お茶会Ⅱ
ここにいる意味もないし帰ろうかしら
帰るか帰らないか迷っていると男の人に声をかけられる
「隣に座ってもいいかな?」
うしろを振り向くとそこにはジャックが立っていた
「・・・あ、どうぞ」
「ありがとう、私はジャック・マリアードと申します」
アンの左手をとって挨拶をするジャックをぽかん・・・と見上げたら、くすっと笑われた
はっと我に返って急いで立ち上がり、恥ずかしくて赤く染まった頬を右手で押さえながら自分も挨拶をする
「私はアン・クウォードと申します」
「クウォードと言うと、男爵家の方になるのかな?」
「えぇ、そうですわ」
「初めまして、さっきから1人でお茶を飲んでたからご一緒にと思いまして」
「あ・・・この中に知り合いがいなくて、レオナルド様は他の方とお茶を飲んでいたから1人だったんです」
「そうですか、私も知り合いがレオ以外にいなくて・・・どうしようかと思いましたよ」
大袈裟に肩をすぼめる仕草にくすっと笑みをこぼすと、レオナルドは悪戯っぽく笑う
「あなたは笑っていた方が美しい、さっきまではすごいしかめっ面でしたから」
「えっ!?そんな事ないわよ!」
しまった!つい素がでてしまった!!
恐る恐るジャックの顔を見れば肩を揺らして笑を噛み殺していた
「くくっ、君はおもしろい。どうやら君は仮面を被っているようだな、お互い素を出しあおうよ」
「あなた普段はそんなしゃべり方なの?」
少し呆れて質問すれば、ジャックも呆れたように返事を返してきた
「当たり前だろ?普段から自分の事を私なんて呼ぶ奴いないだろ」
いや、たしかにそうだけどさ。でも君一応大臣の息子でしょ?
「とゆうか、お茶会ってレオは何考えてんだ?」
「さぁ?あの伯爵令嬢の子と仲良くしたいんじゃないかしら」
「だったら2人でお茶しろよ。俺らいらなくね?」
うん!その通り!
あれ?でもなんかもやもやする・・・
「あいつ最近ミランダと仲いいんだよ。ここ一週間毎日会ってたな」
「・・・え!?」
アンの眉間に皺がより、一気に不機嫌になる
「2人でイチャイチャしちゃってさ見てるこっちが恥ずかしいぐらいに」
・・・ふーん。そういう事ね。屋敷に来なくなったと思えば他の女に乗りかえたわけね?最っ低!!!
怒りでわなわなと震えていると、アンとジャックの前に人影ができた
顔をあげてみれば、そこにはレオナルドとミランダが立っているではないか
「こんにちは、私ミランダと申しますの。あなたは?」
レオナルドと腕を組み体を密着させた状態で挨拶してきたミランダに、ひきつりそうな顔で必死に笑顔を作りぬく
「私はアンと申します、今日は招待していただいて光栄ですわ。王子様」
レオナルドの眉がピクッと揺れ、ジャックを睨み付ける
「2人は随分と仲がいいんだな」
「あぁ、アン嬢とは気がとても合うんだ。レオとミランダ嬢みたいだろ?」
視線をアンに向ければもはや笑ってはいなかった
「そうですわね、お二人はとてもお似合いですわ」
「なっ・・・」
「お邪魔な私達は帰りましょうか、ジャック様送ってくださる?」
「あぁ、喜んで」
アンの手を取ろうとするジャックより先にレオナルドはアンの手をとるが豪快に振りほどかれる
「王子様、ミランダ様の前で他の女性の手をとるなんてミランダ様に対して失礼ですわ」
レオナルドの眉根の皺は一層濃くなりアンを睨み付ける
「・・・わかった。では俺はミランダを送って行こう」
ミランダに向かって喋りかけてるのに視線はアンに向いたままだ
「まぁ!嬉しいですわ」
可愛く小首をかしげるミランダは勝ち誇ったような顔でアンを見下ろすが、アンはレオナルドを睨みっぱなしだ
「今日はご招待ありがとうございます。とても楽しかったわ、王子様。では失礼いたします」
レオナルドの横を大股で通り過ぎていくアンをジャックはぽかんっとした顔で見ていた