Silly talk a Count
「・・・」
一人の青年が、ファーストフード店でコーヒーを飲みながら、物憂げに小説を読んでいる
平日の十時頃で、人も疎らであり各々の過ごし方をしている
青年が手に持っている本は、先ほどからページが進もうとしない
やがて溜息を吐くとコーヒーに手を伸ばす
「お待たせいたしました、冬草様」
「・・・どうもね」
目の前に、突如現れた藍色のシルクハットとスーツを着込んだ白い仮面の男にあいさつを返す
かなり、特徴があるのだがそれは、あくまで身につける物品によるものであり個人の特有のモノではない
従って、安易に真似ができ町中において真似ごとをする人がいたら偽物として区別できない
「今回はあのお使いの人はいないのですね」
「えぇ、私の部屋の物・・もとい者が増えてきたので整理整頓をさせています」
「へぇ・・・そう」
何故モノを言い直したのにモノと言ったのか、それはあの芸舞の説明を受けているなら納得いくのだが、脅すつもりなら誘わないほうがいいだろうにと考える冬草
「・・・って、戯言だよな」
「はい?」
「いいや、失礼しました・・・独語が酷くて」
「あぁ・・・そうですか、して・・・もう一度お呼びしたのは?」
「えぇ・・・参加・・・希望です」
そういって、コーヒーの残りを飲み干す冬草に会釈するスーツの男
Silly talk a Count
「結局戯言じゃないか、便利な力と醜い体を手に入れてか・・・この芸舞を行う奴はさぞ思い悩んでいて、切羽詰まった奴なんだろうな・・・」
そういって、太陽に手をかざしてみる
「悪魔になった所で、お天道さんの下を歩けなくなるってことはないのか・・・」
悪魔になったのに、これでは昔話が笑い話に思えてくる
「って、タワゴトを同じ字のザレゴトと呼ぶぐらいに戯言だな」
「まぁ~た、君君はタワゴトって言ってる」
「・・・」
ゆっくりと振り返る冬草
「ちぃーっす、キミキミ元気?」
「円佳、何度も言うが黄身黄身じゃカロリーが高い人のようだ、俺はどちらかというと不健康だし健康色っぽくない」
「うん、だから何度も返してるけど・・君洋だから君くんでキミキミだよ・・可愛いじゃないか」
そういって、抱きついてくる円佳
世間一帯を考えたそぶりは全く感じられない
「・・・円佳、邪魔!!」
「世間様の冷たい目は、二人で受ければいい・・世間様の罵詈雑言はキミキミが受けて、私は男性オンリーの嫉妬の炎をあえて受け流すよ」
「すっげー迷惑だ!!あと、お前が俺に抱きついてたんじゃゲイのカップルにしか見えない!!」
「ひど!!キミキミ酷いよ私ちゃんと女の子だもん!!」
「178センチあってショートカットで、細身の奴なんか遠目からじゃ男に見えるんだよ!!」
円佳の身長は178センチで男物よりの少しだぼっとした服装である、目は垂れ目だがぱっちりと開いているので男性として可愛い域には入ると思える
元より、女性として出てくる部分があまり出ていないため無いようにも思えてくる
極めつけがショートカットであるが、少しロングの男性にも見えかねない
一方の冬草は、174センチで長袖Tシャツにジーパンといたって普通の格好に大学生特有の手提げカバンを下げている
「うぅぅ・・・私ちゃんと女の子だもん」
「二十歳すぎた奴が子をつけるな!!・・・まったく、そんなに嫌なら体のラインが出るのを着ればいいだろうが」
「んー、やだ・・キミキミがどうしてもっていうなら、着ないでもないよ?」
「は・・・・・冗談だろ、戯言か」
そう言いながらも、頭の中でしてしまった創造を打ち消すのに必死な冬草だった
顔に出ていないかが心配で必死に本で隠すとてくてくと歩き始める冬草
「ちょ!!キミキミ酷いよー」
そう言って追いかける円佳の声を冬草は楽しそうに微笑んでいた口元を本で隠す
「キミキミこれ可愛いよ!!」
「・・・」
二人は、あの盛大な会話の後大学に行ったのだが本日唯一の授業の担当講師が、新型インフルエンザにかかり休講となってしまった
それが分かるや否や、円佳は冬草の腕を捕まえて最寄りのゲームセンターに引き入れていた
