何がしたいんだあんた
一度勝ったぐらいで、もう大丈夫だと浮かれているらしい王族、吐き気がする。
何やらどんちゃん騒ぎのようなことをやらかしている。
私はそれを避けて、庭先にいた。
結局これは最後の勝者になるまで終わらないのだ。そして、最後に勝者になるのはもう決まっている。
テロリストの人のところだ。
テロリスト対自衛隊、テロリストの前では自衛隊はただの雑魚だった。
ヒーローと平の戦闘員が戦うようなもんだ。
そして一般市民の私がどうなるかなんて、決まったようなもん。
「機嫌が悪そうですねえ」
背後から聞こえてきた声に思わず振り向く。
「まあ、この状況は不快ですけどねえ」
すらりとした長身の男。
癖のない黒髪が額にかかっている。
ハンサムなんだけど、どこか胡散臭いその男は私を見るとにっこりと笑った。
テロリスト。彼はいつの間にかここに来ていた。
「嘘、なんで」
闇討ち、闇討ちですか。
ドン引きして私は慌てて逃げようとする。
「逃げる必要はありませんよ、危害を加えることは考えていませんから」
彼はにっこりと笑う。
「実際、腹が立ちませんか?」
軽く腕を組んで呟くように語り始める。
「どうして私があんな連中にただ働きをさせられなきゃならないんです?」
それは私も同感です。
「それにですよ、私が長年培ってきた技術を安く見積もられるのは我慢できませんね、私はあんな連中のためにキャリアを積んできたわけじゃない」
長年の鍛錬を軽く扱われるのは腹立たしい、その気持ちはわかります、でもあなた犯罪者ですよね。
怖くて言えないけど、心の奥でだけ突っ込んでおく。
「いいですか、この私がただ働きですよ」
最低賃金はおいくらですか。
「彼らは全く理解していない、どれほどの時間をかけてこの技術を磨いてきたか、どれほどの犠牲を払ったか」
ごめんなさい、知りたくもないです。
「それはいいとして、どうして我々の立場がこんなに中途半端なのかわかりますか?」
中途半端?
「逆らう行動をとることは許されない、そのくせ、心の奥底では不平不満をため込んでいる。中途半端でしょう」
確か、以前訊いた話ではまともな反応すらできなかった。ただ魔力を使うだけの存在になってしまったという怖い話を聞いたような聞かなかったような。
「何が言いたいんですか」
「ちょっとした推理はあるんですけどね、古代殷王朝って知ってます?」
唐突に話は飛んだ。なんで歴史の事業になるんだ。
「殷王朝は、漢字を産んだ文明です、紀元前千年ほど、我々の生きた時代から三千年程度離れた時代ですね」
まあ、それくらいは知ってる。
「封神演義だっけ?」
確か漫画化されたよなあ」
「それは後世のデフォルメですよ」
「うん、知ってる」
「まあ、いいでしょう、知ってるんですね」
なんでこんな時に世界史の話をしだしたんだこの人。




