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【12/13 2巻発売!】アーシャ・リボルヴァの崇拝~皇帝陛下に溺愛される悪役令嬢は、結婚の手土産に不穏分子を平定するようです。~【コミカライズ予定】  作者: メアリー=ドゥ
第一章

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37/72

平伏せよ。


 イオが跳躍するのを見て、アーシャは奥歯を強く噛み締めて呼吸を止めた。


 ーーーもう少し……ですわ……!


 失敗は出来ない。

 手の魔剣銃の狙いを定める為に、極限まで意識を集中する。

 


 狙うのは、腕輪。



 風の魔弾は十分に届く距離だけれど、ベアングリードに抱えられた上にモルちゃんに拘束されたままで、姿勢が最悪なのだ。


 アーシャの握力では、一発打ったら反動の衝撃ブローバッグで手から魔剣銃が飛んでいくだろう。


 だから、確実に当たる距離に、イオが入った瞬間に……。


 ーーーここッ!!


 アーシャは、引き金を絞った。


 銃口がブレる前に、キュン! と宙を引き裂いて飛んだ風の魔弾が、狙い違わずイオの腕輪だけを撃ち砕く。


「やりましたわ……!!」


 しかし、同時に魔剣銃がどこかへ飛んで行き。


『グルゥァアアアアッッッ!!』


 まだ、ウルギーに操られたままのシロフィーナが風の息吹(ウィンドブレス)を吐き出して、アーシャは、ベアングリードやイオごと、強烈な一撃に吹き飛ばされた。


※※※


「アーシャ! イオ!!」


 ナバダは、思わず叫んだ。


 ブレスに吹き飛ばされたアーシャは、気絶したのか動かない。


 目を凝らすと、微かに胸は上下している。

 紅蓮のドレスと、ベアングリードやモルちゃんの強靭な体のおかげで、なんとか即死は免れたらしい。


 モルちゃんの拘束は解けており、同じように気絶したのか近くに転がっていた。


「無駄ナ足掻キダナ」


 アーシャが気絶したからか、つまらなそうにウルギーが呟き、指を鳴らす。

 すると最悪なことに、アーシャを抱えていたベアングリードも、瀕死の様子だが生きていたようだ。


 元々怪我を負っているような動きをしていた上に、飛竜のブレスが直撃したからだろう。

 全身がズタズタに引き裂かれて、ほとんど力はないようだが……イオの支配も解けて完全にウルギーに掌握され、怪我を無視してアーシャの方に向かっていく。


「イオ!!」


 ナバダが声を張り上げると、イオはピクリと指先を動かした。


 後ろに跳んでいたのが功を奏したのか、鎌鼬(かまいたち)によって怪我を負ってはいるものの、動いて起きあがろうとしている。

 けれど、上手くいかないようだ。


 あの子は、アーシャを助けにはいけない。


 そこで、ウルギーの声が聞こえた。


「興ガ削ガレタガ、続キダ」


 ウルギーの両脇には、ギドラミアとシロフィーナ。

 ナバダやベリアを抱えたベアングリードも、ウルギーの命令に応じて、腕に抱いたこちらにギロリと目を向けてくる。


「……ッ!」


 大きく口を開けて、こちらに噛みつこうとしてくる。


「私ニ逆ラッタ愚カシサヲ噛ミ締メ、恐怖ト絶望ノ中デ死ぬガイイ」


 ウルギーの愉悦に満ちた声。


 どうにも出来ない。

 皆死んでしまう。


 ーーーそんな、ことを……!!


 アーシャがあれだけ頑張ったのだ。

 それを無駄にさせて、良いわけがない。


 あんな状況で、アーシャはイオの命を優先した。


『わたくしについて来れば、全て上手くいきますわ!』


 あんな、誇らしげで、何も疑っていないような、憎らしい顔をして。


 ーーーどこが、上手くいってるってのよ……ッ!!


 馬鹿が。

 こんな状況でイオを助けたって、どうにもならないだろうに。


 ーーーどこまでも……ッ!!


 どこまでも、アーシャはナバダの神経を逆撫でする。


 あの女は、見捨てないのだ。

 ナバダに、イオを助けると約束したから、それを実行した。


 だったら。



 ーーー私だって……一応、アレとタメ張るって、思われてたのよ……!!