現在は、UFOキャッチャーの前で二人いるのだが・・・
「・・・・」
「・・・・・・」
指を指したままじぃっと冬草を見る円佳
それに対し、立ったまま本を広げて見ている冬草
「・・・・・」
「・・・・・・・・」
従業員が不審な目で二人を見る
他の客もいないし、目をつけるとしたらこの二人なのだがその二人が一向に動こうとしない
まさに微動だにしないのだ、そのため時間が止まってないかとアタフタとしていた
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
円佳の目に涙がたまり始めて、指がプルプルと震える
それに対し、ページも動かさず全く動こうとしない冬草
「キミキミぃぃ・・・取ってくださいぃぃ」
「・・・やだ」
「お金出します、和菓子屋本舗のデザート奢ります」
「・・・・・・」
「うぅぅ、お願いぃUFOキャッチャーの母」
「いや、それじゃUFOキャッチャーは子供なのか?それだと甘やかしてる人みたいじゃないか」
パタンと軽い音がして本が閉ざされる
従業員の間に安堵のため息が漏れる
「う~ん、じゃぁUFOキャッチャーの祖母!!」
「うまいこと言ったとか思ってないよな・・・バカ円佳、ほら退けよ」
ちゃりんと小銭をゲーム機に入れてから退く円佳
先ほど円佳が指さしていた人形を睨んでからゆっくりとクレーンを操作する
そして、その後はあっけないほど早く取れていた
「さんきゅー、流石祖父だね」
「・・・UFOキャッチャーを相手に説教したりはしないよ」
そのままゲームセンターを後にする二人
「・・・・・疲れた」
その後本屋と服屋を回って和菓子屋本舗で“至極甘味”というあんみつにありつき
五時に解放された
現在冬草は、自室のベッドに突っ伏している
小・中学校ならこの状態でいると、さも当然のように上がってきて冬草の上にダイブしてきた、高校生に上がって違う学校に進むと驚くほど暗い人格になっていて、度々会うようになって今また同じ大学に通う
「・・・・・私事だが、戯言だ・・・なぁ」
ゆっくりと、机の上に飾られた様々な物体に目を向ける
「・・・・」
幼稚園から現在に至るまで多種多様なモノを誕生日に貰っている
もちろん自分も渡している
机の上には、ゴム人形やビー玉から筆記用具にメモ帳といった消耗品に現在の観葉植物に至っている
「・・・メンドクサイ、あと一週間もしたら誕生日じゃないかあいつ」
後二年で卒業である
高校の闇に飲まれていた円佳は、嘘のように影を潜めたが世間一帯を気にせず振り回すそんな横暴も行うやんちゃさがでてきたことで冬草は溜息を吐く
「ま・・・悪くない戯言さ」
そういってまた、ベッドに突っ伏すると自然と眠くなって意識がまどろんでいった
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「ぬぐぉ!!」
朝早くあった講義が終わり、円佳は図書館に行ったので一人とぼとぼ歩いていると見知らぬ、一瞬で理解した外見でいえば冬草が付き合いたい女性の外見全てに合致する奇妙な女性のタックルを受けた
ゆっくりと、世界が移動する
その刹那、倒れる二人の体の隙間から、冬草の目に相手の顔が映りその顔がはっきりと見えた
「きゃぁ!!」
「っ!!」
一瞬息が詰まる、二人と周囲に微妙な間が広がる
「あぁ・・すみません!!大丈夫ですか?」
「・・・とりあえず、退いて頂きましょうか?」
また、軽く悲鳴を上げつつ飛び退く女性
「・・・」
冬草は、ゆっくりと相手を観察する
黒くて長い髪の毛は毛先に向かってゆっくりとパーマがかかっている
服装は深い茶色と白を中心としたワンピースで靴も合わせている
背丈は、確実に160センチ以下で女性として平均的な豊かな体形の持ち主である
「あのぅ・・・大丈夫ですか」
「はい、大丈夫です・・・あなたも大丈夫そうなので気をつけてでは、失礼します」
「あ・・まっ!!」
「・・・・・何か?」
すっくと立ち上がった、冬草のすそをその女性がつかんでいる
「・・・えっと名前を聞かせてください」
