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メディアの覇者たち ―20年後に明かされる買収劇の真実―

作者:智有 英土
二十年前、日本のメディア界を揺るがす大事件があった。親会社よりも巨大化した子会社――その歪んだ企業構造を前に、ひとりの若き起業家が直感を抱いた。「親会社を押さえれば、テレビ局ごと手に入る」。その着想はやがて、メディアの覇権をめぐる熾烈な攻防へとつながっていく。
主人公・鳳谷隆真は、東大を中退して設立したIT企業をわずか数年で上場させ、時代の寵児と呼ばれる存在となった。世界一を目指し、買収を繰り返す中で目にしたのが、子会社にテレビ局を持つラジオ会社だった。矛盾した構造に魅せられた鳳谷の心に、漠然とした野望の火が灯る。だが資金力の壁に阻まれ、その火は一度は消えかける。
そこへ現れたのが、投資家・紫垣正吾である。物言う株主として知られ、巨額の資産を操る彼は鳳谷に告げる。「私はすでに株を二割持っている。君がさらに三割を買えば、支配権は手に入る」。その言葉が、鳳谷の迷いを一気に打ち砕いた。ここから、彼の野望は現実の作戦へと動き出す。
一方で、テレビ界の重鎮・冷泉久志は長年の悲願を胸に秘めていた。二十年以上を費やし、テレビ局をグループの頂点に据えるべく、すでに千七百億円を超える資金を準備していたのだ。冷泉にとってそれは単なる経営判断ではなく、人生そのものをかけた「正義の戦い」であった。
株の争奪戦は熾烈を極め、公開買付けと時間外取引という手法がぶつかり合う。二月のある朝、わずか二十八分の攻防で鳳谷と紫垣は三割の株を押さえ、ついに筆頭株主に躍り出る。だが冷泉の怒りは烈火のごとく、即座に反撃が仕掛けられる。融資の凍結、契約の破棄、裏での圧力。若き経営者は巨象の逆襲に翻弄されていく。
さらに、影の力が鳳谷の前に姿を現す。「負けを認めろ。怒らせれば未来は閉ざされる」。謎の男の警告は不吉な影を落とし、やがて現実のものとなった。買収劇とは別件として企業本社への強制捜査が始まり、鳳谷は突如として逮捕される。表向きは経済事件。しかしその裏に、冷泉の怒りと、権力を守ろうとする深い闇が横たわっていた。
物語は現在へと戻る。事件から二十年、ジャーナリストが関係者を訪ね歩き、真相を追う。果たしてあの騒動は、単なる経営者の暴走だったのか。それとも、メディアの未来を左右する闘いだったのか。正義と正義が激突したあの時代は、現代に何を残したのか。そして「覇者」となったのは誰だったのか。
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