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第1話 

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「アデレード。お前とは婚約を破棄する! 私の真実の愛の相手はリリーであってお前ではない! お前と婚約破棄して新たにリリーと婚約する!」


「ベン……!」


 アデレードは目の前の光景に頭がくらくらする。



 彼女の前では自分達の愛の世界に酔いしれている男女が一組いた。



 男性の方はベン・トーマス伯爵令息。


 アデレードの婚約者だ。



 女性の方はリリー・バーンズ伯爵令嬢。


 アデレードの従姉で二年程前にとある事情でバーンズ伯爵家の令嬢になった。


 令嬢と言っても形ばかりのもので、実質は伯爵家の居候である。


(家令からベンが来ているから応接室に行って挨拶するよう言われたので来てみたけれど、一体何を見せつけられているのだろう?)


 今、アデレードがいるのはバーンズ伯爵邸の応接室だ。


 応接室は品の良い調度品で整えられている。



「あなたみたいな婚約者がいながら他の女性に浮気するような方、頼まれても此方からお断りです。婚約破棄、承りました」


 アデレードは淡々と告げる。


 ベンとアデレードは領地が隣同士でお隣様同士繋がりを持って親しくしていた方が何かと都合が良いというような事情から婚約が結ばれた。


 重大な政略の元で結ばれた婚約ではなく、かなりふわっとした理由だ。


 家の爵位が釣り合いが取れていなければ、話はまとまらなかった可能性はあるが、幸か不幸かお互い伯爵家で生活水準もそう大きく変わらないだろうという判断だ。


 そこに当人同士の意思はなかった。



 アデレードはベンと婚約したが、彼に恋愛感情は持っていなかった。


 婚約してからもベンがアデレードに会いに来ることも多くて半年に一度程度で、手紙のやり取りや二人でどこかに遊びに行ったこともない。


 お互いの誕生日には、アデレードは使用人任せではなく自分でベンの誕生日プレゼントを用意し、メッセージカードと共に贈ったが、ベンは礼を言わないどころか、アデレードの誕生日に何も贈ってはこなかった。


 アデレードはベンのその一連の動向からベンが自分を気に入らなかったのだろうと思った。



 その証拠に去年の夏、ベンがバーンズ伯爵邸に来た時にちょっとした手違いでリリーと遭遇してからは、急に伯爵邸を訪れる頻度が上がり、リリーにはプレゼントも頻繁に贈っていた。


 ただ、配達という形を取ると、アデレードには一切贈らないのに、リリーにばかり贈り物を贈っていると伯爵又は伯爵夫人の耳に入ることになる。


 それを避ける為に会った時にベンはリリーに直接手渡ししている。


 リリーは伯爵邸の離れで暮らしているが、彼女への監視を兼ねて付けているメイドから情報は伯爵家に伝わっているので、動向は筒抜けである。 


 リリーはベンに何か貰う度に自慢したいのかそのメイドに見せびらかしていた。 

 


「ふん、殊勝なことだ。お前、リリーを虐めているんだってな。リリーから話は聞いた。どうして義妹なのに仲良く出来ないんだ?」


(え? ”義妹”ですって? いや、私の義妹ではなくて(血縁上は)従姉なのですが? ついでに言うと、養子縁組はしていますが、その方は伯爵家の実子同等の権利は一切持っていない所謂居候なのですが?)


「それはベン様に何か関係ありまして?」


「お義姉様! わたしのことが気に食わないのは分かりますが、食事を抜いたり、本邸の中に入るのを禁止したりするのはやめて下さい……! 私だって伯爵令嬢なのですよ!」


「リリーに謝れ、この悪女が!」


「罪を認めてわたしに謝って下さるだけでいいのです」


「謝らないわ。あなたは()()()()の伯爵令嬢。それに相応しい扱いです。話がそれだけならもう退室するわ」


 アデレードはもう話を聞く気がないとばかりに退室しようとするが、ドアを開けて退室する前にくるりと振り返る。



「ベン様とリリーの件は私からお父様に伝えておきますわ。トーマス伯爵家にはベン様ご自身で説明して下さい。当家としては私ではなくリリーと婚約することに異論はございません」


 アデレードはそれだけ言うと今度こそ退室した。

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