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螺旋の貝  作者: KaJyun
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2


 それから少女は幾人かの男と踊った。


 一人目はダンスが下手で、事あるごとに足をぶつけてきた。

 二人目は口下手で、黙っていた。相手が話さないので、少女も黙っていた。

 三人目は会話もダンスも申し分なかったが、ダンスにかこつけて胸を触ってきたので、最後まで踊らずに逃げ出してきた。


***


 少女は庭園にいた。

 噴水の縁に腰掛けて、物思いに沈んでいる。

 白い肌が暗闇に照らされていた。


 木々に吊るされた灯りが幻想的な眺めを醸し出す。

 少女は、これまでのこと、これからのこと。そして、自分に課された任務について考えた。彼女はどうしてもそれをやり遂げなくてはならなかった。


 背後からの気配に振り向いた。

 「またお会いできましたね。」

 最初に踊った男だ。


 少女は顔を赤らめた。

 「さきほどはどうもありがとう。おかげで助かりました。」


 「それほどでもありません。」


 いまや、互いに惹かれあっているさまがはっきり見てとれる。他人の眼など気にしていられなかった。


 「ホールで食事が供されています。何か口になさいましたか。」

 「いいえ、まだ。」

 「鶏の香草焼きが大層美味です。シェフのお得意ですから。」

 「そうなのですね。まだ残ってるかしら。」


 少女は男の腕にするりと自分の腕を絡めた。城と庭園を隔てていたガラス扉を抜けて広間に戻る。


 彼が姿を現すや否や、侍従が駆け寄ってきた。

 「ああ、王子!ここにおいででしたか。」


 侍従は男を王子と呼んだ。

 少女は、底なしの暗がりに転落していくような気がしていた。


***


 少女は暗澹とした気分だった。


 男は懸命に話し掛けたが、何を聞くにも生返事。どこか遠くを見ているようだった。 


 「どうかしましたか。なにか心懸かりがおありでしょうか。」たまらず男は尋ねた。


 「ごめんなさい。」

 少女は虚な眼で呟いた。

 「十二時には帰らないといけないの。」


 なおも男は食い下がった。

 「たしかに、あまり遅くなると御家族も御心配なさるでしょう。誰かを供につけて送らせましょうか。」


 時計の針は、十一時五十八分を指していた。

 「ねえ、あなたは王子なんでしょう。」


 「はい。」

 少女の頬に水滴が一筋垂れる。

 「あなたが王子じゃなきゃよかったのに。」


 発砲音がした。


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