なんでここに!
3人がかりで髪を結い上げてもらい、薄く化粧を施すと急いで馬車に乗り込んだ
運転手に行き先を告げると馬車は走り出す
馬車の中ではアンがドレスの裾をいじったり髪を触ったりとそわそわしていた
「お嬢様、落ち着いてください」
「だって・・・なんか緊張してきたわ!お兄様に会うのは何ヶ月ぶりかしらぁ〜」
「何ヶ月って・・・大袈裟な」
ぼそっと呟いた侍女の言葉はアンには聞こえていなかったらしく、不安そうなアンの声は王宮に着くまで続いていた
「お嬢様、王宮につきましたよ」
馬車が止まり扉が開かれるとゆっくり降りていき、ずっと同じ体勢でいて固まった体を伸ばすと周りを見渡す
「はぁ、お兄様はどこかしら?」
キョロキョロしていたらら門番が2人こちらに歩いてきた
「・・・もしかして、アンか?久しぶりだな!」
「ローナン!」
喋りかけてきたのは赤毛の髪の男で、アンの知り合いだ
アンはあまりにもウィリアムにベッタリで毎日のように騎士団に通っていたからアンの事を知らない者はいないぐらい騎士団の中では有名なのだ
「最近見かけなかったが大人っぽくなったな」
「本当?うれしいわ」
「まだお前のブラコンぶりは治ってないのか」
「当たり前よ!お兄様以上にかっこいい男なんていないわ」
さっきから、わいわいと話す2人の会話をぽかんと聞いていたもう1人の門番に気づいたローナンはアンの紹介をする
「こちらはクウォード男爵家のご令嬢、アンだ。あのウィリアムの妹だよ」
「ウィリアムさんの!?僕はネルっていいます!」
ネルはビックリするとにっこりと右手を差し出してきた
「よろしくね、ネル」
にっこりと微笑み握手をするとネルは顔を真っ赤にさせた
「今日もウィリアムに用事か?」
「えぇ、どこにいるか分かる?」
「あいつなら騎士団の本部にいると思うぞ」
「ありがとう、それじゃ」
手を振って去っていくアンをネルは不思議そうに眺めていた
「案内しなくてもいいんすか?」
「大丈夫だろ、あいつは小さい頃からよく王宮に来てたから場所には詳しいぞ」
「そうなんすか、それにしてもアンさんすごい美人でしたね〜流石ウィリアムさんの妹」
うんうん、と手を組みうなずいているとローナンは苦笑いする
「あのブラコンぶりがなけりゃあな、あそこの兄妹は・・・」
◇◆◇◆◇◆◇◆
騎士団の方に歩いていくとだんだん騒がしくなり、剣と剣がぶつかる音や掛け声が聞こえてくる
今訓練中かしら・・・
顔を覗かせるとアンに気がついたみんなが訓練を中止して喋りかけてきた
「アンじゃないか!みんなアンが来たぞ〜!!!!」
「久しぶりだなぁ、元気にしてたか?」
「大きくなったなぁ!」
「立派なレディじゃないか」
一斉に喋りかけられてあたふたとするが顔馴染みに会えたことが嬉しくてアンは笑顔になる
「みんなも元気そうね!」
「おう!アンも相変わらずだな」
「えぇ、お兄様に会いに来たんだけどいるかしら?」
「ウィリアムならさっき下宿所の裏の広場で見かけたぞ」
「わかった、ありがとう」
ウィリアムの側に行くのが待ちきれなくて、小走りで広場に行くとそこには―――
「お兄様!!」
ブロンドの髪にアンと同じ瞳の色をした男が振り返る
「アン!」
勢いよくウィリアムの首に抱きついた、勢いがよすぎてウィリアムは芝生の上に尻餅をつく
「会いたかったわ!お兄様〜」
「久しぶりだな」
満面の笑みのウィリアムに頭を撫でられてアンの顔はデレデレだ
やばい、にやにやが止まらない!!鼻血がでそ・・・
ウィリアムはアンを立ち上がらせドレスについた葉っぱをはらうと自分のズボンもはらう
「手紙届いたか?」
「もちろん!だから会いに来たのよ!」
アンはずっとウィリアムに抱きついたままで離れようとはしない
ウィリアムに夢中すぎてアンは気づいていないのだ、もう1人その場にいる事に
「お兄様大好きよ!!」
そういってウィリアムの頬にキスをしようとすれば、間に手が挟まれた
「随分親密な兄妹だな」
ため息と声がする方に顔を向けると―――
げっ!!!なんでここにいるのよ!!??
「――――レオナルド様」