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土屋の家で

 夕方の高円寺の住宅街・・・。

その一画に相続で引き継いだ土屋政人の自宅がある。

家は古いが外見はしっかりとした山の手造りである。

その玄関前の道路に黒塗りの大型のワンボスカーが停まっている。

フロントガラスの右サイドにはタコの様な『衆議院のマーク』が貼ってある。

パトロール中のバイクの巡査が、「駐禁の警告シール」を貼ろうと車の周りを一周するが、タコのシールを見て貼らずに行ってしまう。

 巡査が去ったのを見計らって、土屋は玄関から心配そうに表に出て来る。

後に玲子(政人の姉)も出て来て、二人で車の周囲を一周する。

玲子が、

 「知らないわよ。この辺取り締まり厳しいんだから」

 「この車に駐禁を貼るオマワリがいたら会ってみたいよ」

 「駐禁は駐禁じゃない」

 「だって、オヤジは『公安部会の副会長』だぜ」

 「そんなの関係無いわ。邪魔はジャマ! 犬にオシッコをかけられるわよ」

 「しょうがねえだろう。運転手が消えちまったんだから」

玲子が驚いて、

 「運転手が消えた? ナニそれ」

 「ネエちゃんに言っても分かんねえよ」

 「大丈夫なのその会社? 政人もその内、消されちゃうんじゃない」

 「・・・とにかく明日は絶対に四時に起こしてよ。群馬までこれで行くんだから。あッ! そうだ。姉ちゃん時々この車見に来てよ」

 「冗談じゃないわよ」

 「頼むよ~。この車が無くなったら俺、本当に消されちゃうんだから」

 「じゃ~、車の中で寝たら良いじゃない」


 翌朝・・・。

各部屋の目覚ましが一斉に鳴り響く。

義夫(玲子の婿養子)が布団から飛び起きる。

 「!・・・夢か。あ~、怖かった。?・・・何だいこの目覚ましの音は」

義夫は頭の上の目覚ましを止め、時間を見た。

 「・・・四時? 誰だよこんな時間に合わせたのは」


 台所が騒がしい。

土屋は鏡の前でネクタイを締めている。

玲子が、

 「朝ご飯、食べて行きなさいよ」

 「・・・うん」

 「前橋の営業所には何時に着けば良いの」

 「八時半・・・」

 「当分帰って来られないのかしら」

 「・・・うん」

義夫が眠い目を擦りながら台所に来る。

 「マサちゃん、随分早え~なぁ」

 「出張だよ、出張ッ! 運転手が消えちゃたからさ。ッたく、まいっちうよ・・・」

 「消えた? 格好良いじゃん。マサちゃんの仕事って小説みてえ。消されたんだ」

 「よく分かんねえ」

 「その仕事ってヤバくね?」

 「ただの営業だよ」

土屋は腕時計を見る。

 「あッ、ヤッべ~。こんな時間だ」

熱いお茶を一気に飲み込む土屋。

 「アッチ~ッ! 何でこんなにアッチーんだよ」

玲子が呆れた顔で、

 「バカみたい」

土屋は意を決して、

 「よし、出撃だッ!」

台所を出て玄関に走る。

玄関で昨夜磨いて置いた革靴を一拭きし、

 「行きますッ!」

元気良く玄関のドアを開ける。

玲子が、

 「車、気をつけてね。いってらっしゃ~い」

 玲子が台所に戻とテーブルの上に土屋の忘れたライターが。

 「あッ、マサ~ッ! ライター、忘れもんだよ~」

新聞を見ていた義夫が、

 「おッ? マサちゃんタバコ始めたの」

 「違うわよ。いいからアンタ、早くこれ車に持ってって。大切な『仕事道具』なんだってから」

義夫は感心して、

 「へ~え、ライターがシゴト道具かあ。今度はタレントのマネージャーでも始めたか? 何かマサちゃんの仕事って興味あるな~あ」

義夫は土屋の乗る車にライターを持って行く。

                          つづく

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