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わたしの出番はいつ来るのッ!?  作者: ロック山口
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2、MRC入部編③

 「行ってきまーす!」

 結局、わたしが家を出れたのは9時半過ぎだった。もう入学式には間に合わないんだし、せっかく妹が作ってくれた朝食を抜くのは忍びない。そう思って、全部食べてから家を出ようとしたら、こんな時間になってしまった。まあ最悪、10時半から始まる適性試験にさえ遅刻しなければ大丈夫だろう。


 「それじゃあ胡桃、行ってくるね」

 ちょっと背伸びをして、ぐしぐしと胡桃の頭を撫でる。昔はわたしの方が大きかったから、なでなでがスムーズにできたんだけどなあ。最近は背が追い抜かれちゃったもんだから少しやり辛い。


 「や、やめてよお姉ちゃん!」


 胡桃が顔をほんのり赤らめてそっぽを向く。ふふ、可愛いやつめ。


 「自分より背の低い人になでなでされるのってすごい屈辱なんだから!」


 1ミリも可愛くない。


 「す、好きで小さくなったわけじゃないわアホ!お前の背も縮めてやろうか!」

 思いっきり背伸びをし、胡桃の頭をがばっと掴んでぐいぐい押す。おらっ!あんたも小学生と間違えられる苦しみを味わえ!


 「いやあ!頭を抑えつけるなあ!骨が縮む!脳細胞が死ぬ!お姉ちゃんみたいにアホになったらどうしてくれるの!」


 「かくあれかしよ!足し算と掛け算の区別がつかないようにしてやるっ!」


 「そ、それはもう生きていくのに支障があるレベルだよっ!」


 てやっ、と胡桃がわたしの手を払いのけ、すかさず1歩後ろに下がる。むむ。さすが我が妹。対姉防衛戦はこなれたものである。


 「そんなことよりお姉ちゃん!今日は待ちに待った適性試験でしょ!急いだ方がいいんじゃないの!?柊学園って、適性試験に出れなかったら、3ヶ月後の適性更新日まで魔法使えなくなっちゃうんでしょ!」


 「え.....そうなの?そんなの初めて聞いたよ?」


 「........お姉ちゃん....」


 な、なによその、『自分の通う学園のことも調べてないの?』とでも言いたげな目は(調べてないけど)!ち、違うもん!ちょっと難しい漢字が並ぶと眠くなっちゃうだけなんだもん!

 というか、どちらにせよ適性試験は絶対行ってたっつーの!ただでさえこれまで15年間、ずーっと魔法使うのを我慢してきたんだから!もう我慢できるわけないでしょうが!これ以上わたしの才能を隠し続けるのは柊学園の、いや、ひいては世界の損失よ!

 自分の体がふつふつと熱くなるのを感じ、思わず、ぐっとこぶしを握りしめる。


 「お姉ちゃん」


 「ん?」

 また胡桃が神妙な顔をしている。まだなにか心配事があるのだろうか。


 「あのね、お姉ちゃん。あたしはもう、お姉ちゃんがバカなのは知ってるから」


 いきなり罵倒された。


 「お姉ちゃんがグズなのも世界で一番理解してるつもり」


 ムチからのムチ。アメが一切ない。一体わたしが胡桃になにをしたというのだろう。


 「だからさ、お姉ちゃんがどんな人間だったとしても、今更あたしは幻滅したりしないからね」


 「う、うん」

 どういうことだろう?イマイチ話が見えない。わたし、別に胡桃に隠すようなヤバいことはしてないはずだけど....


「具体的にはさ、お姉ちゃんがたとえ魔法適性30だったとしても、胡桃はお姉ちゃんを家族として笑って迎え入れるからね」


 「わたし信用されてなさすぎじゃない!?」

 魔法適性30って!魔法適性は偏差値で出るんだから、30って言ったら一般人のはるか下じゃん!もうほぼ魔法とか関係ない世界じゃん!あんたはわたしをなんだと思ってんの!そしてなにその聖母のような微笑は!


 これは1度しっかりと試験で結果を出し、妹を見返すしかあるまい。わたしはブレザーの制服を翻し、妹に向き直った。おお、このブレザー、今日初めて袖を通したから、まだ全体がパリッとしてるな。


 「あのね胡桃。自慢じゃないけど、わたしは時々自分の体の中を魔力が巡ってるのを感じるのよ。それはきっと、溢れ出す魔力が出口を探して循環しているんだと思うの。わかる?これはつまりね、わたしの中にはすでに有り余るほどの魔力が存在しているに違いない、ってことなのよ」


 「あたしも体の中を魔力が巡るのはよく感じるけど....」


 聞かなかったことにする。


 「........いいわ。論より証拠よ。胡桃、今日のお土産はゴールドの検査証明書と、MRCのパスカードだから」


 「わかった。もし帰ってきたとき両方揃ってなかったら、ステーキの話は無しだからね」


 「ぐっ.....!」

 痛いところを突いてくる.....だけどわたしも才能溢れる女魔術師(予定)!これくらいのリスク、背負わないでどうする!


 「いいよ、でもちゃんとステーキ買っておいてね。どうせ結末の見える勝負なんだし」


 「そうだね。結末の見える勝負だもんね。それで、お姉ちゃんは豆腐とこんにゃく、どっちが食べたいんだっけ?」


 おかしい。会話が成り立っていない気がする。


 「もう、ここで話しても拉致があかないよ!決着は放課後につけよう、胡桃。わたしはそろそろ学校行くからね。あんたもそろそろ準備しないとやばいんじゃないの?」


 「あー、そうだね、ぼちぼちあたしも準備しようかな......」


 わたしの言葉を聞いた胡桃が思案顔になる。


 「オッケー。じゃあ、先に出とくね」

 わたしは玄関を飛び出した。どうせ家にいたってやることないんだし、ちょっと早めに教室に入って、適性試験の準備でもしておこうっと。


 「.....残念会の」


 胡桃の最後のセリフは聞かなかったことにした。


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