第8話
「マタ吉!! 葉月のゾンビも巻き込んで良いから、毒の胞子!!」
マギ大陸の中心にある山の足元、セピア村から山に向かったところに太陽と月の洞窟は存在する。
そして、そこで今、洞窟内に住み着く蝙蝠の群れと葉月達の魔物が戦っていた。
「「「キィィィィィ!?!?!?」」」
一人突出するように前線に立つネイキッドゾンビ、レクに蝙蝠達が群がっていたが、そこに足や手が生えたキノコ、マタ吉が身体から紫色の胞子が噴出しながら飛びかかる。
そして、レクに群がる蝙蝠達を紫色の粉が覆い隠した時、蝙蝠達が悲鳴をあげながら少しずつレクから離れていく。それと同時に、テイマー三人が同時に声を上げた。
「ネコ太郎、左側のジャイアントバットを斬って!!」
「ウェル!! 前を飛ぶジャイアントバットに毒液を!!」
「ミニウルフ!!右のジャイアントバットを攻撃して!!」
三人バラバラ、けれども完璧なまでにタイミングの合った攻撃は一斉に蝙蝠の群れに飛び込み、一気に蝙蝠達の数を減らす。そして、その攻撃の中で生き残った蝙蝠達はフェア子と呼ばれたニンフが風魔法の一つであるウインドエッジと呼ばれる風の刃で打ち落とし、落ちた敵をレクがドンドン噛みついて倒していくのだった。
「……ふぅ、大体こんなもんね。どう? アタシのマタ吉の力はすごいでしょ??」
息の合った攻撃で蝙蝠、ジャイアントバットの群れを一掃し一息ついた葉月達。そこで凜が自慢げな口調で話す。
すると、カイルが目を輝かせて凜の言葉に同意した。
「本当にリンさんのマタ吉はすごかったです!! それにアウグストさんの魔物も!! う~、僕もこいつを早く強くしたいなぁ」
言いながら、カイルは隣に佇むミニウルフを撫でる。
それにより気持ち良さそうにしているミニウルフを見ながら葉月は次はウルフみたいなもふもふも良いよななどとつい思いつつカイルに話かけた。
「いや、カイルのミニウルフだって凄かっただろ? それにタレントのお陰で俺たちの行動が被さることなかったし助かったよ。凜と二人じゃ絶対同士討ちとかになってたし」
「そうね。カイルがいなかったらめんどくさいから毒の胞子じゃなくて、発火胞子でゾンビごと焼き払ってたわよ」
葉月と凜のカイルを誉める言葉にぎこちないながら、照れたような表情をするカイル。
彼の持つ初期タレントは【チューニング】というもので、他のテイマーとの協力時に一時的に念話による会話、相手との思考の共有、そして統率を可能にするという集団向けのタレントであり、先程蝙蝠の群れを相手に息のあった攻撃が出来たのも、全てはその恩恵だった。
「っと、そろそろ落ち着いたし、先に進まない? アタシ達の獲物は行き止まりにいるって話だし」
首を鳴らしながら言う凜の言葉に葉月とカイルは頷く。
今居る場所は太陽と月の洞窟に入ってすぐの開けた広場であり、凜があらかじめ知っていた情報によると、この洞窟はこの広場から先に行くと、途中で二本の道に別れるものの最終的に地底湖が目の前にひろがる広場にたどり着き、そこに目標であるプチリザードや磁銅の採取が出来る場所があるらしい。
「うし、じゃあ行くか!!」
気合いを入れた言葉と共に葉月達は立ち上がり歩き始める。
その先は何らかの効果で淡く青く光る岩に囲まれた道が続いており、灯りがなくとも十分進んでいけるようになっていた。
そんな光景に思わず見とれて歩きながら、葉月はカイルにふと、思ったことを尋ねる。
「そういやカイルは何でテイマーになったんだ??」
テイマー達は新たに作り直され個を得たと言う。だが、個を得るためには必然的に過去を持つ必要がある。このような幻想的な光景を作り出した両親達、神々がカイル達にどのような形の過去を与えたのか気になったのだ。
「僕は元々、バルタザール王国のラマイ村という小さな村の出身なんです。その村は昔から魔物と人間の共存が出来ており、皆平和に暮らしていました。しかし、1年前に凶暴化した魔物が暴れ回り、村を襲おうとしていました。ですがその時にテイマーの方が助けてくれたのです。お陰で村が守られ、僕はそのテイマーに憧れてテイマーを目指すようになったんです」
「………随分テンプレートな話ね」
凜がぼそっと呟く。
