恋のライバルⅠ
「ねぇ、今日のレオナルド様のご予定は?」
「本日は王宮内で執務とお伺いしております」
「あら、ここには来ないのね」
ピンクの扇で口元を隠しながらため息をつくとティーカップに手を伸ばす
「最近我が屋敷に通ってくださっていたのに・・・レオナルド様」
レオナルドの事を思いまたため息をつくと側にいたメイドにお茶のおかわりをもらう
「はぁ・・・愛しのレオナルド様、早くあなたに会いたいわ」
机の上にある写真立ての中のレオナルドをうっとりとした眼差しで見つめているとメイドが口を開く
「ミランダ様、レオナルド様は想い人がおられるそうですよ」
「・・・は?」
「その方に婚約を申し込んでいる、と噂を聞きました」
「な、なんですってぇ!?相手は誰なの!?」
鼻息荒く大きな音を立ててティーカップを机に戻すと顔を真っ赤にさせてメイドに詰め寄った
「相手はクウォード男爵家のご令嬢のアン様と聞きました」
「男爵家のアンって・・・!!あんな小娘に求婚だなんて!!レオナルド様は一体何を考えているのかしら!?」
握りしめている扇を床に思いっきり叩きつける
「ミランダお嬢様、落ち着い・・・」
「認めないわ!絶対に!!あんな子のどこがいいのよ!!」
「ミランダ様・・・」
「今すぐに支度をして頂戴、レオナルド様に会いに行きます。そんな噂は嘘に決まってるわ!えぇ、絶対に嘘!」
この前のお茶会でもあの子より私に夢中だったし、あんな子より私の方がずっと美しいもの!
アンとは違い均等に輝くブロンドの髪に水色の瞳
ミランダは急いで馬車に乗り込むと王宮まで行くように命令する。伯爵邸から王宮まではあまり遠くはないのだ
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レオナルドは自身の執務室で仕事をこなしていた。机の上に積まれた大量の書類に目をとうし、別の書類を書き上げていく
いつもとは違い集中して仕事をこなすレオナルドだが、さっきからひとつ気になることがあった
ちらちらと時計を見る仕草を頻繁におこなうレオナルドについにウィリアムが口を開く
「まったく・・・わかりましたよ、そんなに休憩したいならどうぞ」
「は?」
「さっきから時計をちらちら見て、そんなアピールの仕方しなくても休憩なさりたいならそう言ってください」
「そうだぜ、レオ。仕事のしすぎは体に悪い」
ソファーに優雅に腰をかけお茶を飲んでいるジャックにため息をはく
「なんでお前がここにいるんだ?」
「遊びに来たぜ!ほら、お前もこっちに来て一緒に茶でも飲もう」
「別に休憩したいわけではない」
「嘘つけよ、じゃあなんであんなに時計を気にしてたんだよ?」
「そ、そそそんな事お前には関係ないだろ!」
「ははーん、怪しいな」
じろじろ監察してくるジャックにレオナルドは余計にあわてふためく
「ウィリアム!お前は俺の護衛だろ!なんでジャックを勝手に部屋に入れたんだ!?」
「いや、今日は知り合いが来るかもしれないから、来たら執務室に通せと言ったのはレオナルド様じゃないですか」
「う゛!そう言ったが・・・俺の言っていた知り合いはジャックではない」
「じゃあ誰だよ?」
「お前には関係ないだろっ」
3人でもめていると部屋がノックされ、メイドの声が聞こえる
「レオナルド様、お客様がいらっしゃっていますがお通ししてもよろしいでしょうか?」
「っ! あぁ!いや、ここではなく俺の私室に通してくれ。俺もすぐに私室へ向かう」
「俺の事を放っておいてどこ行く気だよ?」
「お前とはいつでも会えるからな、ウィリアムはここにいてジャックの相手をしていてくれ。俺は少し席を外す」
そう言うと速歩きで部屋を飛び出していき、私室へ向かう
「・・・ありゃぁ絶対女だな」
「ですね・・・」