「マンガの読みすぎでは?」
「ぐぅ・・・でも、こうしないと貴方は反応してくれないわけでして」
「・・・・・あ、否定できる要素はあるようでない・・うん、戯言だけどね」
「で、そうなると交際を求めにくくて」
「・・・いきなり交際なんですね・・・まさに戯言」
「何人も、話しかけてもたった一言だけで、反応してもらえず、撃沈されていて」
「・・・認めがたい事実」
「すみません、いささか乱暴なのは認めますが・・・」
「それは、認めざるを得ない事実だね」
泣きそうな顔まで想定していた通りなのでびっくりする冬草
「私は、今日会った名も知らない人をいきなり好きにはなれませんよ」
「だったら、お友達からで結構です・・私の名前は玉城 いつきですよろしくお願いします」
ニコッと笑う彼女に、それでダメですとは言えない冬草だった
その後、五日間放課後になるといつきは、遊びに行こうと誘ってきた
洋服屋、雑貨屋、花屋を転々として小物を買う時もあれば何も買わない時もあった
結構どじなこともあったが、基本的にはしっかりしている
基本はこちら主体なのだが、あまり行きたい所もないといつきが場所を指定する
楽しいと言えば楽しいというレベルだが、口が笑わない
「・・・・・」
円佳は、こちらを見るとひどく怯えた顔となり逃げ帰ってしまう
それが、六日も続いた
流石に、六日目になって体調が悪くなったみたいなので今日はさっさと帰った
昨日雑貨屋で買った、円佳の誕生日用のへんてこな時計はベッドの下に隠していた
「・・・明日か・・・」
ぼうっとしていると、いきなりチャイムの音が鳴り響く
しかたなく階下に降りて玄関を開ける
「あ・・君洋くん、よかった・・・はい差し入れ」
そういって、袋に入ったリンゴを差し出す
「あぁ・・・・・悪いね、上がって・・お茶出すから」
「いいの?ありがとう」
そう言って上がってくるいつきを、二階の自室に案内する
「じゃぁ、待ってて」
「うん・・・ねぇ、その前にあの机の上の物はなに?」
「うん・・・あぁ、誕生日にもらったやつを飾ってるだけだよ・・・」
「そうなんだ・・・」
ドアを開けた状態で、そのまま階下に降りて突然の来客に備えたお茶を用意し音を立てずに自室に戻る
そして、ゆっくりと部屋をのぞくとさも当然の様に観葉植物の鉢を手に持ち
そして、落とす
「っ!!」
「え?」
破片が飛び散る
「・・・・・」
「ご・・ごめんなさい、うっかりしちゃってす――」
「帰れ!!」
冬草は自分でも驚くほどの声に怒りを感じていた
「いや、本当にうっかりしちゃったのよ」
彼女は、おろおろしながら謝罪してくるが、冬草の耳には届いていない
「・・・帰れ」
「せめて後片付けだけでも」
「っ!!帰れって言ったんだ!!」
なぜか、感情が高ぶるのを抑えることができない冬草は、自分自身に驚いていた
怒りなどとうの昔に捨て去ったはずなのに
「・・いや、戯言だ」
「?・・・どうしても、帰らなきゃだめ?」
「そうだ」
「じゃぁ・・私のこと好き」
「・・どちらでもない」
「そう・・よかった、じゃぁ手伝うわ――」
「もとい、もう二度と会いたくないから出てってくれ」
「・・・・そう」
意識が黒塗りになる腹部に違和感が走る
「はっ!!」
「やぁ・・お目覚めだね」
「・・・囲?」
冬草が気づくとあたりは真っ暗になっている
「・・・何が起こったんだ」
「芸舞参加者同士のぶつかり合いで・・死んじゃったんですよ」
「そうか、地獄ですかここが」
「まさか・・・芸舞参加者は、私の玩具とするのですから自殺防止用に世界に死を否定させてますよ当然でしょう?・・まぁ、今のところ自殺者はなく芸舞参加者同士がぶつかって死ぬのを防いだ話だけですがね」
「・・・なるほど納得がいきますね」
ふふっと乾いたように笑う
部屋に飛び散っていた破片は、片付けられてお使いの人が別の何かを片づけている
「?」
「人間のワインです、つきあいませんか?」
上質なガラス製のコップを手渡されて、溜息を吐きながら受け取る
すると、もう片方の手からワインの瓶を握って液体をコップに注ぐ