葉月も思いっきり心の中で同意するが、同時にテイマーに憧れを抱く新入りのテイマーに与える過去としては確かに納得できる。そんなことを思いながら、今度はカイルのぶつけてくる質問にうまく理由をつけて答える。
そうしてしばらく歩くと、二股に分かれた道にたどり着いた。
「さて? どっちに行く??」
「そうね…、じゃあ葉月とカイルは左でアタシは右に行くので良いかしら?? 戦力的には良い感じじゃない??」
「……だな。けど凜、お前一人で大丈夫か? お前今でも夜一人でトイーーぐふっ!?」
顔に青筋を浮かべながら凜が葉月を蹴り飛ばす。
「あ…あんた何言ってんのよ!? 誰がこ…、怖いもんですか!! そ…それにアタシは一人じゃないし!! ほら、行くわよ!! スカアハ!!」
顔を真っ赤にした凜が早口で言った後、早足で右の道に向かう。その後ろでレッサーパンダに似たサポートユニットがやれやれといった表情を浮かべ、付いていく。
そして、凜が去った後、蹴り飛ばされて倒れた葉月にカイルがおずおずと手を差し出した。
「大丈夫ですか?」
「……ああ、ごめん。俺達も行こう」
葉月はカイルの手を借りて起きあがる。
それから体についた土を払いながら凜とは別の左の道へと進んでいくのだった。
*********
「そういえば、カイルはテイマーをしていない時はどうしているんだ?」
この世界では葉月達と同じようにテイマーはテイマーとして活動出来るのは6時間だけと制約が課されているのを聞いた葉月は、それ以外の時間の過ごし方がどうしているのかカイルに尋ねる。
「ん~、僕のファームは村に近いんで、テイマーじゃない時は農作業を手伝ったりしていますね。基本的に貧乏なもので」
純真な笑みを浮かべ、恥ずかしそうにするカイル。気のせいかも知れないが、初めに会った時よりすでに表情が柔らかくなっている気がする。
そんなことを考えながら左の道を進んでいた葉月とカイルの前に開けた場所が見えてきた。そこは今までの岩だらけの洞窟と違い、綺麗に整えられた壁と天井に描かれた月から光源のようなモノが広場全体を明るく覆う不思議な雰囲気を醸し出す場所だった。
そして、その場所に足を踏み入れた時ーー、
ーーーピコーン、ピコーンーーー
「っ!?」
以前に一度聞いたことのある音が腕輪から響く。同時に葉月の前に赤い下地の液晶が展開した。
○●○●○●○●○●○
強制イベント:【月に吼えるものの影】
(勝利条件)這い寄る混沌の端末の撃破
○●○●○●○●○●○
液晶の展開と共にボゴォ、ボゴォと言う音が前方で響く。
葉月とカイルが目を向けると、そこには部屋中の壁と床から蚯蚓というか触手というかとにかく名状しがたいものが現れていた。
「何……これ……」
カイルが呆然とした様子で呟く。そう言うのも無理はない。先程まで洞窟とは思えないような整った形になっていた広場が、今や触手が襞のように敷き詰められた気持ち悪い場所へと変化している。
しかもご丁寧なことに奥に行くための通路近辺には特に触手が密集していた。
「……すまん。カイル。これ、俺のせいだわ。俺が何とかするから後ろで待っていてくれ」
不可抗力とは言え、己の【トラブルメーカー】が引き起こした事態に罪悪感を覚える葉月。
巻き込んだ以上、自分で落とし前つける必要がある。そう思いカイルを後ろに控えさせ、最悪死に戻りを覚悟して触手の群れと戦うことを決めたその時、葉月の肩をカイルが掴んだ。
「アウグストさんのせいじゃありませんよ。これは僕たちが試されているんです。ですから共に戦います!!」
そう言って、葉月の前にミニウルフと共に飛び出すカイル。
すると躊躇なく触手達が襲いかかってくる。
「ウェル! 左の触手に毒液を、レク、右の奴を受け止めろ!!」
飛び出したカイル達を援護するように葉月は命じる。そして、ウェルが吐いた毒の霧に一瞬怯んだ触手にカイルのミニウルフが噛みつく。
どうやら、触手1本1本はそこまで強くないらしく、ミニウルフが噛みついた後に続いてウェルが噛みつくと耐えきれないように悶えた後、出てきた穴の中に消えていく。
「カイル!! 下がれ!!」
叫びとともに一歩下がる葉月。カイルもそれに頷き下がる。
