表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

第9話



 葉月達がyesという部分を押し進化を許可した瞬間、ウェルとレク、それにカイルのミニウルフが光に包まれる。

 そして、光が収まった時、そこには5メートル以上の巨体を持つ百足になったウェルと、腐食が消えて丸まっていた背筋が伸びた代わりに、半透明の身体にボロ布を巻き付けた男の姿になったレク、それに口から巨大な牙を生やした狼が立っていた。


「あらタめてはじめましテだなあるじ。われはハーフゴーストウォーリアーのレク。こんごトもよろしくタのむ」


「キシャァァァ!!」


 ペコリと頭を下げながらたどたどしい言葉で自己紹介を行うレクと巨体をうねらせながら声を上げるウェル。

 その最初の進化の時よりどう考えても異常な変化を起こしている2体に葉月は思わず戸惑ってしまう。

 その時、そんな葉月の心を読んだかの如く脳内に再びメフィの声が響いた。


『どちらも【トラブルメーカー】の付加効果が進化に影響を及ぼしたようですね。本来レクはまだ言語は話せないはずですし、ウェルはここまで巨大にはならないはずです』


 念話のメフィの言葉に葉月はリースの言葉を思い出す。確か彼女は【トラブルメーカー】は進化の際に付加効果を与える可能性があると言っていた。

 ならばと思い葉月はステータスを開いた。



○●○●○●○●○●○



固有名:レク


種族:ハーフゴーストウォーリアー


Lv:1(0/140)


HP:79/79

MP:54/54


力:29(+5)

魔力:25(+5)

防御:2(+5)

魔防:28(+5)

素早さ:20(+5)

知力:35(+5)


称号:なし


【特性】:【人語発声】【武具装備可能】【闇魔法の使い手Lv1】【アンデッド】【半霊体】


スキル:ダークボール


装備:なし


(コメント):不死系の魔物が更なる不死を求めて半霊体へ進化した魔物。本来魔法の適正は持たないが、外的要因によって人語と魔法を扱う能力を得た。防御力はほとんどないが、【半霊体】の【特性】がカバーし、武具扱えるためバランスよく戦うことが出来る。



・【人語発声】…人間と同じ言語を話す。知力が増えるほど高尚な言葉を使えるようになる


・【武具装備可能】…武具を装備出来る


・【闇魔法の使い手】…闇魔法の適正を持ち、Lvが上がると扱う魔法の数が増える


・【半霊体】…物理攻撃を50%の確率で完全無効化、光魔法、回復魔法に対する耐性激減


・ダークボール…MP6消費で闇属性の魔力球を生成



○●○●○●○●○●○




○●○●○●○●○●○



個体名:ウェル


種族:ポイズンセンチピード・異常種


Lv:1(0/260)


HP:230/230

MP:80/80


力:84(+5)

魔力:12(+5)

防御:65(+5)

魔防:23(+5)

素早さ:36(+5)

知力:49(+5)


称号:なし


【特性】:【毒耐性】【節足】【強靭な顎】【生存本能】


スキル:噛みつく、猛毒牙、猛毒液、猛毒の棘


(コメント):毒性を重視する虫系の魔物が進化した百足の魔物。本来は体長1メートル位だが、外的要因により5メートル以上の体長を誇る異常種に進化した。そのためステータスは本来とは比べ物にならない位高くなったが、自然に進化することはこれ以上は不可能になってしまっている。



