コント「アリバイ」
舞台…警察の取調室
配役…A=刑事 B=容疑者
取調室で容疑者と刑事が机を挟んで向かい合っている。舞台下手側に容疑者が座り、舞台上手側に刑事が立っている。
B「刑事さん信じてください。僕は無実です!」
A「いや、お前が振り込め詐欺をした証拠があるんだ。お前がやったんだろ!」
B「勘弁してくださいよ刑事さん。僕みたいな公務員が、そんな大それたことできるわけないですよ。それに、僕にはアリバイだってあるんです」
A「じゃあ3月21日の21時、どこで何をしていた?」
B「その日は銀座の寿司屋で、特上の握りを食べてました。大将が顔なじみだから、証言してくれるはずです」
A「じゃあ3月22日の23時は?」
B「その日は歌舞伎町の高級キャバクラで豪遊してました。朝まで遊んだナンバーワンキャバ嬢が証言してくれるはずです」
A「アリバイがリッチすぎる!なんだそのうらやましいアリバイは!?」
B「いや、たまたまですよ。たまたまその二日は散財しただけで…」
A「ウソつけ!寿司屋の大将と顔なじみだって言っただろ!何で公務員風情がそんな金の使い方できるんだよ!?」
B「そこは別にいいじゃないですか。とにかく、このアリバイが成立すれば釈放してくれるんですよね?」
A「いや、まだだ。3月23日の19時、どこで何をしていた?」
B「その日は一日中自宅にいました」
A「それじゃアリバイは成立しないな」
B「そんなことありません。タワマン最上階の防犯カメラを見てもらえば、僕が一日部屋を出ていないことが分かるはずです」
A「お前タワマンの最上階住んでんのか!?公務員がそんなとこ住んでんじゃねぇ!」
B「公務員公務員って、刑事さんも同じ公務員じゃないですか?」
A「同じ公務員だから分かるんだよ!こんな金の使い方できっこねぇって!お前、何かしらやってるだろ!」
B「何かしらってそんなあいまいな…容疑は振り込め詐欺ですよね?」
A「こうなると振り込め詐欺だけかどうかも怪しいもんだ。他にも何かやってんじゃないか?犯罪のハシゴでもしてるんじゃないか?」
B「ハシゴだなんてそんな、高級クラブみたいに言わないでくださいよ」
A「居酒屋みたいに言ったんだよ!お前金銭感覚狂いすぎなんだよ」
B「なんでそんなに怒るんですか?僕、悪いことしてないのに」
A「じゃあそんな大金どうやって手に入れたんだ?言ってみろ」
B「宝くじで7億当たったんですよ」
A「宝くじ?そんなもん、そうそう当たるもんじゃないだろ?」
B「それがそうでもないんですよ。宝くじを二組全部買い占めると、当たる確率が1%まで上がるんです」
A「二組買い占める?それいくらかかるんだ?」
B「6000万です」
A「すでに金銭感覚狂ってんじゃねえか!」
B「だって1%で7億当たるんですよ?試したくなりません?」
A「すでに億持ってる奴の発想じゃねえか!その金はどこから来たんだよ!?」
B「金持ちの親戚の遺産を相続したんです」
A「金持ちの親戚?」
B「はい。あの手この手で荒稼ぎしてた嫌な奴でしたけど、ある日ぽっくり逝っちゃって。どういうわけか遺産が全部僕のところに転がりこんできたんです」
A「お前が!やったんだろぉお!!」
B「何ですか!?何でさっきよりデカい声出すんですか?」
A「状況的に、お前真っ黒じゃねえかよ!」
B「やだなぁ。人聞きの悪い言い方しないでくださいよ。あれはもう…警察に事故として処理されてるんですから…」
A「やってる奴の言い方じゃねえか!」
B「(真顔で刑事を見つめる)もう今さら…どうすることもできませんよ?」
A「とんでもねぇモンスター捕まえちまった!こいつ何とかしないと…(電話の音)ちょっと待て。(電話に出る)はい、もしもし。え?真犯人が捕まった?(電話を切る)…そういうわけだ。帰っていいぞ」
B「あっそうっすか」
A「なんだ、ずいぶん軽いな」
B「まぁ、もう終わる頃だろうなーと思ってたんで。リムジンで迎えに来させてるんで帰りますわ。おつかれさ~ん」
A「お前いつか必ず逮捕してやる!」