それに対し、触手は追撃するために体を伸ばすものの、ある一定の長さでピタリと止まった。少なくとも広間からは出られないらしい。
「やっぱそうか、なら下がったり攻めたり繰り返しながら各個撃破して行こう!! カイル!【チューニング】を頼む!!」
触手が届かないことを確認し、葉月は伸びきった触手にウェルとレクを差し向ける。そして、その二匹が触手を攻撃することで生じる隙をカイルとミニウルフがカバーし、確実に1本ずつ撃破して行く。
ーーそうやって戦い始めて1時間半くらい経ち、葉月とカイルは触手を残り5本まで減らした。
だが、その代償として魔物達は全身満身創痍であり、回復薬も使い果たし、ウェルも毒液を生成することすら出来なくなっていた。
「ごめん、アウグストさん。もう【チューニング】は使えない」
魔物だけでなくカイルの方も限界だった。【チューニング】は一回毎に集中力をかなり使う。そのため50本近くあった触手を5本まで減らすことで限界をすでに超えていたのだ。
「ああ、もう休んでてくれ。あとは俺がーー!?」
本人は気づかなかったが、カイルと同様に葉月も限界を超えていた。カイルと思考を共有し、迫り来る触手に対し判断を下し続けていたため確実に負担がかかっていたのだ。
そのため、行動パターンを変え1本を囮に回り込むように後ろから襲いかかろうとする残り4本の触手に対しての反応が遅れてしまう。
そして、4本の触手がウェルやレクを貫こうと襲いかかったその時ーー、
「フェア子、ウインド!! マタ吉、発火胞子!!」
葉月達が入ってきた入り口から女の声が響く。
同時に襲いかかる触手に風が巻き起こり、そこに赤い粉状のものがまとわりつき一気に爆発する。
それを見て、葉月は何が起こったか確信し、最後に残った前方の触手の方を向きウェルとレクに命令する。
「あと1本! やっちまえ!!!」
葉月の命を受けウェルとレクが触手に殺到する。もうボロボロでありながらもその2匹の死力を振り絞った噛みつきは触手を噛みちぎり、触手は悶えながら穴の奥へと引っ込んでいった。
そうしてやっと全ての触手を倒し終えたことを確認し、広間が穴だらけだがとりあえず元の静寂な空間に戻った時、葉月とカイルは思わずへなへなと座り込んでしまった。
「……終わったな」
「……終わりましたね」
カイルと葉月は思わず笑い合う。キツい戦闘で意識を共有した2人の間には言葉で言い表せないような感情が互いに生まれていた。
「………で? 待っても待っても来ないから、依頼条件達成した上に、わざわざ来た道を戻って最後に助けてあげたアタシに感謝の言葉は??」
座り込む二人と周りでくたびれている魔物達の元に凜が歩いてくる。
「……ありがと。ほんと助かった」
「……ありがとうございます。助かりました」
疲れ果ててそれどころではないため、素直な返答をする葉月とカイル。
その対応は予測してなかったらしく、凜は照れて顔を赤くする。
「わ…わかってるなら別に良いわよ。それで何だったのあれ?」
照れながらも尋ねてくる凜の言葉に答えようとすると同時に、葉月達の前に液晶が何枚か現れる。
そこにはまずは戦闘で取得した経験値が出ている青い下地の液晶が展開した。
○●○●○●○●○●○
経験値3500取得
0コル取得
レク:Lv62→100
ウェル:Lv4→86 スキル:毒牙、酸噴出取得
・毒牙…MP1消費で噛みつきに毒効果付与
・酸噴出…MP2消費で体内で酸を生成し噴出
○●○●○●○●○●○
次いで、強制イベントの赤色の下地の液晶が展開する。
○●○●○●○●○●○
強制イベント:【月に吼えるものの影】
勝利条件達成
経験値1200取得
3000コル取得
月の欠片×1
トラペゾヘドロン(レプリカ)×1取得
ウェル:Lv86→100
・月の欠片…レア度SS。太陽の欠片と合わせ、合成することで真価を発揮する。
・トラペゾヘドロン(レプリカ)…レア度S。使用するとランダムでテイマーの実力に見あった魔物を召喚、使役することが出来る。
○●○●○●○●○●○
そして最後に魔物達の進化についての情報が展開する。
○●○●○●○●○●○
ネイキッドゾンビ(個体名:レク)が二段階進化の条件を満たしました。進化させますか?
