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悪魔乃恋愛芸舞  作者: 青紫 時雨
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6/15

Empty Theory

「(あぁ…いやだわ、早く自由に体を動かしたい)」

真っ暗で静かな部屋、少女と母が寝ている一つの大きなベッドと小さなベッドの上で寝ている少女

寝息の音が空間を占める

「(私は可愛いらしい、だから外見はいいんだから・・・あの夫婦みたいな幸せが欲しいな)」

「やぁ・・・・お嬢さん、はじめまして」

闇が形をなしたかのように、それは現われた

「ユウリの言ったとおり、視点を変えてみるとこのようなモノも恋をするのですね」

「(このような物とは、何よ!!私は声の発達が遅れてるだけよ・・・体もそのうち周りの人たちみたいに自由に動くんですから!!)」

「・・・・・失礼いたしました、私は偽名ですが黒塗と言います」

「(初めて会う方にいきなり偽名なんて、失礼だと思わなくて?)」

「申し訳ございませんが、これには諸事情があるのですよ」

「(ふん・・・まぁ、いいわ・・・で何の用?)」

「手厳しいですね、生意気なほどに・・・」

そういうと、背後にもう一人いるらしく何かを受け取る黒塗

「悪魔の恋愛芸舞と言います、お望みの能力を授けますが、その能力の本当の姿はかなり醜い、その醜い姿を見せても愛する事が出来るものに出合えれば貴方の勝ちで幸福の結晶となるでしょう・・・だが、負ければ私のイミテーション玩具としてその身を使わせてもらう」

