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また秘書が消えた

 財務省の正門階段を、結城と土屋が走って下りて来る。

結城がタクシーに乗り込む。

土屋も後を追いかけてタクシーに飛び込む。

結城は焦りながら、

 「林さんわりーッ! 次、国交省お願い!」

 「はい」

結城は土屋を見て、

 「何時だ」

 「十時五十分です」

結城は改まって、

 「・・・土屋ッ」

 「ハイ!」

 「・・・マッチはよせ」

 「ハ?」

 「あんな偉い人の前で居酒屋のマッチでチャッチャやられたらウチのオヤジが凄く貧相に見られる」

 「あッ!・・・ハイ」

 「ああ見えても一応は財務の副大臣に指名されてるんだからな」

 「すいません」

結城がボソッと一言。

 「そうは見えないけどな・・・」

土屋が、

 「あの、僕、タバコはやらないもんで」

オマエに『秘書の三点セット』を教えてやろう」

 「エ? そんなモノ有るんですか?」

 「覚えて置けよ。ライター・クツ・ベルト! なんぼ銭が無くても見える所には良い物を! 格好良くな」

 「なんかホストクラブみたいですね」

 「なに?」

 「え? いや、ハイ! 勉強になります」

 「おい、松永に電話」

 「ハイ!」

土屋はポケットからスマホを取り出す。

 「もしもし、土屋です」

松永の声がスマホから漏れる。

 「あッ、土屋さん? お疲れさまです」

 「こちらこそ」 

「こちらこそ」の土屋の妙な電話の応え方に松永が、

 「は?」

土屋が、

 「これから国交省に行きます。何か有りますか?」

松永は咳払いをして、

 「ヴン! それが十三時からの『国防を考える会』ですが本人に確認した所、やっぱり『出席せず』です。それとちょっと結城さんに代ってくれますか」

 「ハイ、ちょっとお待ち下さい。・・・結城さん、松永さんが」

結城は土屋のスマホを見て、

 「オマエ、良いのを使ってるな・・・。14か?」

 「いえ、16のプロマック・スプラスです。レンズが三つですから。高いですよ~」

 「ちょと見せみろ」

松永の声、

 「もしもし、結城さん。モシ・・・」

結城はスマホを耳にする。

 「聞こえてるよお。どうした」

 「混線したかと思いましたよ」

 「コンセン?」

松永は焦った口調で、

 「あの、青木さんと連絡が取れないんです」

 「取れない? ・・・誰が運転してるんだ?」

 「本人(代議士)みたいです」

 「ホンニン?」

 「ハイ。さっき連絡を取ったら本人(金井代議士)の声で『ウルサイ、運転中だ』 って言ってました」

結城は驚いて、

 「え~えッ! で、十一時十五分の陳情団は?」

 「会館に待たせてあります」

結城は舌打ちをして、

 「チエッ、・・・またか・・・分かった。すぐ戻る」

結城はスマホを土屋に渡し、呆然としている。

土屋が、

 「どうかしたんですか?」

 「林さん! わりいけど議員会館の第一に変更してくれる?」

 「え? ・・・はい」

土屋が心配そうに、

 「何かったんですか?」

結城はため息まじりで、

 「また、居なくなった」

 「イナクナッタ?」

 「運転手だよ」

 「えッ! 青木さんが?」

 「あのオヤジには困ったもんだ。あの性格は一生、治んねえな」

 「で、今は誰が運転してるんですか?」  

 「本人だよ~、ッたく。また車ん中で『魚売り』でもやったんだろう。おい、計画は変更だ。オマエは十三時の党本部! 俺は陳情団を連て国交省に行く。それから十八時の勉強会(岸田先生の財政研究会パートツー)はオマエが代わりに行って来い。俺との同行は今日はこれで終わりッ! ほんとに面倒見切れね~よ、あのオヤジは」

 「アノ~・・・」

 「何だ!」

 「その間、僕は」

 「そんな事は自分で・・・」

結城は土屋の顔をニラんで溜め息を吐き、

 「・・・中堅のゼネコンでも廻って『当選の挨拶』でもして来い」

 「え~? 僕、会社の場所が分からないですよ~」

結城は土屋をキツイ目でニラみ、

 「本屋で四季報でも買って来いよ」

 「シキホウ?」

 「オマエそんな事も・・・。アイポン16のグーグルで調べればみんな出てるよ」

 「あ~、そうか。・・・分かりまた」

土屋は心細そうに答える。

                          つづく

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