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脱出大作戦



急なレオナルドの登場にビックリし固まっているアンの肩を引き剥がしウィリアムはアンの頭を撫でる


「アン、挨拶しなきゃだめだろ?こちらはレオナルド王子」



「・・・・・・・こんにちは」



やっと開いたら口からはこんな挨拶しかでてこない



「今からお前の屋敷に行こうと思っていたところだ。入れ違いにならなくてよかった」



そういってアンの腕を掴もうとするが、アンはサッとウィリアムのうしろに隠れ、レオナルドの笑顔が一気にひきつる



なんでいるのよ、ここに!私はお兄様に会いに来たのであってレオナルド様に会いに来たわけじゃない!!



そんな2人に苦笑いを浮かべながらフォローにまわるウィリアム



「たしか、2人は初対面ではなかったな」



―――――え?

なんでお兄様が知ってるの?



「レオナルド様、自分はまだ任務が残ってるので少しの間アンの相手をしてもらっても?」


「あぁ、もちろんだ」



満足げに頷くレオナルドにアンの思考はとまる。そんな不安感丸出しのアンの耳元にウィリアムは言葉を呟く



「せっかく会いに来てくれたのにごめんな、すぐに任務を終わらせるからそれまで待ってて?」



アンは顔を真っ赤にさせ頷くとウィリアムはレオナルドにアンを差し出す



「レオナルド様、俺の大事な妹ですからよろしくお願いします」


「あぁ」



そう言うとウィリアムはどこかに行ってしまう


取り残されたアンは歩き去っていくウィリアムの背中をその場に立ち尽くして見ていたのだった




◇◆◇◆◇◆◇◆




「どうしたんだ?」



アンは目の前に出されたお茶やケーキに口をつけず、顔を真っ青にして俯いている


心配そうなレオナルドの声にアンの体はプルプル震えた



ウィリアムがいなくなってしばらく2人は無言だったが、それに耐えかねたレオナルドが「お茶でも飲むか」とアンを屋敷の中に入れたのが始まりだ


アンは今まで王宮には何度も来たことがあるが、行くのはウィリアムがいる騎士団の本部ぐらいで王宮の中には入った事がなかった





こんっっな高そうなティーカップでお茶なんて飲めないわよぉお!!!

しかも部屋にメイドがいすぎじゃない?そんなに王子が心配なの?!

ていうか、部屋の装飾品の数があたしの屋敷と比べ物にならない。まぁ、王宮と男爵家を比べるあたしが馬鹿なんだけどね?







周りのメイド達は眉をひそめアンをじろじろと観察している


王宮のすごさとメイド達の視線に圧倒されてしまい王子の声も耳に入ってこない




「・・・・い・・、おい!!」


「は、はい!」



はっと気がつくと王子までがこちらをじっと見つめていた



「具合でも悪いのか?」


「いえ、そんな事はございません」


「だが顔色があまり良くないが」


「レオナルド様、私やはりお兄様の事は1人で騎士団の本部で待っている事にしますわ」




出されたお茶やケーキに手をつけないのは相手に対して失礼だが、ここはしょうがない!

どうせあんな人数にじろじろ見られながら食べたって、食べた気しないし



「だめだ、お前の事はウィリアムに任された。なにかあったら大変だ」



王宮の騎士団本部って一番安全な所じゃん・・・



アンは負けじとレオナルドと大勢の侍女達から逃れられる理由を考える


「やっぱり具合が悪くて、みなさんにもうつったら大変だから1人にしてください」


「いや、俺が看病しよう」




王子みずから!?周りのメイド達も一瞬動揺したよ?




いろんな理由をつけてもレオナルドはアンの嘘に気づいたのか引き下がる気配はしなかった



くそぉ〜、こうなったら仕方がない。強行突破だあぁぁあ!!!!!!



「やっぱり治りました。少し外の空気が吸いたいので失礼します!!」



ソファから勢いよく立ち上がりドアを目指して一直線


みんな目を点にして驚いているがそんな事は気にしない!!!



部屋を脱出し、廊下を走り続けなんとか庭に脱出成功した。随分走ったおかげで息は切れその場で立ち止まる



ふと回りを見渡すとそこには色んな色の花がたくさん咲いていた


見たこともない花やアンが大好きな花までたくさんあった



「すごいきれい・・・」



「ここには世界中の花が集まってるからな」




っ!!!

・・・・レオナルド様



「お前は随分と元気だな」


「・・・え、えーと・・」



アンの後を追ってきたはずのレオナルドは全然息を切らしておらずむしろ清々しい顔をしていた



「・・・走ってきたのに、全然余裕そうですね」


「当たり前だ、体は鍛えてある」



自分は何て当たり前のことを聞いてしまったんだろう



「それより、いきなり部屋を飛び出して一体なんなんだ?」


「う゛・・・」



質問に答えず目を泳がせるアンにため息をはくと、レオナルドはあることを思いついたように口が自然に弧を描いた



「このことはウィリアムに言わなければな」


「っ!!!!」



な、なんだとぉおおぉお!?!?



「クウォード男爵家の娘には一体どのような教育をしているのかと」


「・・や、やめてください・・・!」



キッとレオナルドを睨み付けるが全然怯む様子もなく、むしろおもしろがっているようだ



こいつ性格わるっ!やっぱり王子だから我が儘なのよ。自己中なのよぉお!



「走り出した理由を言えば考えてやる」



しばらく黙っていたがアンは諦めたようにぼそぼそと喋り出す



「・・・緊張したんです」


「 緊張? 」


「・・はい。ティーカップや部屋の装備、すべてにいたって高そうです!しかもなんですか!あの大勢のメイドの数!!あんな人達に見られながらお茶を飲んでもおいしくないし、リラックス出来ません!」



「・・・それだけか?」


きょとん、とした表情のレオナルドにアンもきょとん、としてしまう



「へ?」


「いや、俺と一緒にお茶を飲むのが嫌で逃げ出したのかと思った」



・・・まぁ、それも一理あるけどね



「だが、そうじゃなくて安心した」


・・・・・・・ははは。



「お前がそこまで言うなら2人で庭でも散歩するか」



・・・・もうなんでもいいっす



それからしばらく庭を案内され、(腰に手をまわされやけにくっついた状態)ぐるっと一週回ったぐらいにウィリアムが任務を終わらせ迎えに来た



「アンおまたせ、ウィリアム王子も妹の世話をありがとうございます」



「気にするな、いつでも面倒をみよう」


腕をつかむレオナルドの手をむりほどきウィリアムの方に走っていくとレオナルドは不機嫌そうな顔になる



「お兄様ったら遅いわ!もっと早く迎えにきてよ」


「ごめんな、いい子にしてたか?」


「もちろんよ」



レオナルド様からの視線が厳しいのは気にしない!





「それではレオナルド王子、俺達はこれで失礼します」


「お邪魔しましたわ、レオナルド様」



ウィリアムの後ろから挨拶をするアンは今日一番のとびきりな笑顔で、レオナルドは少し複雑な想いだった





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