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恋のライバルⅢ


「あ〜首がいてぇ」



寝違えたかもしれない首を左右に回すとゴキッと骨がなる音がした



それにしても、レオナルドやばいんじゃないか?俺の予想が正しければレオの先客は・・・



「あら、ジャック様じゃない」



「・・・ミランダ嬢」



廊下を歩いていたら、見知った声が聞こえた。前から現れた女性を認識した途端自然と顔が歪む



「久しぶりね、お元気?」


「えぇ」


「そんなに警戒なさらないでよ、私とジャック様の仲でしょ?」



くすくすと小首をかしげるミランダをジャックは睨み付ける



「今日はなんの用でここに来たんだ?」


「もちろんレオナルド様に会いに来たのよ」



当然でしょ?と馬鹿にしたように鼻で笑うミランダをこれ以上相手にしないとこうとその場を通りすぎるが思わぬ言葉に脚の動きが止まった



「アンっていったかしら?あの子・・・レオナルド様に相応しくないわね」


「・・・なんだと?」


「ふふふ、相応しくないわ」



それだけ言うとミランダはその場を去っていった


ミランダの残していった意味深な言葉をしばらく考えていたら肩をぽん、と叩かれる



「ジャック、そんな所でどうしたの?」


「アン・・・レオナルドに会いに行ったんじゃないのか?」



「あー、えぇ。でも忙しそうだったから帰ることにしたの」



どこか寂しそうに笑うアンにジャックは舌打ちをしたくなった



―――この様子じゃミランダとなんかあったな



「じゃぁ、俺の用事に付き合ってくれよ」


「・・・用事?」


「そうだ、どうせ暇だろ?」



確かに今日はレオナルド様に会いに行く以外なんの予定もないし、レオナルド様とのお茶も無くなったから暇だけど



「いいわ、けど用事って何?」


「ついてくれば分かるよ」



ぐっと手を引っ張られ思わずドキッとした


廊下を真っ直ぐ歩いていくと南京錠がかかっている扉があり、ジャックはその扉の前で足を止めた



「あれ?ウィリアムの奴まだ来てないのか」


「・・・ウィリアムって――」


「あ!いたいた!遅いぞ〜」



後ろを降り向けば鍵を握って走ってくる男性が見えた。その姿を捉えたアンは嬉しさに顔が緩む



「お兄様!!」


「アン!!」


「えぇぇえ!?お兄様って・・・兄妹!?」



感動の再開と言わんばかりに目の前で繰り広げられたアンとウィリアムの抱擁にジャック情けない声をだす



「どうしてここに?俺に会いに来てくれたのか?」


「あ・・・用事があって王宮に来たんだけど、お兄様に会えてよかったわ」



「おーい、取り込み中悪いけどとりあえず鍵をかしてくれ」


アンの頭をよしよしと撫でるウィリアムに呼びかけると、ひどくめんどくさそうに睨まれた


「わかってる、ほら」


「お前口調変わってるぞ」


「いいだろ?幼馴染みなんだし、今はアンと俺と3人なんだから」


たしかにそうだな、と頷くと丁度南京錠が開く



「この部屋はなんなの?」


「入ればわかるよ、少し暗いから足元に気を付けてね」



ウィリアムにエスコートされながら部屋に入る。薄暗く、少し埃っぽい臭いがした


シャーッと大きな音がしたと同時に光が部屋に入り込んだ。ジャックが開け放ったカーテンと窓が眩しくて目を細めればそこには・・・


「すごい・・・、ここってもしかして図書館?」



大きな棚に数えきれない程たくさんの本達が並んでいる



「あぁ、びっくりした?」


「すごい量の本達ね、私こんなにいっぱいの本初めて見たわ・・・」



「それだけ歴史の古い本達が眠ってるってことだな」


「そんな大切な所に私達入ってもいいの?」



心配そうな顔をして周りをキョロキョロするアンにおもわず笑みがこぼれた



「大丈夫だろ。親父からの許可取ってあるし、本当に大切な本はここにはないしな」


「あぁ、そういった価値のある本は我々騎士達が責任をもって管理しているんだよ」



そうなんだ・・・やっぱり王宮だけあって管理がしっかりしてるのね



