婚約破棄された令嬢が市民体育館や釣り堀や公園にいる教え魔コーチと出会った話
「婚約破棄だリーザ!俺は従姉妹のミミリーと婚約をするぜ!」
グスン、あんなに尽くしたのに、婚約破棄をされましたわ。
しょんぼり公園を歩いて・・・
「やってられませんわ!」
思わず扇を木に打ち付けましたわ。
あら、やだ。私ったらはしたない。扇も壊れてしまいましたわ。
「木さん。ごめんなさいですわ」
すると。ゲスな笑い声が聞こえましたの。
「グヘへへへへへへ!お嬢ちゃん。良いセンスしているね」
「扇子?」
小太りの中年。眼帯をはめて髪の毛は黒、肌は濃い。少数民族かしらね。
「だけど、訓練してない。フックはこうでなければ、脇を締めて素早く。こう、こう」
シュ!シュ!と音がしますわ。
「えっ・・・・」
「リピート!リピート!アフターミー!」
「は、はい!」
小時間フックを習ったわ。
何かすっきりしたので、翌日も公園に向かう。
「ヘイ、マイガール!デンデン太鼓!デンデン太鼓!連打はデンデン太鼓ね!」
「は、はい!」
「ミット打だ!」
「はい、はい!」
「よお~し。グッドガール!ランニングをしよう」
「はい、ですわ」
街中を走る。おじ様は鉄の馬のような物に乗っていますわ。
「はあ、はあ、はあ」
「シャドー!シャドー!はい」
街中の人は、面白げに見たりするわ。
「クス。婚約破棄された子爵令嬢のリーザ様じゃない?」
「キャア、恥ずかしくて頭がおかしくなったのね」
「ヘイ!そこの馬面女と髪型モンブラン、マイガールを馬鹿にするなよ!」
「ヒィ、何ですって!」
「これは、最新の髪型ですわ!」
「これでも喰らえ!」
ブゥウウウウウーーーーー!
「「キャア!」」
「く、臭い・・・」
「お前らの心はニンニクの屁くらい臭いんだよ!」
おじ様は下品なりに私の事を想って下さるのね。
そんなことを毎日続けましたわ。
お父さまも心配してくれるわ。夕食の時に婚約破棄の話合いの進捗状況を教えてくれたわ。
「リーザ、ダミアン君の家に話合いに行くのだが・・・一緒に来てくれないか?」
「分かりましたわ」
「まあ、リーザ、お肉は?」
「今、ベスト体重にしておりますの」
「ワーイ、姉上頂戴!」
「こら、カールはしたないわ」
「ゴホン、こちらは子爵家だ。出向けと言われたのだ。すまない」
「ええ、全然良いですわ」
それから2月が流れましたわ。
「はあ、はあ、はあ」
「マイガールよくやったね」
「はい、有難うございます」
「あ、おじ様!」
するとスゥーと消えたわ。あれは何だったのかしら。もしかして、精霊?
あら、今日はダミアン様の家での話合いの日だわ。
「走って行こうかしら」
街中を走ると、歓声があがるわ。
「お嬢様、負けるな!」
「はい、オレンジ」
「有難うございますわ」
「お嬢様の走りを見なきゃ始まらないな」
「「「「ワー、ワー、ワー」」」
子供達が追いかけて来る。
「フフフフフフフ」
私は両手をあげて後ろ走りで子供達の歓声に応えたわ。
「お姉ちゃん頑張れ!」
「やれー!お姉ちゃんなら出来る!」
「有難うございますわ」
ダミアン様の屋敷に着いたわ。
「リーザ、どこに行っていた。今何をしている。高速で左右に動いているが・・」
「お父さま、ごめんなさい。フットワーク!」
シュン、シュンと地面を蹴る。
「・・・一体どうしたのだ?」
すると、ダミアン様とミミリー様がロビーにいた。前にメイドと従者がいるわね。
「おい、リーザ、遅いぞ!」
ダミアンの声で頭の中にカーンと響いたわ。
シュン!シュン!