自身も金色の豪奢なようにも見えるグラスを手にする
「では・・乾杯」
「・・・・・・・」
くいっと煽るように飲む囲
冬草も、続いて飲み干す
そして、冬草は気づいた机の上に飾っていた飾りたちがないことに、気づくと感情が抜けおち脱力する
「あぁ・・そういうことか」
「・・・どうします、あれの処理?」
ユウリがゆっくりと現れて残骸を指さす
「・・・・・どうしようもないんだから捨てて――」
「本心を語ってほしいです」
「ユウリ・・いい子にしてなさい」
ぎゅぅぅっとユウリの頬を左右に引っ張る囲を眺める冬草
「・・・なぁ、悪魔の力で元に戻せます?」
「対価が付きますよ?」
「かまいません、何が必要なんだ?」
「ふむ・・このリンゴなどどうでしょうか?」
「あぁ・・・構わないよ」
会釈してリンゴの入った袋を掴む
「そういえば、あの方は今円佳さんをつれて夜中の学校に向かいました――」
バタンと音が鳴り響きドアがあけ放たれる
「・・・いってらっしゃい、お酒に弱いんだな」
「ふふふ、ご主人が強いだけですよ」
「ふむ、あんなに欲望がわくなら酔ってみたいものだな」
「わたしにぶつけちゃいます?」
「・・・獣姦になるぞ?」
「かまいませんよ?・・ご主人なら」
「・・・・さようか」
そういうと、ワインをラッパ飲みで飲み干す
「このような人間の酒では、酔うこともできませんよ」
「ははは、そうでしょうねご主人・・・でも」
ユウリは一拍置いて彼の隣に座り直す
「欲望が溢れたら・・・その時は私で発散してください」
微笑むユウリに対し囲は、ただ視線を向けるだけだった
「ふふふ・・・・どう、私の悪魔の能力」
いつきは、大学の校舎の壁をよじ登っていた
全七階建ての校舎の壁を蛇が這うように登っていく、ただし彼女は手足を何も動かしていない
彼女の背中から生えた四本の図太い蛇によって上っているのだ
そのうちの一本が、円佳の胴体に巻きつき上へ上へと進んでいく
「いいでしょう?・・貴方が不幸だった時の記憶をいろいろつなげて四倍速でしかもループで見せてあげるなんて」
「いやぁぁぁ、いやぁぁぁ!!」
完璧に円佳は発狂していた、それをうっとりともの優しげな瞳で見つめるいつき
「ふふふ・・・まったく、こんなのっぽのお猿さんをあの人も良く好きになるわね、信じられない」
「あぁぁぁ・・・あぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ」
「さぁ、もう少しよ――」
「どうもね、先ほどぶり」
月明かりに照らされたシルエットは、平平凡凡の姿をしている間違いなく冬草の姿である
「あ・・・れ?」
そう口にするのが早かったか遅かったか、ぐらいで彼女の蛇の一本を掴むとその細い腕で彼女を宙に浮かせる
張り付いていたそれらが、引きはがされ宙を舞う
着地の際に円佳を下にしようと移動させようとした瞬間にその根元が抉られる
「なぁ!!」
バタンっと地面に落ちる、円佳も弾んでフェンスにぶつかるそれを確認する冬草
「やぁ、いつきさん・・・何をしてるの?」
ガスっと音が鳴る勢いでけり上げる冬草
「ひっどいなぁ・・・俺の好きな特徴全部持ってる人がまさか、こんなサドで嫉妬深い人だなんて幻滅するよ」
蛇が襲いかかってきたのでそれをはたく
「ぐぅ・・・女の子を地面に叩きつけるなんて最低よ!!」
「あぁ、最低最悪とは自分でも思ってますから・・・・戯言ですがね」
「って、あなた・・・も・・・・・」
冬草の左腕は巨大な布袋のようになりあちこちに縫い目がされていて肩からその中指の先に至るまでをチャックが走っている
そして空いた手には、変に膨れた刀が握られている
「あぁ・・そうだよ、俺の悪魔の能力はあり得ないをあり得させるんだ」
「・・・は?そんな」
「そう、とっ拍子もないだろう?人の心は操作できないけど俺がここにたどり着くことはあり得なかったが次元を移動してあり得させた、俺の筋力じゃ持ち上げられないから重力を軽減させてあり得させた、俺の視力じゃ細かな部分を狙って切るなんて無理だから悪魔の能力自体が補強した・・・なんて屁理屈を実現することが可能な便利な能力なんだろうな?」