・【節足】…多脚と強靭な脚で壁や悪路を走破可能


・【強靭な顎】…噛みつく攻撃時にダメージ15%増加


・【生存本能】…HPが2割を切った時、HP持続回復(小)発動


・猛毒牙…MP1消費で従来より強烈な毒を牙から分泌し噛みつく攻撃を行う


・猛毒液…MP3消費で猛毒液を精製し吐き出す


・猛毒の棘…MP2消費で身体から棘を生やし、物理攻撃に対するカウンターを行う



○●○●○●○●○●○



 色々と驚くことが多すぎて葉月はステータス画面を見て固まってしまう。

 そんな葉月を不審に思った凜は葉月の後ろから画面を覗きこみ、驚愕の声をあげる。


「嘘!? 何この百足のステータス? アタシの魔物達より強いじゃない!?」


「……うわ!? ほんと強くなってますね!?」


 凜と同じように覗き込むカイルも驚く。

 確かに前と比べて圧倒的に強く、本来喜ぶことなのだが、どうしても1ヶ所だけ気になる部分があり、葉月は素直に喜べない。


「けどもう、進化できないのは痛いんだよな…」


 現状では大変有用だが、将来性を考えるとこれ以上進化しないのは中々厳しい。

 そんなことを思いながら呟くと、凜がその言葉に反応する。


「あら? 通常進化できないならファームの施設を拡張して融機獣やら混合獣への進化はないか模索してみたら?」


「そうですよ! バルタザール王国はどちらも許されているんですし試す価値ありますよ!!」


 凜とカイルの言葉で葉月は健吾の魔物の姿を思い出す。

 あの時、健吾に聞いた話によると融機獣サイボーグはファームに機械改造施設と呼ばれるものを作り、適性のある魔物をそこで機械化することで生まれるらしい。

 そして融機獣になった魔物は自然に進化する種は激減する代わりにLv100まで上げた状態である程度の設備が揃っていると、さらに機械化を進めた改造をすることができるという。

 一方の混合獣ミックスブラッドについては凜が設備を持っておらず、詳しくは知らないため、詳細はわからないが恐らく似たようなものなのだろう。

 そう考えると色々と希望が湧いてくるが、同時にその設備を手に入れるための難関が首をもたげてくる。


「けど設備って高いんだろ?」


 前からやりこみ、かなりの強さの魔物を持つ健吾ですら、融機獣化のための設備を買うのにかなりの時間がかかったと言っていたし、まだ第2段階の改造までしか設備的に出来ないと言ってもいた。


「そうね…、混合獣を作る設備を作るので5万コル位かしらね。それ関連の設備はやたら高いのよ」


 5万コル、今の葉月の手持ちが5000コルにギリギリ届かないことを考えるとかなりつらいものがある。

 そもそも始めて3日で5000コルも貯まるのも本来考えられないことであり、始めて2週間の凜も1万コル位しか持っていない。ここからさらに他のファーム設備や使いきった回復アイテム、それにレクの装備品を揃えることを考えると、さらにキツくなるはずである。

 そんなことを考えてどんよりしてる葉月を見てさすがの凜もフォローに入った。


「で、でもあんたの百足は必要経験値がバカ見たいに高いし経験値稼ぐ間にきっと金も貯まるわよ! それにアタシも手伝うし…」


「もちろん僕だって手伝いますよ!!」


 励ましてくれる凜とカイル。

 そんな2人に葉月は感謝の思いを抱きつつ、ステータスを消し、両手で自分の顔を軽く叩き、気合いを入れ直す。


「…だな! せっかく強く進化してくれたのにそれにへこんだらコイツらに悪いよな。…じゃあ凜もカイルも協力してくれよ?」


「ええ。そのためにもまずアタシがこなした依頼を報告に行きましょ?」


 そう言って自らの魔物に声をかけ、来た道を戻ろうとする凜。葉月とカイルも頷き、それぞれ進化した魔物達と交流した後、共に帰路につく。

 その際、帰り道に襲ってきたジャイアントバットに不意討ちをくらい、先頭を進んでた凜達が襲われたのを守ろうと、ウェルが巨体をうねらせて凜の目の前で噛み砕いたのが凜のトラウマになってしまったのは完璧な余談である。





********



「いらっしゃっいませ~!! って葉月さん思ったより早く来ましたね!?」


「少し金が貯まったからファーム設備を揃えようと思っているんだけど大丈夫か?」


 あれからセピア村に戻り依頼を達成した葉月達は報酬と追加の携帯つるはしを手に入れた後、とりあえず葉月とカイルのファーム設備を整えようという話になり、トラベルチケットを購入してバルタザール王国の王都に向かった。