フットワークで使用人達の間をすり抜け。
「ヒィ、何だ!」
「キャア」
ボディージャブ、ジャブ、ストレート、フック。
「お、ウゴ、ハガ・・や、やめ・・ろ」
「いいえ、やめませんわ。私だって好きで婚約をしたわけではございませんの。
ダミアン様、好きではなかったですわ。でも、歩み寄ろうとしましたわ。でも貴方は歩み寄りをしなかった。いつも従姉妹と遊んで・・・」
「ウゴ、話ながら・・・殴るな」
「いいえ。やめませんわ。ダミアン様が笑われたら私は庇ったのよ。
ダミアン様が失敗しないように一生懸命に生徒会の準備やパーティーの準備もしましたのに・・」
「ハガ、ウゴ・・・」
それから、私は思いっきりしゃがんで・・・
「スーパーウルトラアッパー!ですわ」
アッパーをしましたわ。下から顎を打つ技ですわ。
ダミアン様は海老反りになって床に落ちましたわ。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「ヒィ、・・・」
ミミリー様は気絶しましたわ。
「あら、本当に気絶しておりますか?試してみますわ。その壺をぶつけて・・」
「キャアアアーーーー、ごめんなさい!」
走って行きましたわ。
一ランド1分34秒KO勝ちですわね。
「フン!」
「フンじゃーねえよ」
「良くも坊ちゃんを!」
「あら、やりまして」
と使用人達にすごんだら。
パチパチと拍手が起きましたわ。
「やあ、素晴らしい技術だ。これは?」
「拳闘ですわ」
「ほお、詳しく聞きたいな」
あれは生徒会の王子殿下だわ。
「学生として話合いの場所に来たのだよ。婚約破棄の現場は学園だからね。掌握しておきたいと思ったのだ」
「殿下!リーザ嬢は暴力を働きましたぞ」
「ほお、伯爵令息が、子爵令嬢に負けたと?」
「う、うぐ・・・」
ダミアン様のお父様は黙りましたわ。
結局、このボクシングは幻に終わりましたわ。
私は。
「ダミアン君の代わりに生徒会に入ってくれ。いつも、君が資料をまとめていたのは知っていたよ」
殿下から懇願されましたわ。
「は、はい」
「エスコートしても?」
「はい、キャ」
今はとても幸せですの。
あの公園の不思議な木は謎ですわ。魔道師が調査をすると言っているわね。
☆☆☆
「畜生、リーザめ。俺もあの木に行くぞ・・・」
俺はダミアン、女に負けたと噂をされている。
だから、公園の木を片っ端らに蹴る。
黒髪の精霊を呼び出すのだ。
やっと、黒髪が出てきた。頭はパチパチと、金髪だが根元が黒髪で長髪の奴だ。
「おい、精霊よ。我に何かを授けよ」
「おい、何を黙っている!」
「兄ちゃん。うちの看板に何、蹴りをくれているのさ」
「はあ?看板?」
「ちょっと事務所に行こうか。おい、源氏、こいつホストに沈めようか?」
「チース、顔はイイッスね」
「えっ・・・ちょっとどこに連れて行く!おい!待て!誰か助けてぇ~!」
・・・・・・・・・・・・・・・
ダミアン様は行方不明になったわ。
学園生徒会としてもやることはあるわ。
「リーザ、宮廷魔道師の調査だと、公園は異世界につながっているそうだ」
「殿下、もしかして、私は・・・」
「ああ、良い精霊と悪い精霊がいる。君は良い精霊に出会ったのだ。王宮としても公園を封鎖するか迷っている」
「まあ、そうですの」
「会長、ダミアン様が見つかりました」
「何?」
すっかり顔つきと性格が変わっている。変なスーツを着て髪を伸しているわ。
「チース、チース、チース」
と変な挨拶を連発し。
飲み物を飲むときは。
「ジャンジャンジャンバリバリ!」
変なかけ声を連発するわ。
マダムを見かけるとかけより。
「チース、素敵なお嬢様、お名刺をどーぞ」
「ヒィ、何?私は伯爵夫人ですわ。歳が・・・」
「素敵な恋に歳なんて関係ないさ・・・」
「馬鹿者、妻を口説くな!」
修羅場になっているらしい・・・
私は空を見上げる。大空一杯に眼帯をつけた岩石のようなおじ様の顔が浮かんだわ。
『コーチ、私、もう、迷いませんわ』
心の中でつぶやいたわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




