昆虫の王様
――そして一行は荷物を持って昆虫採集のスポットへ向かうと、まず最初に設置したライトを点灯してしばらく待つことにした。
「あっ! バナナに誘われたコクワガタガいるよ」
下沢は樹皮に張り付いていたコクワガタを捕まえ、新庄と古橋に見せた。
【コクワガタについて】
全国で最もよく見られるクワガタの一種で、小型で細い体型をしているのが特徴。
日中は樹皮の裏や土の中へ隠れていることが多く、夜になると活動的になるため、ゴールデンタイムである午後7時以降に探すのがオススメ。
「おお~、けっこういるんだね」
「光に誘われてもっと来ると思うよ。これはメスだけど、オスも探してみようか」
こうなると俄然やる気になった三人は、虫取り網を構えて他の虫を探そうとする。
「いたっ! さっきよりもデケェぞ」
ライトの光に誘われたのか、地面をモゾモゾと歩いていたクワガタムシを古橋が捕まえる。
「これはっと……やったね! ミヤマクワガタのオスだ」
【ミヤマクワガタとは】
クワガタムシの仲間内でも大型種であり、オオクワガタに次いで人気の高い個体である。
ミヤマは「深山幽谷」から名付けられ、深山とあるように山地に多く生息するクワガタムシとして有名。
「でもオオクワガタじゃないんだ……」
「そんな簡単に見つかるもんじゃないよ。運だよ運」
「こっちも探してみようぜ。木の皮の裏とかにも隠れてるかもしれない」
新庄は目を凝らしながら樹皮の裏などを観察してみると、懐中電灯の光に反応してササッと隠れた虫を発見した。
「見つけたっ! 木の皮の裏に一匹いる」
下沢は持っていたボールペンを新庄に手渡す。
「これで掻き出せそう?」
「ちょっとやってみる!」
新庄はボールペンの先で樹皮を剥がしてみたが、先ほど見つけた虫は、すでに何処かへ逃げてしまったようだ。
「ちくしょ~!」
「なんだよしんちゃん、俺はミヤマクワガタ捕まえたのに」
「うるっさいなふるちん。自慢すんなっつーの」
新庄は大きく頬を膨らませ、諦めずに再び周囲の樹木を探し始める。
「クワガタだけじゃなく、カブトムシも捕まえたいよねぇ」
「そういや見ないね。ここにはいないのかな?」
そんな話をしていると、裕翔が「あそこ、あそこ」と言いながら木の上を指差す。
「どした?」
「あっ! あそこにカブトムシがいるよ」
新庄と下沢の二人は顔を上げて木の上を見ると、高い場所に張り付いていたカブトムシを発見する。
「うわ……あそこじゃ虫取り網でも届かないかも」
「矢島先生なら届くかな? 先生! ちょっと来てください」
「どうしたどうした?」
「あそこにカブトムシが張り付いてますけど、虫取り網で捕まえられますか?」
「よし、そいつを貸してみろ。下から懐中電灯で照らしてくれ」
矢島先生はそう言うと、木を少しだけ登って、頭上にいるカブトムシを捕まえようとする。
「もう少し……右、いやもうちょい左」
「あっ、落っこちそうです。下で受け止めてください」
新庄と下沢にアドバイスされ、矢島先生は木から落ちたカブトムシを虫取り網でキャッチした。
「やった~!」
「ナイスキャッチ!」
矢島先生は網からカブトムシを取り出すと、新庄と下沢の前で披露した。
【カブトムシ】
昆虫の王様とも呼ばれる、子供たちにも非常に人気の高い個体の一つ。
体の色はオス・メスともに赤茶褐色から黒色で、少し光沢があるのが特徴的である。
また力も強いため、頭部の角によるオス同士の戦いは一見の価値がある。
「けっこう大きいな、このカブトムシ」
「持ち帰って大切に育てよう。今日はじゃんじゃん捕まえられるから嬉しいな」
「でもオオクワガタは見つからないね……今何時?」
「もう午後8時だね。先生は後1時間くらいで帰るって言ってるから、もう少し頑張って探してみよう」
……新庄の鼻息が自然と荒くなり、それを横で見ていた古橋が「ゴリラみたい」と余計なツッコミを入れた。