 そして、ファーム設備の購入は所属国のギルドで行うので、ついでにリースに会いに行こうと思い、葉月達はギルドの扉を叩いたのだった。


「ええ、大丈夫ですよ。…ええと、お連れ様もご一緒の用件でよろしいでしょうか?」


「は、はい!! よろしくお願いします!!」


「アタシは唯の付き添いだし、所属国が違うから黙って見てるわ」


 不意に向けられたリースの言葉にテンパるカイルと若干不機嫌そうに答える凜。カイルがテンパったのは美人と言っても差し支えない容姿のリースに不意に声をかけられ反応が遅れたのだろうと同じ男として理解できるが、凜は何故不機嫌なのだろうか。

 そんなことを考えているとリースが端末を操作しながら話しかけてくる。


「それではお手数ですがテイマーズカードをお渡しください。ファーム情報を読みとったりしますので」


 そのリースの言葉に従い、葉月達はテイマーズカードをリースに渡す。

 受け取ったカードをカウンターの奥に備え付けてある機械にリースが一枚ずつ通していった時、葉月達の前にはそれぞれ液晶が展開した。




○●○●○●○●○●○



(アウグストの現在ファーム設備購入可能物一覧)


・キッチン…1000コル、人型の魔物がファームに居る場合、食材系のアイテムを用いて調理を行うことが出来る。作成難易度は素材のレア度と知力に依存。


・魔物用ワープ装置…2000コル、戦闘中、イベント中を除き、パーティーとファームの魔物を自由に入れ替えることが出来る。


・基礎トレーニングセット…10000コル、待機中の魔物が使用。ランダムでステータスが上昇する。ログアウト時にサポートユニットに監督させることも可能。


・訓練スペース…2000コル、待機中の魔物同士を模擬戦闘させ経験値を得る。ただし取得経験値は微々たる物になる。


・機械改造施設…50000コル、条件を満たした魔物の身体を機械化し、融機獣化する。当施設では第2段階まで可能。


・合成の禊場…50000コル、条件を満たした2体の魔物を合成し、混合獣化する。当施設では1対1のみ可能。



○●○●○●○●○●○



 映し出された表示に魅入っていると、リースが話しかけてくる。


「今の段階で作成出来るものは以上になりますね。どうしますか?」


 リースの問いに葉月達は今までのことを話す。異常種になったウェルのこと、それを進化させるための施設を作ろうとすること等々、一通り話す。


「…なるほど、確かに混合獣などへの進化を考えるのが妥当ですね。…ふむ、あとネイキッドゾンビが進化したハーフゴーストウォーリアーとミニレッドドラゴンが居るのですか……」


 深く考える仕草をするリース。それからふっと顔を上げる。


「なら、キッチンを作るのはどうでしょう? 魔物がドロップする食材系の品を調理することで、高値に売れたり、色々な事に使えますので、稼ぎの助けになると思いますよ?」


「食材?……俺は持ってないな…」


 アイテムインベントリを開いてもらい、確認するもそれらしいモノは見つからない。そうしてインベントリを閉じた葉月の前に凜が肉のような物を取り出す。


「これがあんた達を待っていた間に倒したプチリザードの肉よ。一つあげるから持っていきなさい」


 ドンッ! という音が似合う置き方をして凜は葉月の前に置いた。


「……良いのか?」


「あんたのお陰でアタシも強制イベントの経験値とコルをたんまり貰えたしね。それに………(リアルで迷惑かけ)てるし」


「ん? 何だって?」


 凜の言葉の最後が聞き取れず、葉月は聞き返すが、凜は何故か顔を赤らめ声を荒くする。


「~~ッ!? 何でもない!! さっさと受け取りなさいよ!!」


 ぶっきらぼうに良いながら押しつけてくる肉を受けとる葉月。

 それを楽しそうな様子で眺めていたリースが更に続ける。


「ふふ、それではキッチンを製作しますがよろしいですか?」


「ああ、頼む。カイルはどうすんだ?」


「そうですね…、僕は訓練スペースをお願いできますか? お二人に比べるとまだ弱いから少しでも強くなりたいんです!!」


 リースを真っ直ぐ見つめながらカイルは主張する。

 そんなカイルに一瞬驚いた後、微笑みながらリースは応える。


「わかりました!! では、葉月さんにはキッチンを、カイルさんには訓練スペースを設置します!! ……それにしても、やはり葉月さん達の影響は大きいんですね。カイルさんは今日訪れた他の方より成長を感じられますし」


