おつかい
神壮介は、師である平八郎から【おつかい】を頼まれる。それは、壮介にとって初めてのおつかいだった。
平八郎の言い付けで始まったおつかい。壮介にどんな出逢いが待っているのだろうか?
壮介はまず、一番大きな建築グループに近づいた。数撃ちゃって事だ。
そこは、一番多くいる九十九神相手に建てているグループだった。皆忙しそうだ。
「こりゃ参った」
壮介は戸惑った。しかし、数撃ちゃ当たるもので、建築材の裏でタバコをふかしてサボっている奴等を見付けた。
「……ったくよ。俺は設計志望だってのによ」
「お前なんかまだいいだろ?俺は九十九神だぜ?でも、建築材に使われる檜の大木【大檜】様だぜ?」
なんと、九十九神がサボっていた。
(こいつらはどうかな?九十九神なら及第点だろう?)
と、壮介は大檜達に目をつけた。悪くは無いだろう。なぜなら、平八郎の目的に邪神を改心させる事がある。九十九神がサボっているのは、最早邪神にほかならない。
「こんにちはー!」
「あ、やべっ!!」
「見つかった!」
「あ、大丈夫ですよ?俺、ここの組の人じゃないですから」
壮介はすかさずフォロー。
「な、何でよそのヤツがいるんだ!?」
「……。率直に言います。実は、引き抜きに来ました」
「引き抜きぃ?」
状況が理解できない大檜達。簡単に経緯を説明する壮介。
「つまり、俺の師のとこで働きませんか?」
「……」
考え込む大檜達。
「お、俺は、設計がしてぇ!!」
「あ、おま、ズルい」
「設計、大歓迎ですよ。」
「マジで!?」
どうやら一人は落ちそうだ。
「そちらはどうします?」
「ふんっ!!」
大檜は機嫌を損ねた。そして、仕事に戻った。取敢えず、設計志望を平八郎に連れていく事にした壮介。
「……成程な、設計士か、悪くない。だが、その檜の九十九神がサボっているのなら、邪神へと歩を進めている。神、何故説得しなかった?」
「だって、俺なんかが九十九神様を説得なんて、おこがましいのではないですか?」
壮介は壮介なりに、考えてはいたみたいだ。
「邪神になる前になんとかしろ。それが次のおつかいだ」
「そう言われても……」
「自信ないか?」
図星だった。壮介には学が余りない。幼い頃から平八郎の元でガテン系の仕事をしていた。
だが、平八郎から言われたからやるしかない。壮介は腹を括った。
「やります!!」
「よし、行ってこい!!」
再び大檜に会いに行った。
「あ、またサボってますね?」
「こないだのガキか。何の用だ?」
「大檜様が活躍できる場所、欲しくないですか?」
少し沈黙。
「俺はなぁ、夢があるんだ……」
「夢ですか?」
「かつて俺は、東北一の大木だった。皆に大切にされ、沢山の年月をいろんな人と過ごした。夢はそんな人達に恩返ししたいんだ」
「じゃ、東北行きませんか?」
「何?」
「お供します。東北へ行って好きな様にして下さい」
大檜は考えた。自分が居なくなったらこの組はどうなるか?
「ふっ、俺が居なくなった所でこの組は平気だろうな……」
「じゃあ、行きましょう!!」
「分かった。負けたよ。ちょっと頭に言ってくる」
大檜が組の頭に話をしに行ったが、たった五分で帰ってきた。どうやら相手にしてもらえなかったらしい。
「もうふっ切れた。行こうぜ!!」
「はい」
大檜と共に壮介は出雲を初めて出る。正直、緊張していた。
どうやら、まだ【おつかい】は続きそうだ。
時間は待ってくれない!!
神有月は確実に過ぎていくぞ!!