悪魔の囁きは、とても甘く彼女はこの融通の利かない体を捨てることを決心した


Empty Theory


「・・・・・・・・」

大学にまっすぐ連なる道

周囲の人々は、通り過ぎようとする陰に反応し振り返る

女性も男性も一瞬だけ見とれる

「・・・・・・ふふ・・・」

それに気分を良くした女性は、含み笑いをする

陶磁器のように美しい肌に艶やかで長い黒い髪、豊満な体にすらっと伸びた体

外見の良いところだけを取ってつけたような人間である

女性からは、羨望の眼差しを男性からは、興味の眼差しを受ける

「・・・・・・」

彼女は、思う

あんな、数に設定しなければよかったと


「はは、いや君から声をかけられるなんて思ってもなかったよ・・・」

「そう・・・私、大学に入ってから貴方みたいなまじめな人、本気で探していたのよ?」

「はは・・・・それは、嬉しいな」

華やかなチェーンの喫茶店

静かな空間に響く男女の声

「片桐さん・・・いいのかい?その僕なんかで」

「えぇ・・・かまわないわ、私貴方みたいな誠実な人を夫として迎えたいんですもの」

「・・・へぇ」

男の顔が少しほうける

「でも、聞かせてね・・・・」

にこっという頬笑み

店員を含めた人たちが恐怖に息をのむ


「離れてください・・・離れてください」

とあるチェーン店の喫茶店が黄色と黒のテープで封鎖されている

「なんでしょうね?」

「さぁ・・・何だろうな?」

警察官と刑事がそんな会話を行う

壁一面に塗りたくられた皮膚と血肉、床に転ぶ潰された顔を持った被害者たち

「おぅえ!!」

「誰か、袋!!・・・現場を汚さすな!!」

若い鑑識が、同僚に渡された袋に吐しゃ物を吐く

「・・・生き残りは?」

「ゼロです・・ビデオカメラには、自殺の風景しか」

「・・・本当に盛大な自殺だな・・・他殺じゃないなら集団自殺だ、さっさと切り上げよう」

「・・・しかし、本当に可能なんですか?」

「何がだ?」

「こんな、自殺の仕方が人―――あれ?いえなんでもないです・・可能でしたね、この自殺」

「あぁ?」

男は、言おうとした言葉を失った

不可思議な感覚が消え去っていく、そこの誰もが自殺を疑わずただ、その惨状の有様に苦しむばかりであった


「あぁ・・なんで、何でよ!!」

整った顔を歪ませながら、女性は叫んでいた

あの喫茶店からかなり離れた場所まで走り日も落ちて辺りは真っ暗になっていた

彼女は、用水路と並行する道路にて、息を荒げていた

「なぜ、この美貌をもってしても認められないなんて信じられない!!」

叫ぶと激しい息遣いをゆっくりと整えて

幼児の使うような小さな玩具の手鏡を取り出し髪の毛を整える

「・・・・・よし、気を取り直しましょう」

「よう、ねぇちゃん・・・一人?」

「なんだったらよう・・俺らとあそばねぇ?」

「大人の遊びを・・・さ」

下卑な言葉をかける不良たちににこりとほほ笑む

その美しい頬笑みに一瞬息をするのを忘れる不良たち

「そうね・・・私、強い人が好きなの・・・一人だったらいいかな?」

「・・・・・・」

その言葉を聞いて麻薬の利いた頭は、単純な答えを導き出す

三人は、互いに殴り合いを始めたのである

一瞬の美貌にあてられ、その美貌の持ち主を我が物にしようと同じ答えを出した

その有様を見ながら女性は、不敵に笑っていた

「・・・・・」

彼女は、単純な人間の方が何も考えずに迎えるのではと考えたのである

だからこそ、不良たちを悪魔の能力で惑わせたのである

「・・・・・・」

かくして三時間休憩なしで殴りあっていた

人通りは少なく、止める者もいない

力尽きて足をふらつかせた一人に対し二人が追い打ちをかけて用水路に落とす

ばしゃんと大きな音を立てて落ちる男

深くて大きな用水路に飛沫があがるが上には届かない

「あぁ・・いい加減くたばれ!!」

「ぶふぅ・・・!!」

指輪をジャラジャラとつけた腕がもう一人の男の顔面にめり込み倒れる

少しの間立っていたが、ゆっくりと崩れ落ちていく暗闇で顔は確認できないが、ひどく歪んだであろう

「ひゃ・・・ははっはははははははは!!俺が勝った、これであんたは俺の――」

男の頬に手を当ててゆっくりと接吻を行う

男の顔が呆けていく

女は、さらなる予防線をこれで確信した

「ふふ・・・最高よ貴方」

「あ・・・ひゃ・・・・ふふ」

男の眼は虚ろになり、あさっての方向に向いていた

「ふふ・・気持ちよかった?私の接吻は、貴方が使ってきた安物よりも気持ちいいはずよ」

「ひゃはは・・最高」

「そう・・よかった、じゃぁ、それなら答えは決まってるわよね?」

彼女が答えを望む


ビルの屋上から階下を見下ろす仮面の男は、その赤い瞳から細く長く赤を伸ばしていく

その隣にユウリが座って怖がっている

「・・・・質問に答えろ、下僕」

「は・・はい・・なんでしょう?」

びくびくとユウリが反応する

