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第8話 

日間ランキング(総合・恋愛)で1位を頂きました!(2022.6.25)


なろうで1位を頂くなんてびっくりして思わず画面を二度見してしまいました(^▽^;)


1位を頂けたのはひとえに読者の皆様からの応援のお陰です(*^^*)

本当にありがとうございます!


引き続き頑張って執筆しますので、どうぞよろしくお願い致します♪

 バーンズ伯爵邸を出発したベンとリリーを乗せた馬車は、出発してから約三時間後にトーマス伯爵邸に到着する。


 バーンズ伯爵邸のあるバーンズ伯爵領とトーマス伯爵邸のあるトーマス伯爵領は、領地が隣同士であると言っても、馬車で移動するとそれなりに距離があり、道も一部整備されていないガタガタとした道を通る為、移動に時間がかかる。


 バーンズ伯爵邸を出発したのはアフタヌーンティーを楽しむような時間帯だったので、今は夕日が少しずつ沈んでいくような時間帯である。


 二人がトーマス伯爵邸に到着して少し休憩したら、ディナータイム。


 そんな時間だ。



 馬車はトーマス伯爵邸に到着し、屋敷の門を潜り抜け、馬車乗り場で停車する。


 御者が馬車の扉を開け、まずはベンが降り、続いて彼の手を借りてリリーが降りる。


 馬車から降りた二人はトーマス伯爵邸の玄関まで歩き、玄関の扉に装着されているドアノッカーを鳴らす。


 すると、内側から扉が開き、使用人が出迎える。


「お帰りなさいませ、ベン坊ちゃま。そちらのお連れ様はどちら様で?」


 二人を出迎えたのは、トーマス伯爵家の家令であるマークだ。

 

 彼はまず帰宅したベンに帰宅をお出迎えの挨拶する。


 そして、目ざとくベンの隣りにいるリリーを見つけ、問いかける。


「ただいま、マーク。彼女はリリー・バーンズ伯爵令嬢。婚約者()()()アデレードの義妹だ。これから私の婚約者としてこの屋敷で一緒に暮らすから、覚えてくれ」



 マークはベンの婚約者はアデレードだと認識している。


 マークはベンの”婚約者()()()”という表現に引っ掛かりを覚えた。


 ベンにとって既にアデレードと婚約していたのは既に過去のことになっているようだ。



 自分が知らぬ間に婚約者の変更があったのだろうか?



 今日、ベンがバーンズ伯爵邸に訪問したことはマークも把握している。


 もしかしたらそこでバーンズ伯爵家の方々と話し合いをされて、婚約者を変更する運びとなったのかもしれない。


 新しい婚約者だというリリーもアデレードの義妹ということであれば、バーンズ伯爵家の者になる。


 ベンが婚約者をアデレードからリリーに変更したいと申し出てバーンズ伯爵家側が了承したのか、バーンズ伯爵家側が何らかの事情で婚約者をアデレードからリリーに変更したいと申し出てベンが了承したのかはわからない。


 これはすぐに旦那様に報告しなければとマークは気を引き締める。



「そうでございましたか。リリー様、初めまして。私はトーマス伯爵家の家令を務めているマークと申します。どうぞお見知りおきを」


 マークに様付けで呼ばれ、丁寧な扱いをされたリリーはたったこれだけのことに有頂天になる。

 

 他の家ではお嬢様として接してもらえる。


 自分を伯爵令嬢扱いしないバーンズ伯爵家はやはりおかしいのだと的外れな確信を深める。



「マークさんね。わたしはリリー。お義姉様ではなく、わたしがベンの婚約者になったからそこのところよろしくね。まずはドレスに着替えたいな。わたしの為にドレスを用意してくれる? 出来れば大きな宝石の付いたアクセサリーもあると嬉しいわ」


 いきなりの要求にマークは面食らい、少々混乱する。


 今まで伯爵邸を訪問して数分も経たない内にそんな図々しい要求をしてくるような客人は彼の使用人人生において初めてだった。


 しかし、トーマス伯爵家に仕えて勤続25年のベテランである彼はすぐに混乱から立ち直る。


 冷静にマークが観察したところ何らかのやむを得ない状況――例えば誤って水たまりに落ちてしまい、着ている服が水浸しでべちゃべちゃな状態であったり、泥汚れで着ることが出来ない状態である等――に陥り、今すぐ緊急で着替えが必要ということではなさそうである。


 リリーはバーンズ伯爵邸で彼女に支給されていたワンピースを着たままトーマス伯爵邸を訪問している。


 マークの目から見て、彼女が着ているワンピースが(貴族令嬢が着るにしては)貧相であることは否めないが、やむを得ない事情で今すぐ新たに着替える必要性はないように思える。