[yes/no]
ヴェノムアント(個体名:ウェル)が進化の条件を満たしました。進化させますか?
[yes/no]
○●○●○●○●○●○
「すげぇ……」
凜に説明するのも忘れて葉月は展開された液晶達を食いつくように見る。そこに映される今までとは桁違いな報酬に驚いていたのだ。
「もしかして…本来あの触手達を一度に相手をしなきゃいけないイベントだからこんな高いのか?」
耐久力は無いとはいえ一度に無数の触手に襲われる。それなら難易度はさらに上がり、この報酬も納得できる。
そんな仮説を立て、葉月がメフィを見ると黒猫は無言で頷く。ちなみに一般のサポートユニットは喋らないという設定になっているので、カイルが近くにいる間はメフィは黙っているのだ。
「アウグストさん!! 僕のミニウルフが二段階進化するんですって!! それに見たこと無いようなアイテムも!!」
カイルが自分の前の液晶を見ながら興奮する。
レクもそうだったが、進化する条件を満たした時に、さらに余剰経験値がある程度あると本来Lv1からのものが余剰経験値分さらにプラスされるらしい。だから今回レクとミニウルフはさらに条件を満たしたことで二段階進化するのだろう。
「……あら? アタシにもイベント達成になってるわね。……って何でもらえる報酬がこんなに高いのよ!? あと何この月の欠片って!?」
凜も最後に参加したため、イベントに参加したことになっているらしい。興味本位で凜の液晶を覗きながら葉月はふと凜に表示される画面に違和感に感じた。
そして、自分の液晶と見比べて彼女の液晶にはトラペゾヘドロン(レプリカ)と書かれたものがないことに気づく。そのことに疑問に思っていると不意に葉月の頭の中で声が響いた。
『それは月に吼えるものから葉月様達2人への個人的な報酬だそうですよ。レプリカなので使ってもSAN値が下がったりするようなものは召喚されないそうなのでご安心を』
頭に響く声を聞き黒猫の方に目をやるとわざとらしく黒猫がウインクしているのが葉月の目に飛び込む。
SAN値云々はよくわからないが、魔物を貰えるなら試しに使ってみるかと思い凜に自分たちがトラペゾヘドロンというアイテムを手に入れたことやその効果を説明した後、葉月はアイテムインベントリからトラペゾヘドロン(レプリカ)を取り出す。
すると、葉月の手にあったのは黒い四角形の箱だった。
「これどうやって使うんだ……?」
手に持つ箱の使い方がわからず首を傾げる葉月。同じ様にカイルも黒い箱を持ったままどう使うのか悩みながらペタペタと箱を触る。
その時ーー、
「ーーー!? 何!?」
いきなり箱が開き、中から円に近い形の多角形な何かが飛び出す。
そして、その飛び出した何かを中心に空に魔法陣が出現し強い光を発しながら葉月とカイルの元に何かを落とした。
「キュー!!」
「グギャアアア!!」
何かの鳴き声が聞こえ、光が収まった後に葉月の前にいたのは小型の赤い体色の竜であり、カイルの方には茶色の体色を持つ小鬼が立っていた。
「キュー♪」
呆然とする葉月に赤い小さな竜は近寄りパタパタと飛びながら葉月の顔を舐め回す。
「こいつが新しい魔物?」
舐め回す竜をはがしながら、葉月はステータスを開く。
○●○●○●○●○●○
固有名:なし
種族:ミニレッドドラゴン
Lv:1(0/65)
HP:72/72
MP:24/24
力:29(+5)
魔力:10(+5)
防御:24(+5)
魔防:14(+5)
素早さ:18(+5)
知力:19(+5)
称号:なし