ウィリアムはアンの頭を愛しいそうにぐりぐりと撫でまわす



「じゃあ俺はそろそろ騎士団に戻らなきゃ」


「え!?せっかく会えたのに・・・屋敷にはいつ帰ってくるの?」


「そうだな・・・まだ最後の任務が残ってるんだ。それが終わったら屋敷に戻ろうと思ってるから、それまで待ってて?」


「―――おい、ウィリアムそれって・・・」



何か言いかけたがジャックは口を閉じた



「ジャックとアンを2人っきりにするのは心配だな、俺の大事なアンに手を出すなよ」


「分かってる」


「じゃあな、アン。気を付けて帰るんだよ」



ウィリアムはアンの頭にキスをするとそのまま去っていき、ジャックはぽかんとした顔でウィリアムの背中を見つめていた



「・・・・お前んとこ仲良すぎじゃね?」


「そうかしら、普通よ。それより手伝いって何?」


忘れてたとでも言うように手を叩くとポケットから紙を出し、それをアンに手渡す



「親父に頼まれてた事は"本探し"。この図書室の中から本を探してきてほしいってさ」



手渡された降り曲がっている紙を開いて見てみると、そこには本の名前が書いてある



「"南の王国と東の諸国"?」


「あぁ、本人はどこにしまったか覚えてないから地道に探すしかないんだ」


「・・・この中から探すなんて丸一日かかりそう」


「本には緑の表紙にドラゴンの絵が書いてある、地道に探してこうぜ」




「そうね、じゃあ私はこっちの棚を探すから向こうの棚をお願い」


「りょ〜かい」




二手に別れて探し始め、1時間ぐらいたった頃アンの集中力はとっくに切れていた


目の前にある本を棚から引っ張り出しては戻しと同じ動作を繰り返していると、見覚えがある少し古い本が出てきる



「―――これって・・・"アーサー王子といばらの姫"だわ!」


それはアンにとってとても懐かしい本だった



王子がお姫様に一目惚れをするお話









ある日森で狩りをしていたアーサー王子は突然の雷と嵐で森に迷ってしまう。帰り道を探してみるが、辺りはだんだん暗くなっていき視界も悪い


ふと真っ直ぐ行った道の先に灯りが見えたのだが、誰かいるのかと叫んでみても返事はない


カサッと地面の草を踏む音が聞こえ、その音がするほうに馬を走らせるとそこには1人の女が立っていた


透き通るほどの白い肌に暗闇でも光り輝くブロンドの髪、青い宝石のような瞳の女に王子は一瞬で恋に落ちた


王子が口を開こうとした瞬間女は走り出す、王子も慌てて馬から降り走って追いかけた


走り逃げる女の腕を掴をつかみ名前を問うが、女は名乗ろうとはしない


王子は手に痛みを感じ視線を下に下ろすと女の腕を握っている手から血が滴っていた


驚いて手を離すと、顔を青ざめた女が一言謝り走り去ろうとした


だが、王子は血が出ているにも関わらず女の腕をもう一度掴み真っ直ぐと目を見つめて問うた


"お前は何者だ?"


王子の真剣な眼差しに逃げるのを諦めた女は名を名乗る



"トヤータ、それが私の名"



トヤータは隣国の第一王女だという


愚かなる隣国の王は自分の欲のために西の外れの森に住む魔女を怒らした


許しを乞う王に魔女は残酷にも呪いをかける


"我を怒らした罪、その身をもって償うがいい。お主の娘はまことに美しい。だが、呪いをかけてやった。その美しい風貌に寄せられてきた男どもを赤き血に染める呪いだ"


透き通るような白い肌に一触れしたら棘が突き刺さったような痛みが走り血が滴る


まるで茨の肌のように



自分の愚かさが回りに知られるのを恐れた王が自分の娘を森の搭に閉じ込めたのだと


トヤータは王子に微笑んだ


"森の出口へご案内いたします。どうか、私の事は内緒にしてください"


トヤータの案内によって無事王都に帰れた王子はトヤータの事を忘れることは出来なかった


あの日以来毎日森に訪れる王子にトヤータもいつしか心惹かれていく、だがこの恋は叶わない


呪いをかけられたこの身で、愛する人を血に染めることなどしたくない


"アーサー様、もうここへは来ないでください。私も二度と搭からでません。誓ってくださいますか?"


