【それ】
【それ】の存在は残虐な災害。
【それ】の姿は虐殺の天使。
【それ】の思考は殺戮者。
【それ】はどこに現れるか分からない…
――――――――――
【それ】は、突然現れた…
「ん?なんだ、あの子」
とある村の畑仕事をしている少年が、【それ】の姿を捉えた。
「どうした…なんだ、安物みたいな皮装備を着けてるし、それにアーマーとブーツしか防具つけてないじゃねぇか…ただの駆け出し冒険者だろ」
少年は隣りにいる仲間にも聞いたが、皆口を揃えて「駆け出しの冒険者」と言うが、少年は自身が感じた違和感に首を傾げる。
【それ】の姿は所々跳ねている黒髪ロングに、淡いライトブルーの瞳と薄い隈をつけた可愛らしい少女だった。
その違和感とは、少年からすればとても魅力的な少女なのだが、誰一人としてそのように評価する者も、そして彼女をあまり見ようとしない事が1番不思議だった。
そして、少年の視線に気付いた【それ】はすれ違いざまに、口角を少し上げて笑顔を見せるが、それも一瞬で足早に宿の中に入って行った。
…この時、既にこの村は【それ】によって虐殺が行われるのが確定していることを、まだ誰も知らない。