「??? 僕がどうしたんですか?」


 疑問符を浮かべるカイルをよそに葉月と凜は頷く。

 本人の自覚はないだろうが、確かに今日だけでも彼の感情変化、思考する力はスムーズになってきている。

 これがザミエルの言うところの生の人間に触れるということであり、これからカイルも多くの者と触れあいながら刺激しあって行くのだろう。

 そんなことを考えていると、リースが作業を終えたらしく、カードを取り出し、手渡しながら話しかけてきた。


「はい、これでファームの方に設備が設置されました!! 他にご用件はありますか?」


「あと、レクの装備を揃えたいんだが、何処で揃えられるんだ?」


「それなら武具屋が、テイマーズギルド出てから東に行くとありますので、そちらに伺ってください。あ、マックスさんの所に行くなら……」


 リースは何か口ごもった後、カウンターの内側から何かの瓶を取り出す。


「武具屋の店主…マックスさんって言うんですけど、その方は少し頑固な所があるんで、私の紹介だという証としてこのお酒を持って行ってください。そうすれば、きっとあの人も貴方方の助けになってくれるはずです」


「……わかった。じゃあ、遠慮なく頂いていくよ。色々ありがとう」


 そう言って葉月は瓶を受け取り、カイルと共に礼を言い、ギルドを後にする。

 そして、三人が出て行った後、他のカウンターで事務処理をしている受付嬢達のサポートへ向かうために歩きはじめながらリースは独り言を呟く。


「マックスさん、葉月さん達のこと気に入ってくれるかな? …まぁ、葉月さん達なら大丈夫よね。それに、あの人も霜月さんの息子に会ってみたいって言ってたし」


 歩く速度を早めながら他のカウンターで受付をしている受付嬢を見る。

 彼女たちはもともとNPCとして決まった行動しか取れなかったのだが、今回の切り離しでテイマー達と同じように個を与えられ、一人の人間になっていた。

 しかし、彼女達はまだ同様に個が出来てないテイマーとしか触れあっていないため、刺激が足りておらず機械的なイメージを受けてしまう。

 それを変えていくのもリースの立派な仕事の一つであり、軽く顔を叩き、気合いを入れる。


「葉月さん達だってカイル君をあれだけ変えられたんだから私も頑張らなくちゃ!!」


 そう言って意気込みながら彼女は他の受付嬢のカウンターに着き、手伝いを始めるのだった。




*********



「………何の用だ?」


 リースに教えられた通りに進んだ葉月達は制限時間が来たカイルと別れ、剣と盾を掲げた看板を持つ武器屋に到着する。

 そして、その店に入った時、葉月達を出迎えたのは数多くの武器が並ぶ店内とスキンヘッドの厳つい中年の男だった。


「リースさんの紹介で武具を揃えに来たんですけど」


 言いながら、リースに渡された瓶を渡す葉月。


「孃ちゃんの? …ああ、あんたが霜月の倅か。良く来たな」


 葉月が渡した瓶の蓋を開け、ラッパ飲みしながら男は続ける。


「…で、用件は魔物の武具か? それともお前の装備か?」


「ハーフゴーストウォーリアー用の武具が第一だけど、出来れば俺の装備も頼みたい。予算は3000コル以内で」


 必要以上の会話を求めないマックスと呼ばれた男の様子を見て、葉月はあえて疑問に思ったことを質問せずに、簡潔に返す。この手の職人タイプは無駄な会話を嫌うので、通すべき主張だけ通して後は任せたほうがいいというのを、以前バイトの先輩に教えられていたのだ。