"なぜ?私はトヤータを愛しているのだ"


"ですが、私にはアーサー様からいただいた愛をお返しする事ができません。この呪われた身で、忌々しいこの肌で"


"私は君を愛してるんだ。愛しくて、愛しくて仕方がないくらいに。呪いなど関係ない、我々の愛には恐れるものなどなにもない。私は今のままの君を愛している"


トヤータは涙をこぼし、王子は優しくキスをした。するとトヤータの呪いはとけ、そして2人はいつまでも幸せに暮らしていく





魔女にかけられた呪い


肌に触れるものを赤き血にそめる茨の呪い


だが、もしそんな自分を愛してくれる人ができたなら呪いは解かれるであろう


呪いを恐れず手を差し出してくれた王子による接吻によって











「素敵・・・!」



呪われているにもかかわらず愛してるだなんて、なんて一途なの!

私にもこんな事言ってくれる私だけの王子様が現れるといいなぁ

っていうか絶対現れる!!



「・・・何読んでんだ?」


「っ!?ジャ、ジャック!なんでもないわ、なんでもないのよ」



急に喋りかけられビクッとなった体で読んでいた本を隠そうとしたが、それよりも先にジャックに取り上げられてしまう



「"アーサー王子といばらの姫"?お前こんなん読むんだ〜」


「う、うるさいわよっ」


「この本ってあれだろ、呪いにかけられた姫を王子が愛の力でどうにかするって話」



ページをぺらぺら捲りながら少し呆れたように喋る



「ジャックも読んだことあるの?」


「あぁ、一度だけな。お袋がこういうの好きでさ、どこがいいんだか」


「とっても素敵なお話よ!小さい頃からのずっとお気に入りの小説よ」


「じゃあお前もあの王子のセリフ言われたいって思ってるのか?」


「な、な、な、何言ってるのよ!私は別に憧れてなんかないんだからっ!!」


「へーぇ、憧れてるわけねぇ」


「ち、違うってば!」



するとジャックはアンの目の前に片膝をつき、アンの左手を握ると指先に軽くキスをする



「君が呪われていようと私は君を愛してる。愛しくて、愛しくて、仕方がないくらいに愛してるんだ」




レオナルドとは違った漆黒の瞳で見つめられながらもう一度指先にキスをされると、一気に体の体温が高くなる



「姫は私を愛してくれますか?」


顔を真っ赤にしたアンはどうしていいか分からずあたふたと動揺してしまう



「えっ・・・えっと・・・」



ジャックの真っ直ぐな視線に耐えきれず目を左右に泳がせ一生懸命視線をさ迷わせていると、下から笑い声が聞こえてきた



「くくっ!びっくりしたか?」


「ジャック!!あなたねぇ・・・っ」


「そう怒んなよ、アンがかわいかったからちょっとからかっただけだろ?まぁ、最後の方は俺のオリジナルだけどさ」


「もう!ふざけてもこんな事言うもんじゃない!!」



立ち上がったジャックを今度はアンが見上げる形になり、ジャックの肩を手で叩く



「悪い、悪かったよ」


「もう!!」


「機嫌治せよ〜、今度あれだよ、美味しいマカロンご馳走してやるからよ」


「結構よ!!」




〜〜〜!!ドキドキなんかしてない、断じてっ!だって相手はジャックよ、冷静にならなきゃ



ちらっとジャックの方を見れば、にこっと笑って笑顔を作られる



「っ!ていうか、ジャックはここで何してるの?本探しは終わったわけ?」


「あぁ、ちょっと休憩しようと思ってさ。そろそろお茶でも飲もうぜ」


「駄目よ!お茶は本を探し終わってから、ジャックは向こうを探して」


「・・・え?」


「早く!見つけるまでお茶はお預けよ」


「・・・・・・」



ビシッと本棚を指差すアンにジャックはお茶休憩を諦めたのだった





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