【特性】:【火耐性】【飛行】【竜の血統】
スキル:噛みつく、ファイアブレス
(コメント):竜種の基本に当たる魔物であり、多くの可能性を秘めている。必要経験値は能力に比べて高め
・【火耐性】…炎属性の攻撃40%軽減
・【飛行】…任意で飛行可能
・【竜の血統】…HPが2割を切った時、全ステータスに+10の補正
・ファイアブレス…MP5消費で炎を吐き出す
○●○●○●○●○●○
すでに葉月の仲間として扱われているらしくステータスも見ることが出来、よく見ると他の魔物と同様にドックタグのようなものを下げている。
「これはもうお前が仲間になったと考えて良いのか?」
「キュ!!」
「ならこれからよろしく!! …っとそういやこのステータス補正は何なんだ?」
元気よく答えるミニレッドドラゴンに葉月は微笑む。それと同時にミニレッドドラゴンのステータス上のに書かれた補正が目に入り、気になったため色々と調べてみる。すると、葉月自身のステータスにその答えはあった。
○●○●○●○●○●○
名:アウグスト
所属:バルタザール王国
ランク:見習いテイマー
タレント:【トラブルメーカー】【無貌の神の加護(小)】
装備:なし
称号:這い寄る混沌のお気に入り
パーティー:レク、ウェル、ミニレッドドラゴン
・【無貌の神の加護(小)】…パーティーの全魔物の全能力値に+5の補正
○●○●○●○●○●○
「…這い寄る混沌ってあの触手の親玉のことか?」
新たに手に入れた称号によるタレントは有益だが、あの触手に気に入られたと思うと何となく素直に喜べない。それをカイルも同じように思ったらしく、小鬼のステータスと自分のステータスを見ながら判明した事実に苦笑いを浮かべながら葉月を見る。
「何よ。アンタ達知らない間に仲良くなっちゃって。…良いわよアタシだってネコ太郎が進化出来るんだから!」
そんな2人の様子に自分一人感覚を共有できないことに拗ねているのか、凜はふてくされながらぶつぶつ呟く。
それから、彼女が何やら液晶を開き操作をすると、彼女の側にいたネコ太郎と呼ばれた二本足で立つ猫が光に包まれた。
そして、その猫を包んだ眩い光が消えた後、猫が立っていた場所には身長が人間と変わらないくらいのサイズまで伸び、以前より凛々しい顔をした藍色の猫が立っていた。
「私はネコ太郎。これからもよろしくですニャ」
進化したネコ太郎は凜の前に跪きながら言語を発する。背中に剣を背負い、革の鎧に身を包み凜の前に跪く姿はまるで忠誠を誓う騎士の様にも見える。
そんなネコ太郎の様子に凜は本当に嬉しそうに顔を緩ませた後、葉月達に自慢気な顔を向ける。
「どうよアタシのネコ太郎は! ワイルドキャットウォーリアーという種に進化してかっこよくなっちゃったんだから!!」
言いながらネコ太郎の頭を撫でる凜。はたから見ると女王様気質の女が跪く自分より大きな猫の獣人の頭を撫でまわすという中々シュールな光景なのだが、本人が満足そうにしているならいいかと思い、葉月達は適当に相づちを打つ。
それから葉月達は自分達も進化出来る魔物達がいることを思い出しステータスから進化しますか? という選択肢の液晶を開ける。
そして、そこに映されたyesの部分を押すと同時に葉月達の魔物は眩い光に包まれるのだったーー。
次回は魔物の進化とファーム設備の購入など。
クトゥルーネタはしばらくありません。興味の無い方にそこら辺をかみ砕いて説明すると、触手だらけの気持ち悪いボスキャラに気に入られたという感じです。
次回更新日は未定。ちまちま書くので時間かかります。