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【12/13 2巻発売!】アーシャ・リボルヴァの崇拝~皇帝陛下に溺愛される悪役令嬢は、結婚の手土産に不穏分子を平定するようです。~【コミカライズ予定】  作者: メアリー=ドゥ
第一章

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26/72

ティータイムですわ!


 あの後、【遁甲蛇(ゴルゴンダ)】を誘き寄せたイオを連れてきたのがベリアだ、ということで、少しだけ揉めた。


 が、被害らしい被害が特に出ていないことと、ベリアがナバダと同じくらいショックを受けていた様子だったのを見て、シャレイドが不問に付した。


 一応イオの襲来を警戒して、しばらく村の外で夜の見張り番を私兵団も行う、ということで対価とした。


 とりあえず、私兵団は住む家を準備するまでは野宿、ベリアは現在アーシャとナバダが住んでいる家で寝泊まりすることになった。


 ベリア達は、飛竜一体を含む、西部国境線を守護していた精鋭の一団である。


 アーシャとしては……他の〝獣の民〟の面々がどうであれ……これから、西部制圧に打って出るのだ。

 西部の内情や地理を知っているベリアの知識を含む戦力は、怪しいから、と手放すには惜しい。


 それにアーシャは学舎でのベリアの人となりを、伝聞ながら把握している。


 陛下の命令であればともかく、元・婚約者である西の大公の息子、ウルギーに操を立てて潜入工作、などという真似はしない人物だ。

 この場に訪れた経緯を聞けば、尚更だった。


「まさか……イオが皇帝陛下の名を騙っていたなど……」

「まぁ、良くあること、とは言えませんわね」


 部屋の中でしょぼくれるベリアを、アーシャは一応慰めた。

 

 陛下の御名を騙ったことがバレれば死罪というのは貴族の常識であるし、それでなくとも名前だけでも陛下を利用するなど良い感情が湧くはずもない。


 が、アーシャにはイオが嘘をついている、と言い切れないだけの理由もあった。


「『皇帝陛下の(めい)により、陰ながらリボルヴァ公爵令嬢の元へ赴くまでの間、見張りをしておりました』……でしたかしら?」

「はい」


 ーーーでしたら、嘘ではない可能性が高いですわね。


 真実を言わないことで虚偽とする、という手法はよくあるが、『アーシャを発見する為に、ベリアの見張りをしていた』のなら筋が通る。


 それをベリアが、『ベリアが、きちんとアーシャの元へ行くかどうかを見張っている』と勘違いしただけの可能性が高い。

 イオがわざと勘違いさせた、という話でもあるのだが。


 そうなると、普通は話に信憑性を持たせる為に、わざわざ陛下の命令と口にしたのだろう、と普通は考える……というところまで含めて〝嘘〟という可能性が高い。


 イオが、ベリアに気配を悟られた時点で、彼女が婚約破棄されていることを知っていた可能性は、限りなく低い。


 なら普通は、イオの立場なら『西の大公の命により』と口にしてもおかしくはないだろう。

 アーシャの知らない内部事情で、息子のウルギーとその婚約者であるベリアの不仲が公然の事実だったとしても、ドーリエン伯爵家は一応、西の大公の傘下なのである。


 ーーー陛下がナバダに告げたことも併せると、本当に陛下のご下命である可能性が高いですわね。


 『死せば諸共、希望が潰える』というのは。

 ナバダの暗殺を命じて、西部大公領からイオを出す、ということだったのではなだろうか。


 彼女が自死すれば、当然、暗殺を命じることは出来ないのだから。

 

 姉弟同士で殺し合わせる、などという趣向は、西の大公が好みそうな傲慢な方法である。

 

 ーーーそれに、陛下も。


 わざわざ暗殺を命じたということは、イオを自分たちで助け出して見せろ、ということに違いない。

 もう三ヶ月も会っていない陛下の、面白がるような瞳の色と笑みを思い浮かべて、アーシャはちょっと切なくなった。


 ーーーその御目を楽しませて差し上げるくらい、幾らでもやりますのに……目の前で楽しんでいるさまを拝謁することが出来ないだなんて……っ!


