいいこと。恨んで殺すなど愚の骨頂』

『それでも殺されてしまったものは仕方ありません。私もまさか彼がそこまでするとは思っておりませんでした』

「最後の仕事って?」

『はい、魔力封じの指輪なのですが、以前に作ったものが壊れたということで、新しく作製していました』

「それをその……あなたを殺した犯人が持ち去ったと……」

『お願いします。あれは私の最後の仕事で一生を掛けて作ったものなんです。あれを必要としている人がいるんです。時間がありません、あれがないとあの人が』

『なんだか偉く深刻ですね。そんなに大変なものなんですか?』


ダニエルさんがあまりの必死さに訊ねる。


『一体どなたに渡すものなんですか?』

『第一王子のアシェル様です』


「『『『え』』』」


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