第40話
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アデレードが入学試験を受ける為に王都を訪問して一ヶ月が経った。
婚約の件についてはローランがバーンズ伯爵夫妻に報告し、バーンズ伯爵がルグラン侯爵邸まで出向いて書類に必要なサインをしたので、晴れて書類上でも正式にローランとアデレードは婚約者同士になった。
今日は入学試験の合否の結果発表の日だ。
当人であるアデレードは言うに及ばず、バーンズ伯爵夫妻にウィリアム、使用人までも含め屋敷全体がそわそわと浮足立っていた。
やがて、学園からバーンズ伯爵邸に手紙が届き、使用人によってサロンに運ばれる。
家族全員で開封しようという話になっていた為、伯爵一家は全員サロンに集まる。
「これはアデレードお嬢様宛てですので、お嬢様が開封なさるのがよろしいかと」
家令のテレンスはそう告げて、懐からペーパーナイフをさっと取り出し、アデレードに渡す。
アデレードはペーパーナイフを受け取り、危なげない手つきでそれを使い、開封する。
続いて封筒の中から便箋を取り出し、文面を目で追う。
文面を読み進める内に、アデレードは顔を綻ばせる。
「合格していましたわ!」
アデレードの言葉に伯爵夫妻ウィリアムも歓喜する。
「アデレード姉様、おめでとうございます! 姉様ならきっと合格すると信じていました」
「アデレード、よくやった。合格おめでとう」
「無事合格出来て良かったわ! 今日のディナーはアデレードの合格祝いね」
この場にいたテレンスによって使用人一同にもアデレードの合格は伝えられる。
使用人もまるで自分のことのように喜ぶ。
この日のディナーは伯爵夫人の意向が料理人に伝えられ、また料理人の方も祝福の気持ちを込めて豪勢なディナーとなった。
***
それから数日後、アデレードは合否がわかったので、ローランに手紙を認める。
婚約者になってから今回が初めての手紙だ。
合格した事実と春からローランと一緒の学び舎で勉強したり、王都で遊んだり出来ることを楽しみにしているという内容だ。
また、ぼちぼち学園入学の為の準備を進めているが、絶対用意しなければならない制服や教科書等の他にあったら便利なものがあれば助言して欲しいという内容も含まれている。
バーンズ伯爵家は王都にタウンハウスはない為、アデレードは学園在籍中は寮で生活することになっている。
学園では身分平等を謳い、身分に囚われず交流することも推奨はしているが、その言葉を額面通りに受け取って、身分が低い者が高い者に対し、学園の中でどんな無礼な振る舞いをしても全て許されるのかと言われると当然そんなことはあり得ない。
また、逆に高位貴族の子女が身分を笠に着て、身分の低い男爵や子爵の子女へ虐めをすることも良しとはされていない。
学園の中における身分は度々問題事が発生する。
ただ、高位貴族は学園に学費に上乗せして寄付金を納めることが多い為、学園側も校舎の中はともかく寮の中では身分に応じた対応を取らざるを得ない部分もある。
なので、寮は身分に応じて割り当てられる部屋が変わってくる。
ローランとアデレードはローランの方が家格は一つ上だが、近い待遇だ。
それでアデレードは寮生活の先輩としてローランにアドバイスを貰おうと思った。
アデレードが送った手紙はローランに届き、ローランもまたアデレードに返事を送る。
婚約者同士になってから、名前の部分が敬称なしになっていることにアデレードは面映ゆく感じた。
ローランからの手紙には、アデレードの合格を喜び、今度会った時はお祝いをするということや、最近のローランの学園生活が認められていた。
寮生活については、生活に必要なものは全部完備されていて、特別これがあったら便利だったのになと感じた場面は特になく、逆にあれこれ持って行くと退寮する時に荷物になってしまうからそこはよく考えて荷造りする必要があるとのことだった。
***
季節は冬を迎える。
ローランがバーンズ伯爵邸を訪問するまで、あともう少しだ。
アデレードは自室で温かいミルクティーを飲みながら本を読んでいたら、伯爵夫人が部屋に訪れた。
「アデレード、今日は商人が来るのだけれど、一緒に来なさい」
「私は今、買うものはないと思いますが……」
「あなたの買い物ではなくて、ローラン様への贈り物を用意するのよ。彼、誕生日が冬だったはず」
「ローランは冬生まれだったのですわね。知らなかったので、助かりましたわ」
「では、早速応接室へ行きましょう。今、商人を待たせているのよ」
伯爵夫人とアデレードは応接室に向かう。
応接室では商人が商品を広げて、二人を待っていた。
今日来ている商人は伯爵家との付き合いが長く、彼の所属する商会は主に服飾品や宝飾品の取り扱いをしている。
「お待たせしました。商品を見させて頂いてもよろしいですか?」
「奥様、お嬢様。どうぞゆっくりご覧になって下さい。ここに広げているのは一部の商品なので、仰って頂ければまだ他の商品をご紹介出来ます」
アデレードは並べられている商品をじっくりと吟味する。
吟味している中で、アデレードは自分の瞳の色と似ているアイスブルーの色の宝石が付いたネクタイピンとカフスボタンが目に留まる。
手に取ってよく観察しても、宝石の純度が高く、造りも安っぽい造りではなさそうである。
アイスブルーの色の宝石は光の当たる角度によっては虹の光のように輝く。
(すごく綺麗だけれど、私の瞳の色のネクタイピンとカフスボタンなんて贈っても身に着けてくれるかしら? 使ってもらえなかったら悲しいからこれはやめて違うものにしようかしら……)
アデレードが元々それが置かれていた場所に戻そうとしたら、伯爵夫人と商人が一緒になって止めた。
「ローラン様はきっと使って下さるわよ。むしろ喜んで身に着けると思うわ」
「その商品に使われている宝石自体が珍しいものになりますので、ネクタイピンやカフスボタンに加工されていることは稀です。贈る相手がお嬢様の婚約者ならばお値段的にもぴったりのお品かと思います」
「では、これにしますわ」
「ありがとうございます。贈り物とのことなので綺麗に包装致しますので少々お待ち下さい」
商人はネクタイピンとカフスボタンを柔らかい布でよく拭いた上で、小さめの箱に入れ、包装紙で包み、さらに青いリボンをかける。
贈り物用にという注文も多いせいか、商人は冴えない中年男性という見た目に反して、器用に包装する。
伯爵夫人がテレンスを呼び、商人に代金を支払った後、アデレードに商品が渡される。
「アデレードのお買い物は終わったから、後はこの場にいなくてもいいわ」
「お母様、ありがとうございました。私は部屋に戻ります」
ローランへの誕生日の贈り物を用意したアデレードはローランに会う日までの日数を楽しみに数えていた。
ローランが訪問するのは今月の最終日付近だ。
なのであと十日程である。
前回はバーンズ伯爵邸の庭園と温室の案内だったので、今度はバーンズ伯爵領内の街でお忍びで遊ぶ約束をしている。
ローランと何をしようか楽しみに計画を立てるアデレードに魔の手が忍び寄っていることをこの時のアデレードは気づいていなかった――。
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