狂信者の行進
婚約破棄に見せかけた…………です。
今日は晴天なり。
海は穏やかで、風も爽やか。
今日は私、公爵令嬢と、婚約者の第一王子殿下との婚約お披露目パーティが開かれる日でした。
……でした。
というのも、私と殿下の仲はそれほど良いものではなく、所謂政略結婚でした。
今より数ヶ月前から、彼は私とは違う令嬢を伴う事が増えました。
彼の友人だとか、幼馴染だとかの立ち位置にいる女性らしく。
私とのお茶会などの交流はどんどん無視されていきました。
そして今日も彼は彼女を伴い登場したのでした。
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今日は晴天なり。
海は穏やかで風も爽やか。
目出度き日には良い天気でした。
私は兄にエスコートされて入場し、殿下は良い仲だと噂される令嬢をエスコートして入場してきました。
そして婚姻調印のその場で、彼は私との婚約破棄を告げたのです。
よく物語である様な、真実の愛がなんたらの、稚拙な不貞の告白でした。
私は彼に問いました。
何故今なのかと。
王命で課せられた婚約を破棄する事の意味合いを。
婚約破棄の撤回の是非を。
この場には私達を祝福する為に集まった人々で一杯でした。
そして、どうしてこの場でそのような事をなさるのかと。
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今日は晴天なり。
海は穏やかで、風は爽やか。
私は今まで、次期王妃となるべく、色んな行事に参加し、領地視察をし、礼拝も行い、孤児院への寄付も欠かさず、課せられた政務も熟してきました。
厳しくも優しい王妃様による教育も日々邁進していたはずでした。
それなのに、今日という日を迎え、その全てが空言となったのです。
そして最後に彼に問いました。
婚約破棄を覆す事は本当にないのかと。
彼はない。と言い切りました。
そして私は私の終わりを知ったのです。
私は私の終わりを認めたのです。
私は海が見通せるテラスの桟橋に身体を委ねます。
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今日は晴天なり。
海は穏やかで、風は爽やか。
私はこの国の王妃教育の秘奥をおさめております。
王家に嫁げぬ私は毒杯を賜る事になるでしょう。
毒杯は苦しいので、母なる海に身を委ねる事で禊と致します。
皆様、今までありがとうございました。
と、私は最後の言葉を告げました。
そして私の身体は海の広がる崖下に落ちていきました。
誰も止めようがありませんでした。
そして誰も知らなかったのです。
私の身にとあるギフテッドがあった事を。
私も自分のギフテッドがどうあるものか、どう使うものであったのか知る間もなく。
ゆらりゆらりとその力を解放していたのでしょうか?
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今日は晴天なり。
海は穏やかで、風は爽やか。
父も母も涙を流しました。
兄も涙を流しました。
陛下も王妃も涙を流しました。
色々な方が涙を流しました。
お前1人で行かせるわけがなかろう。と父が私の後を追いました。
傍らには母も、えぇえぇと頷き共に追いました。
兄も両親に倣い飛び込みました。
陛下も王妃も私を褒めてくださりながらテラスから落ちていきました。
婚約者として生きる日々の中で、私に助けられたという、私に恩義を感じて下さった方々も彼らに続きました。
そして王の忠臣たる方々もそれに続きました。
誰も止めはしませんでした。
止めるはずの騎士達でさえ、主を追うように落ちていきました。
その列はどんどん長くなっていきました。
そして現状に耐えきれなくなった殿下や令嬢も、混乱の最中、落ちていきました。
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今日は晴天なり。
海は穏やかで、風は爽やか。
その国からは誰も居なくなり、繋がれた牛馬は飢え、自由になった家畜だけが、餌を求めて四方八方へ分かれていきました。
崖下には屍が積み重なっています。
が、そのうち天候が崩れたりで、荒波に攫われたり、海鳥や魚達が私達を、彼らを、散り散りにしていくのでしょう。
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今日は晴天なり。
海は穏やかで、風は爽やか。
町は静かで、賑やかな飾り付けだけが風に揺れていました。
それは物悲しく揺れて、いつかは朽ちていくのでしょう。
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今日は晴天なり。
海は穏やかで、風は爽やか。
それはいつもとなり、日常となり、過去となり、静かに静かに消えていきました。
狂信者の行進
終
狂信者の行進と仮名してますが、レミング自体は旅鼠と呼ばれてて、集団で新天地を探すらしく、元々は何処かの都市伝説があり集団〇〇するという誤認?からくるもののようでした。
ギフテッドについては小噺の方に書いてあります。




