4【完結】
「逃げろ!」
弾かれたように走り出す。
出口を追手に塞がれた。
城の周りの回廊をひた走る。
わかってる。
この道が続いているのは城の頂上、行き止まり。
ヒールはとうに脱ぎ捨てた。
ドレスもとうに裂いてしまった。
ここにいるのはまやかしでできたお姫様ではなく、
ただの私自身。
喘ぎ喘ぎ回廊を登り、それが途切れるところまで行きつく。
わたしはいま。
螺旋の貝の頂上まで登ってきたのだ。
随分と高いところまで来たものだ。風がびゅうびゅうと髪を頬を打つ。
視線のはるか下。
城を支える崖の下に海が広がっている。
荒息のもと、驚いたように眼を見張った男の顔が脳裏を過ぎる。
ごめんね。
貴方を殺した。
人生で初めて愛した他人をこの手で。
だから、せめて。
貴方と一緒に私も行こうか。
妹がじつはもう生きていないのだって気づいてる。医者も呼んでもらえずに死んだ妹が、埋められるところ。跡をつけてこっそり見ていた。
妹は依頼人に殺された。だから、これは私なりの復讐だ。
警備の兵隊が追いついて私を取り囲む。
じりじりと距離を詰めてくる。
私は口を開く。
「依頼人はーーー。」
なぜ下手人が依頼人の名を漏らすのか。
そうやって戸惑いざわめく人々を見つめる私は、満足感で一杯だった。
さあ、これでよい。
妹を殺した人間だ。
さっさと社会的に死ねばいいのだ。
「早く向かったほうがいいんじゃないの。あの糞野郎を捕まえてよ。」
貴方を殺したのは全てこの瞬間のため。
私は私の復讐心に、貴方を利用したんだ。
私を囲んでいた人のうち、数人がばらばらと走り去る。
それを満足げに見届けて、私は手摺から身を投げた。
身体の内側に浮遊感を感じる。
どこまでもどこまでも落ちてゆく。
きらきら光る水面がだんだんと近づいてくるのが分かる。
私はそっと眼を閉じた。
続きは書くかもしれないし、書かないかもしれない。
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