表彰状
後日、新庄と古橋、堀田の三人は校長室に呼ばれ、何故か表彰を受けることになった。
理由は学校の美化に貢献したとして、自発的なドブ掃除が認められたからである。
「いや……そういうつもりじゃなかったんだけど」
新庄は最初そんなことを言っていたが、改めて表彰を受けるとなると、やはり嬉しさが勝った。
三人は緊張しながら二階堂校長の前に並び、順番に表彰状を受け取る。
「ありがとうございます!」
深々と頭を下げてお礼を言った三人は、軽やかにステップを踏みながら自分の教室へ戻った。
「まさか表彰されるとは思わなかったな~。運動靴が見つからなかったのは残念だけどさ」
「だよねぇ。ホント、どこに落ちてたんだろ?」
「やっぱり捨てられたんだと思うよ。ポツンと片方だけ落ちてたら、誰かが拾ってゴミ箱に入れてもおかしくないし」
「けっこう時間が経ってるからねぇ。力になれなくてゴメンよ」
「いいよいいよ。探してくれただけでも嬉しいし」
堀田はエヘヘと笑顔を浮かべた。
「そういや、しもっちの運動靴はどうなったの? ちゃんと返した?」
「……ああ、あれはねぇ」
――堀田の話はこうである。
保健室で拾った運動靴を下沢に返そうとした堀田は、次の日の休み時間に声を掛けた。
最初はムッとしていた下沢だったが、自分が失くした運動靴を見ると目を丸くして驚いた。
「これ……どこにあったの?」
「保健室のベッドに下に落ちてたんだよ。たまたま見つかったんだ」
「わざわざ返しに来たの? もういいのに」
「えっ、もういいってどういうこと?」
「新しいの買っちゃったんだ。片方だけだと困るし」
「そうなんだ……じゃあもういらないってことだね」
下沢は残念そうな堀田を見て、しばらく腕組みして考え込む。
「トモ君(堀田のこと)は、僕と靴のサイズって同じだよな」
「そうだっけ?」
「うん、確かそうだよ。運動靴の片方をトモ君も失くしたんでしょ、それなら僕のをあげるよ。そっちは右足が残ってるみたいだから、僕のは左足だしね」
「なんで知ってるのさ?」
「分かるよ~。しんちゃん声がデカいんだもん。三人が話していることは、ちゃんとこっちにも聞こえてるし」
――実は新しい運動靴を買ったのは堀田も同じだが、その件については黙っていた。
下沢の優しさが、なんとなく嬉しかったからである。
「……じゃあ使おうかな。めちゃくちゃ汚れてるけど」
「うっさいな。洗えばいいでしょ、洗えば!」
「そういや、最近発売された漫画って買った?」
「まだまだ。ここって田舎だからさ~、発売が少し遅れるんだよね」
「僕は手に入れたよ。昨日さ、車でショッピングモールに行ったら、たまたま置いてあったんだ。今日は家に来て一緒に読むかい?」
「嘘だろ!? もちろん行く!」
……そんな感じで二人は仲直りしたらしい。