げひゃひゃひゃひゃっと刀が笑う刀の刃の部分が縦に裂けて笑うのだ
「・・・じゃぁ、貴方も苦しみなさい!!」
そういって、赤い瞳で冬草を見つめるが、なんともならない
「・・・・あれ?」
「あぁ・・・・さっきの会話は聴いてたよ・・・本来なら聞こえない距離もその声の発する近くに耳を移動させてね、正直馬鹿じゃないかなと思ったよ、不幸なんて個人の尺度だし・・俺自身何も気にしなければ問題ないわけで」
「・・・・・・・・私のこと好き?」
「・・・大っ嫌い」
ぼぐぅっと冬草の胴体に穴があく
「そうよ、私が見たのはこれなのよ!!」
「ひぃ・・・いやぁぁ!!」
「黙れ猿!!」
「おい・・・あんな風になるのか?」
ガバッと振り返るとそこに冬草が立っていた
「やぁ・・・・だから言っただろう、あり得ないをあり得るようににするんだって・・・俺自身じゃ絶対に死ぬから俺自身は移動して悪魔の力で作った移し身を置いてた、ゆっくり歩かせて貰ったよ」
「・・・・はぁ・・・?」
「あぁ・・・ご心配なくすぐに終わらせるから、ほらこの刃って見た目悪いだろう?」
そういってあの刀を見せる、横にしているため笑っているように見える
「だからさ、お前の蛇を先に切らせて貰ったよ・・そうこの言葉を理解するより早く」
そういうと、刃が信じられない動きをして蛇より先にその根元を食い散らかした
「あぁぁぁぁぁぁ」
外れた蛇の胴体が飛んでいく
「・・・円佳・・・・これがお前の悪夢か?高校生活をぐしゃぐしゃにした元凶なのか?」
「へ・・・うぅうぅぅぅ」
発狂していたため顔は涙と鼻水と涎と冷や汗にまみれた顔は見れたものではない
そして、頭を抱え込んで目を見開き口で洗い呼吸をしている
あぁ、可哀そうだな・・・俺がその時――
「そのあり得ないはもう戻らない・・まさに戯言だよな」
がばぁっと開かれる左腕のチャックそれを先に覗いたいつきが逃げ出そうと振り返る
「円佳、お前の悪夢を俺は超越してやろう!!」
そう冬草が言った途端、左腕から青白い腕が伸びていつきを飲み込んでいく
あたりに静けさが戻る
悪魔の力をいったん消して静かに近づいていく冬草
「・・・円佳」
「ひぃぃ・・・ひぃぃ・・・・」
ゆっくりと近づいて行ってぺしっとチョップする冬草
「へ・・・っ?」
冬草の特徴は、覚えている激怒すると口調が少しだけ優しいのだが荒くて第一人称が俺になるそして、チョップするのだ
怒りたい相手に本当に優しく、そして不満とか心にある本音を一方的にぶつける
「お前は、なんで言わなかったんだ!!お前が高校でどんな扱いを受けてたか知ってるし聞いてたでも、その犯人とかアルバム見せればいいのになんで隠してた!!あと、俺の隣にその犯人がいたのなら教えろよ!!逃げないでさ!!どうすんだよ、俺の宝物ぐっちゃぐちゃになってしまったんだぞ、最悪じゃないか!!もう〇時回ってお前の誕生日が来たじゃないかまったくあのバカのおかげで最悪な誕生日を自分で作っちまうし、俺の計画をどうするんだよ、誕生日のプランニングしてたのにすべてパーだぞ!!お前は手がかかりすぎる自分で殻に閉じこもるな、ただでさえ手がかかるんだ!!お前は危なっかしすぎるんだよ、昔から!!だから、俺が永遠に助けてやるし支えてやるから・・だから、俺の隣にい・・ろ・・・・よぉぉ・・・・・・・・・・・・あぁぁ」
「・・・・・」
円佳を見る冬草はポケットからハンカチを取り出して円佳の顔を拭う
円佳は、抵抗しない
身体全体に酸素が行っておらず、手が震えている冬草
「・・・・・うん・・・これでいい、悪魔はさっさと帰りますか」
「ねぇ、私のこと支えてくれるの?」
「・・・・・支えて・・・や・・やる・・・・・よ・・・」
「キミキミって昔から本当のこと喋るのは平時じゃ苦手だもんね」
「・・・っ知らん!!」
「キミキミ大好き!!」
飛びつくように抱きついてくる円佳をふり払おうとはせずに、受容した
何も言わずに、ただそれが自分の幸せなのだと理解した冬草だった
そんな、二人を崩れる悪魔の能力の金色の粉が祝福する