ユウリは、初めて荒々しい口調の黒塗の言葉を聞いた

「私は、人間では私の勉強にならないからと勉強を行っていないものをした、何か間違いがあったか?」

「いいえ・・・私もそれに賛同しました・・・でも、あんな手段を使うなんて私も思っていませんでした」

「あれも、愛だというのか!!」

「いいえ・・違います」

「・・・・ふん、貴様がそういうか・・・あぁ、腹立たしい・・何か方法はないか」

「・・・ここから、能力を無効化できたらいいんですけどね」

「・・・」

その言葉にパチンと指を鳴らす悪魔

手のひらサイズの蚊が現れ

会釈をするように小さく首を垂れると信じられないスピードで現場に向かう

「ユウリ・・・」

「はい・・・」

びくびくと小さくなり肩をふるわせて悪魔を見る

流れる涙が恐怖を現す

「・・・っ!!お前は、こんな姿を見ても・・そんな考えを――」

「はい・・・だ・・だって」

「・・・いや、すまない・・ユウリ」

膝をつきユウリと同じ目線となると指を鳴らし、真っ白なハンカチを取り出す

ユウリの頬を流れる涙をゆっくりと優しく拭いてやる

「答えは、ちゃんと聞かせる・・・お前をあの二つの殺し方のどちらかで殺してやる・・答えを聞かせてやる・・だから泣くな」

ゆっくりと、ほほ笑むユウリ

「はい、ご主人様」

悪魔は思う

彼女の恐怖とは、愛していますを伝えられないままの死なのだと

そんな、くだらないことに恐怖を感じた、殺されることよりも伝えられないことに恐怖を感じたそれ以上の恐怖に答えを聞かずにまで付属して

悪魔の背筋に悪寒が走った

ある一種の恐怖である

「ユウリ・・・あの女を玩具に変えるなら、何がいいかな?私たち悪魔をバカにした罪長く苦しんでもらわなければならない」

「そうですね・・・」

「裸踊り人形?裸体観葉植物?・・・ん~」

「ご主人ダメですよ・・・あれは、赤ん坊にもある裸なんて概念なんて無いのですから」

「む・・そうか、ではなにがいいかな・・・人形は・・・なぁ?」

「・・・・ん?」

ユウリが階下を歩く男性に注目する

「ご主人・・・たばこを吸ったりしますか?」

「タバコ?・・・・残念だが人間界の娯楽には興味が――あぁ・・・友人に面白いものを人間に頼まれたのがいたな」

「そうなんですか?」

「あぁ・・・ユウリは、本当にいい子だ・・・ついてきなさい」

「えへへ~」

そういうと、二人は消えていく


「あぁぁぁぁ・・・・ウソでしょう、あの馬鹿男何の役にも立たないで!!」

結局断られてしまった女性は、また逃げていた

あの、用水路付近は結局血まみれとなり男たちの顔は無くなってしまった

先ほど悪魔から放たれた“蚊”は、血中を流れる薬物をすべて取りだす『薬中毒の望み』と呼ばれている蚊で、実はとある男のなれの果てであった

中世において裏で流行ったタバコにハマり悪魔と契約した男は、様々な未来の薬を魂の代価を払い使っていた

そして、『様々な人間が知っている、最高の薬を俺も使いたい』それを望んだ男が悪魔に頼んだのは、相手から薬物を吸い出す力であった

実際には、悪魔が差し出していたのが未来の薬でありその世界では絶対に手に入らないということを知りもせずに頼んでしまったのである

その結果、男は姿が蚊の化け物となり叶ったわけだが、そこは悪魔との駆け引きで蚊の体にされたとはいえ知性も記憶も全く移転されていなかった

また、薬でボロボロだった魂と命では代価として足りず使い魔とされ現在に至ったのである

男から、薬物を吸い出した時の男は、元から使っていた薬も無くなってしまい苦しみ悶えた

急激に薬の効果を失った身体は、疼いた正常な状態で悪魔を見たのだ、男の答えは決まっている

「黙れ、この化け物!!テメェなんかと付き合え―――」

この瞬間、男は顔を失った

蚊は、他の男からも薬を吸い出していた最中だったため効果を受け、顔を失って悪魔の元に帰って行った

「どうしよう、うそでしょう?・・・あと一人なんて――そうよ、人間だからダメなのよ・・・同じものじゃないと!!」

そういうと、女は走って行く

ある場所にへと


とある、公園のベンチで女は紙袋から荒々しく箱を取り出す

そして、荒々しく中身を取り出す

それは、プラスチック製の青少年の形をした人形だった

「あぁ・・・私の恋人・・・そうよ、発展途上だからって最後に回してごめんなさい」

優しくその人形の髪の毛をといてやる女性

「さぁ・・・答えなさい美しい人よ・・・まだ発展途上でも考えは持ってるはずよ」

ゴバァっと彼女の体に変化が起こる

彼女の美しい顔を中心に髪の毛が広がる

腕からいろいろな方向に前腕が伸びる

膝から多数の足が伸びる

体からいろいろな所にふくらみが現れる

そして、一つの醜いバラを形成していく

「さぁ・・・私を愛してるって思って!!」

その瞬間、人形の顔が無くなる

「・・・え?」

周囲を見る、公園で彼女を見ていた人たちの顔が無くなる

