秘密の扉
お風呂に入った後メイドに乾かしてもらった髪を手でときながら、窓辺にある椅子に腰掛け月を見上げる
今日1日の事を振り返っているとズキンッと頭が痛んだ
窓ガラスに写った自分
夜間ドレスの深く開いた襟から覗く消えない傷痕
白い肌に赤い傷は目立つ
―――――小さい頃の記憶
17年間生きてきた中で欠けた記憶がある
ウィリアムに会いに行った王宮で誘拐にあった
幸いすぐに王宮の騎士団の人達が駆けつけ救いだしてくれたらしいが、その時のショックで誘拐された記憶がない
私の体が拒絶する
思い出したいけど、思い出したくない記憶
どれくらいそうしてたんだろう
窓に写る自分を見つめているとドアがノックされた
返事をし、開かれたドアの先にはリリアがいた
「ラベンダーのアロマをお持ち致しました」
「・・・ありがとう」
「これでリラックスして眠れますよ」
ベッドの側にある棚にアロマをセットする
「・・・まだ思い出せないの」
呟くような小さい声にリリアが振り向く
「―――あの時の記憶を・・・無理に思い出す必要はありません、ゆっくりと時がきたら自然と思いしますわ」
優しく微笑むリリアに心が暖かくなった
「そうね―――でも、何かが心に引っ掛かるのよ」
あの時、誘拐された時私は1人じゃなかった
でも一緒にいたのが誰で、何をしていたのか思い出せない
―――その人は・・・
「お嬢様、無理はなさらないでください。体に悪いですわ」
「・・・リリア」
「記憶はいつかきっと思い出せる日がきますわ、・・・それより明日はレオナルド王子に会いに行くんですわよね?」
リリアの言葉で思い出す、昼間レオナルドと交わした約束
「そうだったわ!でででも、今日会ったばかりなのに明日会いに行くのも変じゃない?」
まるで、会うのが我慢できないみたいじゃん
「そんな事はございませんわ、それにレオナルド王子はきっと大喜びなさりますよ」
なんたってアンお嬢様に夢中なんですから
そう言ってパチンと目をウィングするとアンは真っ赤になる
「〜〜〜〜〜っ」
「さぁ、今日はもうお休みになってください。明日は王宮に行かれるのですから」
「まだ行くって決めた訳じゃないわ!」
素直じゃないアンにリリアは苦笑いをうかべた
「わかりましたわ、では私は失礼いたします」
「・・・お休み、リリア」
「お休みなさいませ、お嬢様」
リリアセットしてくれたアロマのおかげでアンはすぐにぐっすり眠ることができた