「あぁ・・・くっそ、あり得ませんわ」
「えぇ、そうですね・・・いつきさん?」
いつきは、正面玄関に倒れていた、その背後に藍色のスーツが立っている
「君子・・・・・」
「はい、ご契約の通り・・・あなた様には、ここで玩具となっていただきます」
「っ!!」
いつきの腹部に君子の腕がめり込むと腹部が半径2メートル大に薄く広がる
一番上に顔と腕がそのままの大きさであり太ったように見えるが足が伸びているのでそうともいいがたい
そして、少し経つとぽこぽこと数が浮き出始めた
「うぅん・・・秒針と分針と時針でコンマもを入れましょう」
そういって三本の太さが違う針を中心に入れ込む
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
ガリガリっと音をたてて回り始める秒針
「えぇっと秒針は勝手に合わせてくれるからあとは、よいしょっと」
「がぁぁ・・・・あぁぁ」
時針と分針を乱暴に合わせる
そしてポケットから小さな針を取り出して深く入れ込む
「あぁぁぁぁっぁぁ」
すごい勢いで回転するコンマの針がはいりこんだ
「よっし、完成・・ふふふ、我ながらよい仕事です、このままここに置いて帰りたいぐらいに」
「い・・・いやぁ・・・いやぁ・・・なんでぇ?」
「あなた、ご契約の人数分告白されたじゃないですか?・・最後の一人には執着されていたようで二回も告白されるなんて、熱心ですねぇ」
「あ・・・あぁ、うぅあれは一人じゃない」
「いいえ、二人です・・・一度冬草様はお亡くなりになられているのですから」
「うぅぅ・・・」
「さぁ・・・・どうしましょう?ご友人にプレゼントも悪くないですね・・最近モノが増えて困ってますし」
そういって、黄色いボールをジャグリングし始める
時折笑い声やむせび泣く声が聞こえる
そしてそれを一個ずつ懐になおしていく
「とりあえず、先に送っていよう・・・なぁに私の部屋は開けっ放しだから少々気の荒い来客から、はてはサディズムの塊までなかなか飽きない部屋ですよ」
「いやだぁぁぁ」
そういって、消えるいつきから目を離して屋上辺りを指差すと指を鳴らす
「・・・・もう、悪魔の能力も死なない制限もない忘れるなよ・・・ユウリ終わったかい?」
「はい、ご主人さま・・元どおりです」
「そうか・・・・」
そういって、リンゴを取り出す
「このリンゴ、悪意に満ち満ちてていいなぁ・・・」
煙を出しながら袋ごと灰になっていくリンゴ
「ユウリ、最近は玩具になる人間も多いな・・・・どうだ私の作成風景」
「ん・・・楽しいよ?」
「そういえば・・・ユウリ貴方は、カバンだったなあんな風に作り直そうかな?」
「・・・・はい」
そういって両手を広げてうっとりとした表情で藍色のスーツの男を見る
「・・・・っ!!」
懐から素早い動作で垂直にピコピコハンマーを取り出すとユウリの頭を叩く
「いったー、地味です・・地味に痛いですご主人さま!!」
「やかましい、何をうっとりとしてこっちに身を捧げているのだ、気色悪い」
そういって、ピコピコハンマーを懐になおす囲こと君子
「じゃぁ・・・これなら、いいんですか?・・・いやぁ」
そういって涙目で怖がる表情をわざとらしくするユウリ
だが、ユウリこと下僕の心情を完璧に網羅するスーツの男には、その心は分かっていた
ので、また、懐に手を突っ込むや素早い動作で、その顔を横なぎにはりせんで叩く
「みぎゃぁぁぁ・・もう、使い古された古い小道具はとても痛いです」
「知らぬ・・・帰るぞ!!」
うぅぅっと唸るユウリに背を向ける
あなたを愛してるから、どんなことでも耐えられる
駄々漏れの感情は、まだこんな厳しい仕打ちをしようとも愛してるというユウリが信じられないと男は思う
「何故だろうな・・・」
男自身にも、胸に違和感を抱いたぐしゃぐしゃのどろどろにしてこれでも愛せるのかと問うてみたかった、しかしそのビジョンが出た瞬間息苦しくなってしまっていた囲こと君子はわが目を疑い始めての感情に困惑した
そんな、感情に指を払いつつ忘れ、囲こと君子は指を鳴らし二人の姿を消していくのだった