 陛下の一挙手一投足全てを我がものとしたいアーシャにとって、そこが一番の問題だった。


 イオは助ければ良いだけである。


 そんなことを考えながら、手ずからベリアにお茶を注いで差し上げると、彼女は生真面目に頭を下げてカップを受け取る。


「あ、アーシャ様のお茶をいただけるなど、光栄の極み……!」


 落ち込みながらも感激している器用なベリアに、大げさな、と思ったものの、ナバダのように最近当たり前みたいにアーシャにカップを差し出すよりは気分が良い。


「ナバダ? 貴女はご自身でお入れになっても良くてよ?」

「アンタが料理が苦手なように、お茶を淹れるのは得意じゃなくてね」


 暗に『食事を作らなくても良いの?』と鼻を鳴らして挑発されれば、ぐぅ、と黙るしかないアーシャである。


 ナバダも、手の込んだ料理が作れる、というわけではないのだけれど、アーシャの料理の腕前はそれこそ壊滅的である。

 何せ生まれてこの方、包丁すら握ったこともない。


 一度、見よう見まねで野草を煮たスープを作ったら『二度と作るな』と、試食させたナバダに視線で射殺されそうになったので、よほど不味かったのだと思われた。


「で、これからどう動くの?」


 先ほどまで思い詰めた顔をしていたくせに、アーシャが反論できないのを見て多少は気分が良くなったのか、ナバダがそんな風に問いかけてきた。


「そうですわね。資金もある程度は得てベリアの私兵団も手に入れたことですし、イオの件を解決すれば、西から何らかのアクションがあると思いますわ。その辺りから本格的に動き始めたいですわね!」

「……イオのことを解決するのは当然みたいに言うのね」

「あら、弱気ですわね。その程度のことを解決できなくて、革命などなし得ませんわ!」


 ナバダは再び鼻を鳴らすと、皮肉な口調で言い返してきた。


「今だけは、アンタのその過剰な自信を見習ってあげるわ」

「過剰ではございません。陛下の横に並び立つなら、当然備えているべき自尊心ですわ! どこかの負け犬と違いますのよ!」


 ホホホ、と口に扇を当ててバチバチと火花を散らしていると。

 

「……学舎の頃から気になっておりましたが、ナバダ様……いえ、罪人ナバダ! 貴様はどうしてアーシャ様にそのような口を……!」


 と、いつものやり取りに対して、今日は口を挟む方が一人。

 その怜悧な美貌には、明らかな怒りが浮かんでいる。


「かつてのライバルとはいえ、貴様はもう罪人! 優雅にして高潔たる公爵令嬢、凛とした皆の憧れであるアーシャ・リボルヴァ様にそのような無礼な態度を取るべきではない!」


 言ってることはカッコいいけれど、どこかうっとりとした崇拝するかの如き視線を向けられて、アーシャは首を傾げる。


 ーーーどちらかと言えば西の勢力の方には、あんな傷顔がなんで陛下のお気に入り、と陰口を叩かれていたような気がしますけれど。


 ベリアはその派閥ではなかったのだろうか。

 すると、ナバダが小馬鹿にしたようにヒラヒラと手を振る。


「口の利き方? ここは『魔性の平原』で肩書きなんて何の意味もないの。立場は対等。アンタも頭も剣もナマクラなんだから、少し大人しくしときなさい。寝首を掻かれたくなければね」

「っ……それは、騎士に対する侮辱か! この薄汚い暗殺者が!」

「あらごめんなさい。正面から叩き潰されたら『騎士のプライド』とやらが傷つくかもと思って、寝首にしておいてあげたんだけどね」


 顔を真っ赤にするベリアに、余裕極まるナバダ。

 煽りスキルだけは、何が起こっても絶好調なようだ。


「そのくらいにしておきなさいな。内輪揉めで潰れるなんて情けなくて陛下に顔向け出来ませんもの」


 アーシャとナバダもそうだけれど、ベリアともあんまり相性が良くなさそうだ。

 別にやることさえやってくれれば構わないのだけれど。


 ーーー何だか、一気に(かしま)しくなりそうですわねぇ。


 と、アーシャは自分のことを棚に上げてそう思った。

 

ベリア、アーシャ崇拝派のようです。


きな臭くはなっても暗くはならないアーシャちゃん、私も推せるわ! って人は、ブックマークやいいね、↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等、どうぞよろしくお願い致しますー!

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― 新着の感想 ―
[一言] お前ら実は仲良しやろ?(笑)
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