③新郎上司
新郎上司 男性 五十三歳
本当ですか、新婦が消えたっていうのは。
そうですか、彼も気の毒に。一体なにがあったのか。
いや、何も知らないですよ。今日は挨拶させていただく関係で、一度会食しましたが、その時は感じのいい女性だな、と思ったくらいで。
いや、いくらなんでも、見ず知らずの二人の挨拶ってわけにもいかないでしょう。挨拶を頼まれることもままありましてね。いつも事前に会う機会を作ってもらっているんですよ。
しかし、参りましたね。こんなことなら、接待ゴルフの方に行っておけばよかったな。
彼もショックでしょうが、どうするのかな。新婚旅行もあって、一週間の休みをとっているそうだが、切り上げてもらえるのかな。こっちも忙しくてね。
いや、もちろん、まだ破談と決まったわけじゃないでしょうがね。
しかし、あなた方も大変ですな。仕事とはいえ、こんな取り調べまがいのことまで。
いや、そうですね、話を聞いているだけですよね、もちろん。
しかし、どうなっているのかな。新婦も新婦でしょう。なにも式の当日に問題を起こさなくったって。前もって話し合うことだって、いくらでもできたでしょう。ほら、泣いている女性がいますが、新婦の姉妹ですかね。泣いている暇があったら、探しに行けばいいのに。
え、新婦の友人ですか。それはそれは。