「あぁ・・ウソよ・・ウソでしょ・・・そんなぁぁ、なんでぇ?」

「残念だったね、お嬢さん」

冷たく響く生き生きとした声

「黒塗・・・・これは、一体どういうことよ!!」

「黙れ、人形如きが・・・子供の遊び道具が、何を叫んでいる?」

「は・・私が遊び道具?・・・・そんなことない、私はあいつらと一緒の形をしているんですもの!!発達が遅れただけよ!!」

「人間のルールもしらず・・・何を言うか?・・・貴様は負けたのだよ、最後の男の言葉を教えてやろう・・・・特別だ」

「・・・・へ?」

間抜けな声が彼女から出される

「お前のような性格ブスだれが愛するんだ?」

「きゃはははははは」

ユウリの幼く高い笑い声が木霊する

「じゃぁ・・あなたは私を愛せるのぉ!!」

「冗談・・・とっとと、玩具になりはてろ貴様は負けたのだよ、片桐 リエちゃん人形!!」

バチィっと悪魔の仮面が外れる

男の顔は真っ黒で渦を巻いていた

最後の悪足掻きで奪おうとした顔は、その場にはなかった

「きやぁぁぁぁぁぁぁぁ」

彼女の体が細くなっていく、口を空に向かって大きく開き小さくなっていく

そして、おでこの所がへこむ

黒塗がゆっくりとした動作で仮面をつける

「ふふふ・・・私は、本来たばこを吸ったりしないのだがね」

「お香も・・・立てられそうですね、ご主人」

「あぁ、そうだなあの部屋にいい香りを付けてもらおう・・・この灰皿を少し変えよう」

そういうとおでこを伸ばすびりっと音が鳴り細い穴が開く

「           」

悲鳴が出ない、それもそうだろう彼女の中身はないのだから

「えっと、こうしてっと」

少しばかり斜面を作るとお香をひっかける出っ張りを作る

「さすがにこのまま使っては、ゴミ掃除が大変だからな」

「なんですかー、それ?」

懐から黄緑色のボコボコとあぶくを出す気味の悪い液体の入った瓶を取り出す

「友人が格安で譲ってくれたのだよ、ゴミと判断するものを溶かす液体だよ・・・ただし」

それを彼女の口に流し入れる

「ものすごい、溶かす際に激痛を与えるみたいだけどね」

「                        」

すごい勢いでガタガタとゆれる、灰皿

知っていたらしく二人はげらげらと笑う

「さてと、仕上げは・・・」

懐から一本だけ真っ黒で細長いタバコとマッチを取り出す

ユウリがマッチを受け取り手にすらせて火をつけるとタバコをくわえるふりをする黒塗の煙草に火をつける

そのまま、灰皿に捨てるユウリ

「              」

火のついたマッチは様々な個所にあたり苦痛を与え最奥の液体に混じり消えていく

「で・・・このたばこの説明だが・・・ユウリ?」

「タバコ好きの人間が頼んだ品ですね・・・永遠になくならないタバコで、灰が伸びていくっていうものですね、香りもないから部屋が臭くならなくていい」

「タバコは吸わないのだが・・・飾りには良いだろう?」

鼻の頭に押し付けておく

タバコから伸びる灰が、重力に従いその実を落とす

「                 」

「さて、あとはこれで」

人の指の形をしたお香を置く

その先に火をつける、煙草同様に伸びていく灰、まるで指が灰色となり伸びていくようである

こちらは伸びるスピードが速くさっさと溜まり一気に落ちていく

「                     」

「ふふ・・・我々を、ごまかそうとしたのだルール違反を犯したものにはそれ相応の苦しみを味わってもらおう」

ゆっくりと消えていく灰皿と彼ら

公園に残されたのは、顔の無い男性型の人形が一つだけ、周囲の人間は先ほど同様の行動を行う

冷たい風が吹くと人形の髪が揺れる、犬が近寄り食んで持っていってしまう


「おかあさん・・・・・・リエちゃんがいないのー」

「あら、そうなの?・・・・へんねぇ、なくしちゃったの?」

「機能寝る前に、ベッドに寝かせたもん」

「そうよねぇ・・・」

「どうしたんだい?」

のそっと、リビングに父親が現れる

「リエちゃんが・・・居ないのぉ」

「・・・いない?・・・どれ?本当だな」

「あなたどう思う?・・・ちゃんと入れてたんですよ?」

「そうか・・・よし、じゃぁ新しいお人形を買いに行こうか、舞?」

「本当!?」

「あなた・・・まぁ、仕方ないですね」

「あぁ・・・だけど、次なくしたらダメだぞ?」

「まい、無くしてないもん!!」

空の小さなベッド、その隣に立つ女性がゆっくりとリエちゃん人形を置く

空だった小さなベッドに横たわる人形、まだぬくもりのある空の大きなベッド・・・いつか、彼等は別々の道を歩み始めた時に、人形を返しにきた彼らと接触するであろう

人形は、熱を持たない、舞という少女の玩具箱には男の子用と女の子用の玩具が入っていた

彼女はそれを見てニコッと笑って消えていく


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