 ただ単に彼女の我が儘で言っているだけと見受けられた。



 確かに緊急事態――例えば屋敷でパーティーを開き、使用人の不手際で客人のドレスに赤ワインがかかってしまった等――が発生した時の為に予備のドレスは用意がある。


 けれど予備のドレスは二、三着しかない上に、予備は予備だ。


 緊急性がない時に使って、急に必要になった時に使えない状態では意味がない。



 それに予備のドレスは華美なものではない。


 仮に予備のドレスを渡したところで、アクセサリーまで要求するような人物が満足するかと言えばそうではないだろう。


 彼女は暗に新品のドレスを用意しろと言っている。



「申し訳ございません、リリー様。それは致しかねます」


「どうして用意してくれないの? わたしはベンの婚約者よ? 婚約者にドレスやアクセサリーを用意するのは普通のことじゃない?」


「そうだぞ! ドレスの一着や二着、ケチケチしてないですぐ手配してくれ!」


「リリー様が正式にベン坊ちゃまの婚約者になったかどうかはまだ判断が付かない状況です。旦那様に事実確認していない状態で、ベン坊ちゃまの婚約者ということで伯爵家からドレスやアクセサリー等の高級品をあなたに用意して差し上げることは、家令でしかない私の一存では出来ません。旦那様から指示を受ければすぐに手配致しますが、緊急を要するような状態でもないのに今すぐ用意して差し上げるというのは致しかねます。伯爵家の財産からでなく、坊ちゃまの個人財産から全額ドレスの代金を出すと仰るならば、旦那様の意思確認や事実確認は必要ないので早急に手配致しましょう」


「そ、それは……」


 ベンは言いよどむ。


 母である伯爵夫人の付き添いでドレスのブティックに行った時に、デザイナーと彼女のやり取りを聞いて大体一着あたりどの程度の値段なのか知っている。


 その時夫人が注文していたのは、色や生地、入れる刺繡のモチーフ、果てはドレスの形をデザインするデザイナーの指名までとにかく一から自分好みに注文していく一点もののオーダーメイドのドレスで、子供心にこんなに高いんだと吃驚した思い出だった。


 あの時はオーダーメイドだったが、既製品のドレスでもたった一着でベンの一ヶ月分の小遣いは軽く吹き飛ぶ。


 ベンは自分の懐を痛めることなく、伯爵家の財産からリリーにドレスをプレゼントして自分の株を上げようとしていた。


 自分のお金から払う気がないからこそ、”ドレスの一着や二着、ケチケチするな”と囃し立てたが、いざ自分で代金を払わねばならないとなると途端に口ごもる。


 マークはそんなベンの小狡さに気づいており、自分の財産から代金を支払うという話であればそんなことは言えないと分かっていて提案した。



 以前、ベンがバーンズ伯爵邸でリリーに贈り物をした時は、ベンが婚約者にプレゼントを贈りたいんだと伯爵夫妻にその都度話をし、夫妻がその代金を伯爵家の財産から出した。


 夫妻はベンのアデレードへの態度を知っていたから、ベンが婚約者(アデレード)に贈り物をしたいと言い出したことで、ようやく心を入れ替えたのだと感激し、快く承諾し、代金を出した。


 そうやってベンが()()()の為に購入したものは全てリリーに贈られた。


 ベンは心を入れ替えたと感心した伯爵夫妻を騙して金貨を巻き上げているのだ。



 口ごもったベンにリリーは伯爵家の息子でも流石に個人の財産でドレスを買うのには金額が足りないのかと若干気落ちしたが、それは言動に表さなかった。


 家令の話ではベンの父である伯爵にベンの婚約者として自分を認めさせることが出来れば、婚約者としていくらでもドレスを用意してもらえそうだ。


 ならば伯爵に認めてもらうのが一番の近道だ。


 相手に上手く取り入って自分を認めさせ、自分の要望を叶えることについて、リリーの頭の中でバーンズ伯爵家の姉弟との一件がふと急に思い浮かんだ。


 あれは完全に失敗だった。


 あの件はもうバーンズ伯爵家を出た今、関係ない。


 でも、今度は絶対に失敗出来ない。


「じゃあ、ベンのお父さんにわたしのことを認めてもらえれば、わたしのドレスは用意してくれるのね?」


「ええ。旦那様がお認めになれば、私共は何も言うことはございません」


「わかったわ。ベンのお父さんとお母さんに認められる為には、まず会ってお話をしないと」


「マーク、父上と母上はどこにいる?」


「旦那様は執務室で書類仕事をされています。奥様はご友人のお屋敷に遊びに行かれていて、まだ屋敷にお戻りになられておりません。お二人とお話が出来るのはディナーの時間でしょうね。とりあえず旦那様の方には伝えておきますので、それまでお二人は坊ちゃまのお部屋で待機していて下さい」


「リリー、私の部屋はこっちだ」


 ベンがリリーをエスコートして、いそいそと自室に向かう。


 彼はディナーの前にリリーと邪魔の入らない自分の部屋で恋人らしくいちゃつく気満々で、頭の中はピンクな妄想の花畑だった。


 しかし彼が脳内でピンクな妄想を繰り広げていることは、彼が生まれた時から世話をしている家令にはお見通しだ。


「そうそう、ベン坊ちゃま。坊ちゃまの部屋で待機するよう言いましたが、部屋のドアは開けた状態でお過ごし下さいね。見張りのメイドも寄越しますので」


 婚約者同士であっても婚前交渉は推奨されない。


 婚前交渉は何かとトラブルの元になりやすいからだ。


 なので、未婚の若い男女が二人きりで部屋に籠るのは良しとされず、部屋のドアは開けた状態で見張りの使用人がつくというのが一般的である。


 こうして二人は伯爵家夫妻と話をする為に、暫しの間、ベンの部屋で健全に待機することになった。



 ――地獄の晩餐会(ディナー)まであと少し。

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