「…手持ちの材料を全部見せな。そっちの嬢ちゃんもだ」


 マックスは葉月の返しに微妙に眉を動かしたものの、変わらず酒を煽りながら淡々としゃべる。


「ちょっ!? 何でアタシまで!? 葉月の物を作るのにアタシは関係ないでしょ!?」


「…坊主は初めて間もないんだろ? 最低限すら材料が足りない可能性がある。…嬢ちゃんが手を貸してやるなら2人分を手間賃無しで作ってやるが?」


 わめき立てる凜にも表情を変えず答えるマックス。

 本来武具屋は薬屋と違って材料持ち込みにそこそこ手間賃をとるらしい。それがタダになるのは中々おいしい条件だった。


「……わかったわよ! でも葉月より良いもの作ってよね!!」


 手間賃タダという条件に折れ、凜はアイテムインベントリを開き、使えそうな素材をドンドン置いていく。

 それを見て、葉月も慌てて自分の持っている素材を別の場所に置きはじめた。


「……おい、坊主。何でそんな物を持ってる?」


 マックスが葉月の手元を見ながら不意に声を上げる。

 その目線の先にあったのは初日にムルムルからもらった鉱石だった。


「綺麗だけど葉月が持ってたら変なの?」


「……それはおそらく光鉄石…いや、光鋼石だろう? 未開地域の奥深くでしかとれないはずだが?」


 一目で見極めたマックスに驚きつつも葉月は経緯の説明をする。自らのタレントのこと、強制イベントで引き当てたのがソロモンの悪魔だったこと、カイルが居ないので話せるようになったメフィが補足を加えながら説明し終えた時、マックスは初めて表情を崩し笑った。


「ハッハッハ!! さすがあいつ等の倅だな!! 初日からソロモンの悪魔と関わり合いになるたぁ面白いじゃねえか!!……おい、坊主、嬢ちゃん、そういやまだ名前を聞いてなかったな。何て呼べばいいんだ?」


「俺は葉月だ」


「アタシは凜よ」


「葉月と凜だな?……じゃあ、これは俺からの提案なんだが光鋼石は一度買い取らせてもらえねぇか?」


「買い取る?」


「おう。正直今のお前達の持つ素材じゃコイツは生かしきれねぇ。だから一時的にコイツを俺が預かり、お前達には今持つ素材で生かしきれる素材をこっちが提供してやる。それで、時が来たら正当に金を払って光鋼石を俺から買い、見合ったものを作るというのはどうだ?」


 マックスの提案は葉月達にとって美味しい話だ。現状使いこなせない素材を持っていても意味がないし、それに後で買い戻せるなら尚更乗らない手は無い。


「なら頼む。…それで、今の素材で何ができるんだ?」


「ふむ…、色々候補はあるがお前等はどんな物を望むんだ?」


 その問いに葉月は思考を巡らす。

 正直、レクをどのように運用するかを計りかねていたのだ。

 レクはステータスを見る限り何かに特化しているわけではなく、持たせる武器によっては近中遠のいずれのレンジもカバーできるオールラウンダーであり、十分需要がある存在だ。

 だが、逆にそれがプランを組み立てる上で邪魔になっている点でもあった。


「あ、じゃあアタシのネコ太郎は剣と軽鎧で!! 俊敏さを生かせる装備が欲しいな!!」


 凜は迷わず答える。彼女のワイルドキャットウォーリアーは素早さに特化しており、また【剣術】という【特性】も手に入れていると聞いている。それならば長所を生かすのが当然だし十分納得出来る。


「あいよ。…で葉月は悩んでんならステータスを見せてみな。俺も考えてやるよ」


 そんなマックスの言葉に甘え、ステータスを開きマックスに見せる。


「ふむ、ポイズンセンチピードがいるから無理に前衛である必要はねえのか。でも小回りがきかないのをフォローする必要もあるか………」


 ステータス画面を見ながら考え込むマックス。

 そしてーー、


「うむ。じゃあアレを作るか」


 何か浮かんだのか、マックスは凜と葉月が出した素材からいくつか取り出し並べていく。


「葉月、凜。お前達に作ってやるものが決まったんだが、作成には1日かかるがいいか?」


 マックスの言葉に葉月と凜は頷く。


「ああ、どうせ今日はもう時間もないしな」


「なら、次にこの世界に来た時にでも取りに来い。どんなのになるかは次までのお楽しみだ」


 そう言ってマックスは今日の所は帰れと葉月達を追い出す。

 そして、追い出された葉月達は各々魔物と合流した後、残り時間も少なくなっていたので、各々魔物と別れの挨拶を済まし、ログアウトすることにしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