 極大魔術で疲れている程度で、良いようにやられたままで、終わってたまるか。


 ナバダは、ブレスの影響で紫の靄が散り、ウルギーの支配力が僅かに弱まっているのを感じていた。


 ウルギーは、傲慢の名の通り、どこまでもナメ腐ってる。

 自分に勝てるはずがないと。


 ーーー誰が、お前如きに……!!


 ナバダは、残った魔力を無理やり捻り出して、全身から放出した。


「おぉおおおお!!」


 指先が僅かに、動く。

 ナバダはそこを起点に、支配を打ち破り……腕を振り抜いた。


 手にしたダガーを逆手に持ち替えて、べアングリードの喉を、魔力を込めた刃で一息に引き裂く。


 頸動脈を断たれて、べアングリードの首からバシャバシャと飛び散る紫の血を浴びながら。

 ナバダは魔獣の拘束を抜け出して、アーシャの元へと跳んだ。


 一歩、二歩、三歩。


 速度だけなら、この場の誰にも負けない。

 同じように拘束を解いたのか、村長のシャレイドがウルギーに、ギドラミアにウォルフガングが襲い掛かっている。


「ホウ……ダガ、間ニ合ウカナ?」


 再び飛竜が、アーシャに向けて風の息吹(ウィンドブレス)を放とうとしている。

 そこに。



「シロフィーナ!! 待機(ステイ)!!」



 べアングリードの顎を下から槍で貫いたが、硬く締め付けられた腕からは逃れられていないベリアの、渾身の呼びかけ。


 飛竜が、ピタリと動きを止める。


「アーシャは……ッ!!」


 殺させない。


「アーシャ・リボルヴァは……ッこんなところで死んでいい女じゃ、ないのよぉ!!」


 最後の力で爪を振り上げた魔獣と、倒れ伏すアーシャの間に。

 ナバダは覆い被さるように体を滑り込ませ、体でその一撃を受け止めようとして……。




『ーーー平伏せよ』


 


 静かな声が響き渡ると同時に、アーシャの体から、彼女のものではない・・・・・・・・・膨大な魔力が膨れ上がった。


 ーーー!?


 さらに間髪入れずに不可視の圧が天上から降り注ぎ、ナバダは飛び込もうとした前傾姿勢のまま地面に押し付けられ、思わず目を閉じる。

 

「ぐっ……!」


 そして、巨人の手で押さえ付けるような圧で這いつくばらされたまま、背筋が怖気立つような怒りの気配・・・・・を感じた。


 力を込めて首だけ曲げると、そこに見えたのは、柔らかそうな紫の革で出来た靴。


 それが、宙に浮いている。


 視線を周りに走らせると、同じようにベアングリードもうつ伏せに倒れて絶命していて……シャレイドやウォルフガングも膝をついている。


 ウルギーやギドラミアですら、倒れてこそいないものの、その動きを拘束されているようだった。


「コレ……ハ……!?」


 初めて、苛立ちでも愉悦でもなく、狼狽えたようなウルギーの声が聞こえる。


 靴の持ち主は、ふわりと地面に降り立った。


 アーシャを、腕に抱いて。

 その黒い瞳を、冷たく光らせ。


 圧倒的な魔力の放出によって、黒い髪と服の裾をゆらめかせている。


「……アーシャ」


 その男の呼びかけに、腕の中にいる少女がピクリとまぶたを動かし、目覚めたようだった。


 彼女が、掠れた声で呼んだ、相手は。

 この土壇場で、現れたその男は。


「へい……か……」



 ーーーバルア皇国第三代皇帝、アウゴ・ミドラ=バルア。



 彼は怒りの気配を漂わせたまま。


「自由は、許した。ーーーだが、死ぬことを許した・・・・・・・・覚えはない(・・・・・


 しかしどこまでも静かに、そう、口にした。

 

良いところを全部掻っ攫っていく男、登場。


『圧倒的な暴力は、全てを解決する』を体現してますね。

 まさかたった一言で戦場を支配しようとは、誰が予想……いや、むしろ予想の範囲内ですね、ええ。


というわけで、ザマァのお時間です!


や っ ち ま い な ! と思われた方は、ブックマークやいいね、↓の☆☆☆☆☆評価等、どうぞよろしくお願い致しますー!

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― 新着の感想 ―
[一言] いやぁーホンマにエエとこガッツリさらって行く、エエ男っすわっ!
[良い点] 陛下遅すぎ! でも助かりましたね。 陛下がものすごいざまぁをしてくれますように!
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