はじめての御使い(ぼうけん) 2
ようやく起き上がった俺は、ぴょんぴょんと飛んでいる。お腹側に引っ込んだあれを下に落とすためだ。手でおろせばいいと思っている奴がいたら、それはやめとけ、ガンガンに痛くなっているあれを触ると、死ぬほどの激痛が襲ってくる。これは、男にしかわからない痛みだ。
昨今、男女差別だという人がいるかもしれないが、これは男にしかわからない。生理現象なのだ。
「そろそろ落ち着いたか?」
「はい」
「いいかレイフ、物理的なトラップの時には、こうやるんだ。『グラビティムテイション』」
すると地面、壁、天井が軽くゆがんだ。その時だった。
カチリ
ガーン!!
大きな金属製のたらいが落ちてきたのだった。
「ハンソン。あれは?」
「ははは…このダンジョンは人工物のようだ。作者はコメディーが好きらしい」
「人工ダンジョンってことは?魔物はいないってこと?」
「さぁ、それはどうだか?魔物を配置している場合もあるし、ダンジョンに勝手に入り込んでいる魔物がいるかもしれんぞ」
「でも、さっきのトラップに引っかかるのでは?」
「そんな間抜けな魔物と言ったらゴブリンぐらいだろう」
「そうなんだ?ところでトラップには他にはどんなのがあるの?」
「あとは、光感知式、振動感知式、熱感知式、変わったものとして匂い感知がある」
「匂いですか?」
「ま…匂い感知式は俺も見たことがない。それはさておき、ここからは光を使うのも危ないな。まずは『猫目』を使うぞ。松明を消せ」
言われた通り松明を消すとあたりは真っ暗になる。ハンソンさんの声がした。
『キャッツアイ』
しかし、俺には何の変化もない。暗闇の中のままだ。すると
「レイフ、お前も『キャッツアイ』を使え」
言われた通り呪文を唱えた。
『キャッツアイ』
一瞬で暗闇だった世界は明るくはないのだが、夜に外を歩いているくらいの明るさで見えるようになった。